これからも前向きに 名大社会長ブログ

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映画「千夜、一夜」

本作は社員の結婚式に参列する前に鑑賞。
会場の近くでありタイミングがよかった。
最近、このパターン、多いね(笑)。

正直なところ、結婚式の前に観る映画としては相応しくない。
これから幸せの階段を上がろうとする時にこんな不幸な物語を観るとは・・・。
まあ、現実の世界と映画の世界と分けて捉えないと。

現在、日本には約8万人の「失踪者リスト」が存在するという。
それは一定の手続き後に公開されるリストで理由もなく行方不明になった方を指す。
北朝鮮の拉致問題があった時期ならともかく、
(ともかくでもないか・・・)
今現在でも8万人もいるとは驚く。

何かの事件に巻き込まれた方もいるだろうが、自分の意志で蒸発した方も多い。
自分には想像しがたい世界。
瞬間的に現実から逃げたいと思ったことはあるが、そんな行動をする勇気はない。
どんな気持ちなのかも分からない。

本作はその失踪者ではなく、失踪された側の世界を描く。
今まで1ミリも考えたことはなかったが、残された側に気持ちは想像に絶する。

生きているのか、死んでいるのか、
逃げたのか、連れ去られたのか、
自分のことをどう思っているのか・・・。
何も分からない世界。
考えただけでも、気が動転しそうだ。

そんな女性登美ちゃんを田中裕子が演じる。
30年も愛した人を待ち続ける。
そんなことが本当に可能か。

一方で2年前に旦那が失踪した看護師役を尾野真千子が演じる。
この対比が観る側にグイグイ迫ってくる。

尾野真千子演じる田村奈美が人としては真っ当。
その葛藤ぶりはよく理解できる。
しかし、なぜか共感してしまうのは・・・。

登美ちゃんはほとんど笑顔を見せることはない。
とても不幸そうにみえる。
だが、その中にかすかな可能性を感じさせる。
それがとても可愛らしく映る。
ダメ男ダンカンとの会話は絶妙。

長いワンカットがリアルな世界をイメージさせる。
舞台となる北の離島の港町。
晴れた日もなぜかどんよりと映る。
気持ちの表れだろうか・・・。

人は他人のことは分からない。
自分の身内なら分からなくても信じることはできる。
他人は信じる気持ちが揺らぐ。

ラストシーンはどこに向かっているのか。

実際、日本の片隅で同じようなことが起きている。
映画は現実のツラさも教えてくれるね。

映画「空気殺人 TOXIC」

またまた韓国映画。
今年ですでに6本目。
徐々にハマっていく自分がいる。
それは素直に実力を評価していることに繋がる。

最初、本作のタイトルを見た時、ホラー映画だと思った。
もし、ホラーなら観ることはなかった。
上映しているのはミリオン座。
ホラーじゃないだろ・・・。

なにげに解説を読むと断然興味が沸いてきた。
「韓国で実際に起きた加湿器殺菌剤事件を題材に描いた社会派ドラマ」と書かれている。
HPを確認すると「韓国史上最悪の事件」なんて表現も。
昨年観た「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」に近いのだろうか・・・。
そんな気持ちで映画館に足を運んだ。

オープニングは韓国のホームドラマを観ているよう。
実際、僕は韓国のホームドラマは見たことがないが、そんな印象。
今まで観てきた韓国映画とは映像の重さが違った。
映画というよりTVドラマ・・・。

そんな感じだったが、知らない間にどんどん作品に吸い込まれていく。
冒頭の解説通り、硬派な社会派ドラマとなる大きな事件。

韓国にせよ、アメリカにせよ、日本も同じかもしれないが、大手企業は闇を葬り去ろうとする。
自分たちが起こした事故を隠蔽しようと画策する。
正義は皆無で保身でしかない。
しかし、反対に正義として跋扈し始める。

観る方がいらだちを覚え、圧倒的に立場の弱い真の正義を応援する。
そこで起きるどんでん返し。

本作はそんな展開。
映画のためのフィクションはあるだろうが、これが事実であれば驚かざるを得ない。
こんな展開が本当にあるのか?
自らが犠牲になることで本当の悪党を追及する。
自身が周りから悪党と思われても、それを貫く。

韓国にこんな事件があったとは知らなかった。
多分、国内にはあまり入ってこないニュース。

政治的にも社会的もこの事実は抑えておきたいはず。
しかし、それをあぶり出す韓国映画界。
きっと日本ではこの類の作品は作れない。

また、ひとつ、韓国映画の強さを知ってしまった。
本作にもやられましたね。

負けるな、日本映画!
最近、こんな締め方多いな(汗)。

映画「マイ・ブロークン・マリコ」

観る映画をちょくちょく監督で決める。
本作はまさにそう。
原作なんて全然知らないし、解説を読んで気持ちが大きく動いたわけではない。

タナダユキ監督に惹かれただけ。
といっても僕が観た作品は「浜の朝日の嘘つきどもと」1本。
昨年の映画だがすこぶる面白く、僕の中でのベストテンにランクイン。
注目すべき女性監督なので、勇んで映画館に足を運んだ。

どうだろうか。
かなり賛否は分かれる映画じゃないかな。
永野芽郁のキャラクターも二分すると思う。
彼女が売れっこのキッカケとなった連ドラ「半分、青い。」は一度も観たことはない。
映画も「ミックス」「キネマの神様」を観ただけで主演ではない。
CMを見て、可愛いなあ~と思っているがその程度。

どんな役柄が合って、どんな役柄が合わないかはよく分からない。
正直にいえば、本作の永野芽郁はちょっとムリしているように思える。
ワザと悪ぶっているように見えてしまう。
ファンにとってはそんな塩梅が嬉しいような気もするが・・・。

個人的にいえば彼女は煙草を吸わない方がいい。
もっとタバコが似合う女優はいるはず。

しかし、タナダ監督はそれも織り込み済みなんだろう。
生き方や言動を少し無理させることで存在感が増し、魅力的に映ることも多い。
あえてそこを狙い、友人役の奈緒との度が過ぎる関係性を当たり前の行動にしてしまう。
冷静にみれば異常な関係も真の友情として美しく魅せることも可能。

凡人で平和に育ってきた僕には理解しがたいが、
彼女らがその世界で人格を作り、2人だけで繋がっていく。
(ここでいう永野芽郁と奈緒ね)

何を言いたいか、理解してもらえるかな?
本作に世の中への批判があるかどうかは不明。
しかし、親の存在は子供の価値観を形成し、その影響で幸せにも不幸せにもなる。
ほとほと悲しくなったり・・・。

人は強くないと生きられない。
しかし、無理をしても破滅する。
それをいい頃合いで見せてくれるのが本作。

ラストシーンは何をいいたかったのか。
解釈はいろいろだが、そこは映画を観て確かめてもらいたい。

タナダ監督はこれからも期待したいね。

映画「ドライビング・バニー」

今回は珍しいことずくめ。
ニュージーランド映画は初めて。
アメリカとの合作とは別に初めて観た。

映画館は名古屋ではマイナーな名演小劇場。
そして、月初1日の映画サービスデーでの鑑賞。
こんなケースは今までにない。
たまたま近くで飲み会があったので、本作を予定にぶち込んだ。

名演小劇場は小規模な映画館。
決して経営は楽じゃないと思う。
いまだにHPはスマホ対応していないし、座席もWeb予約はなく当日のみ。
先着順で好きな席を確保する。

昭和の感覚が残る映画館だが、たまにはこんな場所に足を運ぶのもいい。
少し早めの時間でチケットを購入し、番号を呼ばれた後、どこに座るか考える。
映画サービスデーといえども観客はさほど多くないので、好きな席を選べる。

こんな映画館にも頑張ってもらいたい。

そんな具合で本作を鑑賞。
失礼ながら公開前にチェックしたわけではない。
タイミングが合ったに過ぎない。

しかし、世の中は偶然でできている。
たまたま観た作品に感動し気持ちが揺さぶられる時もある。
事前情報は中年女性が離れて暮らす自分の子供を取り戻すためのロードムービー。
ということだけ。

あとは姪っ子役のトーマシン・マッケンジーくらい。
彼女は昨年、「ラストナイト・イン・ソーホー」を観てステキな女優だと思い、
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」でも静かに好演していた。
「ジョジョ・ラビット」のユダヤ人少女もよかった。

活躍が目立つ女優が「なぜ、ニュージーランド映画?」と思って調べたら、
なんと彼女はニュージーランド出身。
なるほどね。

と本作と関係ない事ばかり書いてしまった。

僕はロードムービーというよりも運に恵まれない一人の悲しい女性の物語。
不幸な主人公バニーは時々、破天荒な行動をするため100%共感はできないが理解はできる。
その背景には大きな理由があるわけだし。

社会の正義と彼女の正義はかみ合わず、社会の正義の正しさに憤りを感じる。
それは至極真っ当でシステマチックで、人の心を傷つける。
国の持つ様々な制度は個々の状況には向き合わない。
合理的な仕組みが結局不幸を招く。

それにしても、あの電話のシーンは泣ける。
感動的だ。
純粋で真っすぐな気持ちをもっと理解出来たら住みやすい社会になるのに・・・。
そんなことを感じた作品。

馴染みのない国の映画でその国を学ぶ。
映画は多くを教えてくれるね。

映画「ヘルドッグス」

ヤバい、ヤバい映画。
一言で語れば、そんな作品。
それは最上級の誉め言葉といっていい。

138分の上映時間を通し、1ミリも緊張感が途絶えず楽しむことができた。
原田監督は時代劇を描くよりもこっちの世界の方が得意なんじゃないか。
遠慮がなくていいし、振り切って演出を楽しんでいるように感じる。

2022年は日本映画が低調に思えたが、後半に入りグイグイ攻め込んでくる作品が増えた。
これなら韓国映画とも対等に勝負できるんじゃないか。
アクションに関してはそんなふうに思えてきた。

シンプルにいえば、元警官の主人公がヤクザの一人としてヤクザ一門に潜入し、
そこから重要ファイルを奪ってくるというストーリー。
非現実的な世界であるのは間違いない。

登場するヤクザも昔ながらの雰囲気を持つ者からイマドキのインテリチックで冷徹な者まで。
本当の世界は知る由もないし、ヤクザ映画を好んでみるわけでもない。
せいぜい北野武作品か昨年の「ヤクザと家族」くらい。
人間ドラマは好きだが、無駄な争いごとは避けて通りたい。
あまりドンパチやるのも好きではない。

しかし、本作は違う。
完全なるアクション映画。
特に主役岡田准一がここまで上手いとは思わなかった。
原田作品で観た「燃えよ剣」「関ケ原」での殺陣にも感心したが、
こんなアクションが様になる役者とは・・・。
もうそっちの道を極めてもいいと思うが、事務所もファンも許さないだろう。

本作の魅力はスリリングな展開とアクション、
それぞれの人間模様にあるが、俳優陣のハマり具合も大きな魅力。
これだけ役者がマッチしている映画も少ないんじゃないか。

岡田准一は当然だが、相棒役の坂口健太郎も良かった。
好青年しか演じられない役者かと思っていたが、あんなサイコパスな演技ができるとは・・・。
北村一輝のヤクザは堂々たるものだし、組織のトップMIYAVIもカッコいい。
TVで見なくなった(お笑い辞めたの?)金田哲もいい感じ。
「燃えよ剣」といい原田監督に好かれているのかな。
松岡茉優も大竹しのぶも酒向芳も渋い。

それにしても岡田准一の圧倒的な強さには唸る。
瞬間的な身のこなしに魅了されてしまう。
やっぱこっちの世界に行けばいいのにね。
彼が日本映画を牽引する大きな役割も担うんだろう。

残酷なシーンが苦手な人も感動するはず、と思う。

映画「人質 韓国トップスター誘拐事件」

今年は韓国映画を観る機会が多い。
本作で5本目。
先日まで公開していた「キングメーカー 大統領を作った男」も観たかったが、タイミングを逃した。
ロッキーよりこっちだったか(笑)。

「モガディシュ 脱出までの14日間」を観た時に日本映画は韓国映画に勝てないんじゃないか
とブログに書いたが、総じてレベルが高いのは事実。
観た5本の中でハズレ作品はない。
社会性が強いのか娯楽性が強いのかは作品に寄るが、どれも個性がありクオリティが高い。

本作もそう。
特に目新しさがあるわけではないが、
最初から最後まで緊張感を維持しながら楽しく観ることができた。

本作は「ただ悪より救いたまえ」「新しき世界」などで知られる韓国の俳優ファン・ジョンミンが
実名で主演を務め、誘拐・監禁されたトップスターの決死の脱出劇を描いたサスペンス。
この一文は完全なコピペ。
お許しください(笑)。

調べてみると同様の映画は中国にあるし、実名で登場する映画は他にも存在する。
そんな意味で目新しさはないということ。

僕は韓国俳優には疎く、ファン・ジョンミンは「ただ悪より救いたまえ」で知ったにすぎないが、
きっと彼の魅力が存分に発揮されていたと容易に想像できる。
それも苦労してトップスターの座を射止め、演技力やアクションで評価を上げたことも理解できる。
韓国人にとってはより共感度が高いかもね。

ストーリーは至って単純。
上記のコピペの通り。
ろくでもない連中と優秀かどうかよく分からない警察が誘拐事件を基にドンパチやる。
「ベイビー・ブローカー」でも思ったが、韓国警察は女性が前線で引っ張るケースが多い。
本作も女性刑事の方が強かったり・・・。
映画で海外を学ぶことができるね。

俳優が俳優として迫真の演技を魅せる。
これも本作の重要ポイント。
観ている人は分かっていながらも、もしやと思ってしまう。
実際にアクションもやれるから喧嘩も強いのかな?。
そんなどうでもいい事を考えながら映画を楽しむのもひとつ。

日本映画でも十分成り立ちそうな気はするが、そこは犯罪の違いか。
韓国の方が誘拐事件は多いだろうし。
それも今年観た作品からの想像に過ぎないけど。

さあ、対抗できる日本映画は何か。
「ヘルドックス」は期待できるか。
アクションスター岡田准一に頑張ってもらうしかないね。

絶対悲観主義

楠木氏も何となく著書を手に取ってしまう作家の一人。
作家というより学者だが、その語り口や表現に魅力を感じる。
本書のキッカケはNewsPicksの日本特殊陶業社長との対談じゃなかったかな。

今や大学の先生というより強面のタレントといってもおかしくない。
低音で冗談とも本音とも受け取れる絶妙な表現はまさにタレント。
叱られてしまうかな。

表紙には「心配するな、きっとうまくいかないから」
といきなり身も蓋もないことを書かれている。
第1章なんて、否定的なことばかり。

仕事である以上、絶対に自分思い通りにはならないと僕は割り切っています。
「世の中は甘くない」「物事は自分の都合のいいようにならない」、
もっと言えば「うまくいくことなんてひとつもない」ーこれが絶対悲観主義です。

と言い切る。

どうやら「絶対」がポイントのようだ。
こんな感じで読み始めれば読む気が失せてしまうと思うが、
不思議とうんうんと頷きながら肯定的に受け止めてしまう。

これまで僕はどちらかといえば、努力は裏切らない、
頑張り続ければ成功する。
そんな気合いと根性で仕事をしてきた。
確かにその面はあった。

努力が報われ評価もされた。
しかし、それは10のうち2か3で、多くは静かに気づかれず去っていった。
落ち込むことも多かった。

それでも今、こうして何とかなっているのは、
「まあ、しゃあない」
と開き直る面が強いから。
それが「絶対悲観主義」に近く素直に受け止められたのかもしれない。

これまでいろんな経験をさせてもらい、
うまくいくこともそうでないことも、
自分で何とかなることも、自分では何ともならないことも分かってきた。

そんな経験は面の皮を厚くし鈍感にさせる。
「そんなちっぽけなことで悩むな」と人の話を聞いて、
そう感じるのは「絶対悲観主義」とイコールなのかも・・・。

「なるようにしかならないが、なるようにはなる」
という楠木氏の結論に大きく共感する。
僕が思っているのもまさにその通り。
立派な方の発言に安心してしまうのはいかがなものかとも思うが、
少しの無理をしながらも自然体でやるのが自分らしいということ。

これからの人生はそんな動きだろうか。
高峰秀子さんの言葉も響く。
「引退です、なんていうのはおこがましい。
そのうち誰からも必要とされなくなるんだから、
そうしたら煙のように消えてなくなればいいじゃない」

僕もそんなふうに仕事人生を終えられたら理想的。
ギリギリでもがくかもしれないけど(笑)。

前向きに悲観的になれる一冊でした。

映画「LOVE LIFE」

100人いたら95人は気づかないと思う。
映画の存在ではない。
本作はヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品作であり、
最近話題作が続く深田晃司監督作品。

何かといえば、ポスターの右横白文字のキャッチコピー。
上のポスターは「孤独を抱いて自由になる」。
しかし、劇場に設置してあるチラシは「痛かった、全部。」。

あえて違うコピーにしたのか、
たまたま校正のタイミングが異なり印刷物によって違うのか、
理由は分からない。

共通点の見出せないコピー。
なんのこっちゃ、と思うだろうが、
映画を観た人なら「なるほど・・・」と唸るだろう。
だが、これに気づく人はほとんどいない。
100人いたらせいぜい5人。

本作は観る人によって評価は大きく分かれる。
上辺だけで映画を観れば、
表面的な人間の自分勝手なストーリーと捉えるかもしれない。
それほど面白くもないだろう。

一方で観る人によっては、
かなり深刻な気持ちになり重く受け止めるはずだ。

本音を隠し程よい距離感で、
当たり障りのない人付き合いをするのが日本人の特徴。
それが功を奏する場合も多い。
相手を傷つけることなく平穏を保つ。
それにより安定的な関係性が維持できる。

しかし、ある事件によって、その本音が露になりお互いが苦しくなる。
本作でいえば子供の溺死。
それによって夫婦の歯車が大きく狂う。
お互い許し合っていた負の側面が行動として表れる。
そこで価値観の違いを理解し、分かり合えない相手にいら立つ。

なんて、つらつらと自分の感じたことを書いたが、
事実かどうかは分からない。
あくまでも観る者に映画の中の人物像を委ねているだけ。

主役は木村文乃さん。
僕は今までキムラアヤノと思っていた。
すみません・・・。

これまでの印象でいえば、映画「BLUEブルー」のボクサーの彼女役や
大河ドラマ「麒麟が来る」の明智光秀の奥さん役。
気立てのいい優しい女性のイメージが強い。

本作はいい意味で裏切る。
今まで見たことのない表情が映し出される。
それだけでも観る価値はあるといえよう。

ロングショットの長いワンシーンや、
ここに出すかというタイトルクレジットも観る者にいろんな考えを抱かせる。

そして、ラジオから流れる矢野顕子の「LOVE LIFE」。
この歌詞が全てを物語っているかもしれない。
エンドクレジットでも流れるしね・・・。

本作は自称映画コラムニスト仲間との鑑賞。
おかげでその後の飲み会では熱く語り合うことができた。
そんな意味でも作品には感謝。

深田監督の作品はこれからも楽しみにしたい。

映画「ロッキーVSドラゴ ROCKY IV」

ミリオン座で予告編を何度となく観た。
35年前の映画を今更公開する必要があるのか?
と思いながら、当初、観るつもりはなかった。
しかし、尊敬する先輩経営者が劇場に足を運び、その感想を述べていた。

感想や作品のレビューは思いのほか高評価。
詳しく調べると本作には42分の未公開シーンがあるという。
映画が40分ほど長くなったと思ったが、上映時間は94分とほぼ変わらない。
要は40分ほど、映像が入れ替わったということ。

そこで俄然興味が沸いてきた。
一体どこが変わったのか・・・。
これが2~3年前の映画なら記憶に留まっているだろう。

僕が観たのは36年の大学時代。
要所要所は覚えているが、大半は忘れている。
違いなんて一部のシーンしか分からないのが正直なところ。
ラストの肝心なシーンはしっかりと把握してますよ(笑)。

一番いいのはDVDあたりでロッキー4を観てから、本作に臨むこと。
そうすればはっきりと違いが分かるはずだ。
トップガンといい、最近は新手の手法で映画を観させる作戦が続いているね(笑)。
よほどファンじゃない限り、そんな観方はしない。

僕は基本的にボクシング映画は好きだ。
それもちょっと陰のある暗い作品を好む。
日本映画はその傾向が強い。
ロッキーも一作目や二作目はその匂いがしたが、段々とエンターテイメント性が強くなった。
より派手な演出がされるようになってきたと思う。

そんな中の今回の作品。
シルベスター・スタローンが本当に伝えたかったことと大袈裟に謳っているが、それは何だろうか?
正直、僕にはよく分からない。
トランプ的なのか、世界平和なのか、
アポロと同じように過去の栄光にすがっていたいのか、解釈は人それぞれ。
ぜひ、映画館に足を運んで確認してもらいたい。

それにしても香るのは80年代バリバリの映画。
音楽の使い方、大袈裟な演出、そして当時のソ連・・・。
あればゴルバチョフさんだよね。
なんだかとてもタイムリー。
そんなことも感じたり。

それにしても全く別の映像を保管していたんだ。
それは凄い。
スタローンなりの葛藤があったのかな。

その後に続く「クリード チャンプを継ぐ男」も観た方がいいかもね。

飛び立つ季節 旅のつばくろ

沢木氏のエッセイを読むとその生き方につくづく憧れる。
ご本人の苦労を置いておいて、理想的な生き方だと思わせてくれる。
僕も映画コラムニストとして、
人気食べ物ブロガーとして自由気ままに生きられないだろうか。

そんなことを言ってしまうと周りからも沢木氏からもこっぴどく叱られそうだ。
叱られるというよりは「悪くはないと思うが、いいとも思わないよ」と諭されるかも・・・。

本書はJR東日本の車内誌「トランヴェール」に連載されるエッセイ。
ここには35編がまとめられているが、現在も連載中なので続編も期待できる。
東北新幹線に乗ることがないので車内誌を読む機会はないが、
一度だけ尊敬する仙台の先輩経営者に雑誌を送ってもらったことがあった。
移動で得られる有益な時間。

この車内誌を目的に旅に出るのもいいかもしれない。
目的も決めず、雑誌を読み終え目に留まった駅で下車する。
そんな気ままさな旅をこのエッセイを読んでいると無性にしたくなる。

今月、家人と一緒に九州旅行に出掛ける。
ほぼ一週間を共に旅するのは新婚旅行以来。
苦労を掛けた身としてはそんな時間も大切だが、
できれば一週間くらい一人でのんびり泊まる場所も決めずにぶらりと出掛けたい。
さすがに年内は無理なので、来年あたりに・・・。
世界のことなんてまるで知らないが、国内も知らない場所は多い。

未踏の地を時に強風に煽られ、震えながら歩くのもいい。
そうなると気候のいい時期より冬か。
場末の居酒屋に入り、熱燗で体を温めながら、どうでもいい会話を女将や常連さんとして。
翌日に向かう場所はそこで教えてもらった土地に出向く。
「しまった」と思う経験もするだろうが、それも楽しかったり。

本書にも書かれているが、
「学んでから旅に出る」のではなく、「旅に出てから学ぶ」。
いい年齢になったからこそ、そんな経験をしたい。

いつまでも若いと思っていた沢木氏ももう75歳。
ジイサンの領域だ。
一体、いつまで旅を続けるのだろうか。
同じような姿勢でいつまでも続けて欲しい。
VISAの広報誌の連載も楽しみだし、こちらも続けて欲しい。

そして、いつまでも憧れの存在であることも願いたい。