「アレだったよね・・・」
こんなセリフを聞くと母親との会話を思い出す。
実家に帰省し母親と喋っていると必ずと言っていいほど出てくる言葉だ。
僕は「アレじゃあ、わからん。アレばっかり言ってるとボケるぞ。」
ときつく返すが、実際はアレとは何かは聞かなくても理解している。
きっと親子なんてそんなもんだ。
本作品でも、この「アレ」というセリフがあちこちで登場する。
日常会話の常識のようだ。
母親役の樹木希林が、息子役の阿部寛が、姉さん役の小林聡美が頻繁に使う。
これが家族の絆を証明しているかのように・・・。
それが理由ではないが、映画を観ながら母親との会話を思い出してしまった。
是枝監督の最近の作品は欠かさず観ている。
どの作品もそうだが、何となくせつなくなってしまう。
「海街diary」「そして父になる」してもそう。
「歩いても 歩いても」もかなり忘れてしまったが同じ。
そうそう、8年前の「歩いても 歩いても」も母親は樹木希林で、息子は阿部寛だった。
それも名前は「良多」で一緒。
絶対、ワザとだな・・・。
もしかして、愛知県で初めて気づいたのは僕かも(笑)。
話を戻そう。
常に家族を中心に描いているため、そんな雰囲気が漂ってしまうのかもしれない。
しかし、そのせつなさが映画を支えているのは事実だし、監督が最も表現したいことだろう。
壊れたものを修復するのは難しい。
ある程度修復したとしても完全に戻ることはない。
過去の行動を後悔し行動を改めようするが、きっと後悔を繰り返す。
主役の良多は大人になろうとし続けるだろうが、
多分、なりきれず、同じ過ちを繰り返すのではないか。
希望を抱きながらもそうなるんじゃないか。
それを母親は全てお見通し。
それがいくつになっても親から見れば子供だということ。
そんなふうに映画を観ながら、自分とだぶらせながら感じていた。
ここまで読んでもらっても、この作品がいいのかどうかさっぱりわからないと思うが、
個人的にはとても好きな映画。
こんなリズムで流れる映画が僕にとっては心地いい。
僕のような繊細な感性の持ち主は観るべきだろう(笑)。
怪しいと思われるかもしれないが・・・。
是枝作品に出演する役者も固定されてきそう。
いずれ是枝組なんて言われるのかな・・・。
それぞれが凄くはまり役だったが、僕は興信所の後輩役池松荘亮がとても良かった。
その視線の温かさがダメな先輩を救っていた。
意外と映画館が混んでいたのも嬉しかった。
若い観客が少ないのは残念だが、
こういった地味な作品が多くの方に観られるのは日本映画にとってはいい流れ。
この手の作品で外国映画に立ち向かってもらいたい。