著者の川渕三郎氏は現在80歳。
とてもその年齢には見えない。若々しく映る。
若さを保つそれなりの努力はされているのだろうが、
最大の秘訣は仕事に対する情熱ではないだろうか。
その熱い想いが結果として若さを維持しているのではないと本書を読み終え、そう感じた。
本書は川渕氏の半生を綴っている面はあるが、
大半はバスケットボールのプロ化についてである。
門外漢であった川渕氏が分裂していた日本のバスケットボール界をまとめ上げ、
一つの形を作った道のり。
Jリーグ創設も相当苦労があったかと思うが、
分野外の世界で力を発揮するのは想像するだけでも体が震える。
しかし、それが真のリーダーの姿として証明なのだ。
僕は川渕氏は嫌いではない。
だが、あの高圧的な話し方や声のトーンは正直、耳触りのいいものではない。
とても失礼な話だが、同じことを思う人は少なくないだろう。
それが悪い意味で誤解を生み、
タイトルのある「独裁力」ではなく「独裁者」的な印象を与える。
ニュースでしか見たことのない人は嫌悪感を覚えても仕方ない。
現Jリーグチェアマンの村井満氏とは180度違うのではないだろうか(笑)。
そんなことを踏まえても、僕は川渕氏は嫌いではない。
その考え方、生き様には素直にリスペクトする。
あそこまで堂々となれたのなら、どれだけいいだろうと羨ましく思うのだ。
今でも強く印象に残っている言葉がある。
Jリーグが発足する前、プロ化に向け活動されていた時代に多くの方から批判や反対を受けた。
時期尚早という声が多かった。
その時に「時期尚早と言う人は、100年経っても時期尚早と言う。」とキッパリと言われた。
物事を先送りする一つの理由がこれで、結局何もしないことが多い。
それに対して、的確に反論した言葉がその発言。
その言葉があったからこそ、現在のJリーグが成り立っているのだろう。
言葉の持つ影響力は大きいし、それが歴史を大きく変える。
信念があるからこそ、そんな言葉を当然のように使われるわけだが、
その信念の強さがどこから生まれてくるのかはわからない。
その答えはどこにも書いていない。
仮に書いてあったとしても何の参考にもならない。
彼の考え方を知ることで吸収するしかないのだ。
川渕氏は元サッカー日本代表の選手であり、元代表監督でもある。
そして、企業でも管理職経験者である。
リーダーシップのみならず、マーケティングも組織構築にも秀でた能力を持っておられる。
その総合的な力が「独裁力」を生み出す基になっているのだろう。
しがらみの多い世界のトップに立つ人は、専門バカではきっとやっていけない。
特にスポーツの世界ではいくらそのスポーツにたけた人でも、
人を見抜く観察力や発信する語彙力がないと真のリーダーシップは発揮できない。
そんなことも感じてしまった。
なかなかbリーグを観る時間は取れない。
ただ川渕氏が束ねてきた世界を知った上で観ると違う面白さを感じれるかもしれない。