これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

キャパの十字架

キャパの十字架 キャパの十字架
(2013/02/17)
沢木 耕太郎

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僕の本書の感想は、なぜそこまでこだわるのだろうという本来求められる内容とは異なる。
著者の沢木耕太郎氏がなぜ、そこまでキャパの1枚の写真にこだわって、最終的に歴史を覆す行為までしてしまうのだろうかと。僕の純粋な問いはそこにあった。
しかし、沢木氏の一番の魅力はそこにあるのかもしれない。「深夜特急」しかり「一瞬の夏」しかり「檀」や「凍」でも。そのこだわりは半端ない。
時に対象となる人物の人生までも変えてしまう。それを自然体に近い行動の中で成し遂げてしまう。恐ろしい作家であり、最も生き方として羨む作家である。
既に多くの書評で傑作との高い評価がされているので、ベタ褒めしたりケチをつけたりすることはない。どんな作品であろうと僕は一ファンとして読むし、その背後にある沢木氏の物事に対する純粋な捉え方に憧れ続けるのだろうから・・・。
最近はエッセイの出版が多かった。このようなノンフィクションって久々じゃないだろうか。年齢が60代半ばだというのにまだまだ精力的な活動をされているのであれば、かなり嬉しい話だ。一体、次はどんな対象を取材し、どんなテーマで書かれるのだろう。どこまでルポライターとして存在感を際立たせられるのかな・・・。
沢木氏の著書はほとんど読んでいるはず。なぜか「危機の宰相」は読んでないが、これは遅かれ早かれ読むこととなる。
そして、決定的に読んでいないのは(こんな表現方法はないな)「キャパ その青春」「キャパ その死」の翻訳物。
キャパ
でも、後篇は10年以上前に古本屋で見つけて手元にはある。前篇を探していたのだが、いつの間にかそんなことは忘れていた。こだわりが弱いとしかいいようがない。
この翻訳を読んだ後に今回の著書を読むとまた違った感想を持つのかもしれない。どっかのブックオフにあるのかな・・・。

映画「かぞくのくに」

かぞくのくに [DVD] かぞくのくに [DVD]
(2013/03/22)
安藤サクラ、井浦新 他

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あり得ないようであり得て、遠い世界のようで身近なことなのかもしれない。
我々の住んでいる環境がいかに幸せで自由かを理解しようと思うと、そうでない世界と比較するのが一番。ものを考える自由を奪われるのはどれくらい辛いか想像はできないが、実際に思考停止の状態が幸せというのも恐ろしい。考える苦しさを頻繁に経験するが、それがいかに贅沢な悩みかはこの映画を通して知ることは可能。
この映画はそんなことを訴えたいわけではなく、もっと別の深さがあるのだが、そんな風な見方も一つだろう。これがただのフィクションではなく、監督自身の実体験を基に製作されているというから説得力も高い。
ほとばしる緊張感が淡々としたストーリーを引っ張り、冷静そうに装っている井浦新演じるソンホの瞬間的な感情や笑顔が存在としてのもの悲しさを強くさせる。一人静かに観るべき映画だろう。
kazokukuni
ハリーポッターを観ながら喜んでいる子供たちに見せたいが、まだ時期尚早で理解は遠い先になるだろう。そのあたりも興味を示してくれると嬉しいのだけれど・・・。
映画を観ながら気づいたこと。
晴れた日のシーンがほとんどない。ワンカットが長く出演者を追い続ける。これはドキュメンタリータッチに描くための意図的な演出なのかもしれないが、効果的に働いているように思う。出演者の配役もマッチしている。
宮崎美子はすっかりお母さん役がはまり役だ。それも不幸な環境にありながら気丈に明るく振る舞う役が多いように思う。映画「悪人」も同様。いい年の重ね方をされているのかな・・・。
このような社会派ドラマは感想も結構気を遣うが(笑)、いろいろ騒がしい今の状況だからこそ観ておくべき作品であるのは間違いない。

社長は少しバカがいい。

社長は少しバカがいい。~乱世を生き抜くリーダーの鉄則 社長は少しバカがいい。~乱世を生き抜くリーダーの鉄則
(2013/01/25)
鈴木喬

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タイトルに騙されて買った一冊(笑)。
少しでも気休めや自分の自信にもなるかと思ったら、全くそんなことはない。少しもバカじゃない。そんな欠片も感じない。
副題にある「乱世を生き抜くリーダーの鉄則」はごもっともだと思うが、上手く販売戦略に乗せられてしまったようだ。
この一文だけ読むとと、本書を非難しているように思われるが、決してそんなことはない。経営者としてあるべき姿を豪快に映し出していることは間違いなく、激動の時代を乗り越えるためのヒントがいくつも書かれている。
著者の鈴木会長は現在77歳。僕よりも30歳ちょっと先輩になる。本書からそんな年齢は微塵も感じさせない。すこぶる元気でアグレッシブに行動するイメージしか残らない。
表紙の笑顔とは裏腹に厳しい表情も頭に浮かぶ。社長の覚悟とはなんぞやと説き、僕を含めた軟弱経営者に”喝”を入れられている気がした。
エステーは生活日用品のメーカーで成熟したマーケットを戦う企業。一般的な男性は企業名は知っていても、商品の具体的な特徴まではあまり関心がないのではないか。差異が見出しにくい業界ともいえるだろう。
しかし、我々には多くのインパクトも与えている。商品名を歌うだけの「消臭力」のCMでも話題をさらったし・・・(このCMの背景には東日本大震災が関連しているとは知らなかったけど。)これが経営の神髄でもあるようだ。
鈴木会長はあっさりと勉強することを否定している。社長に必要なのは「運」と「勘」と「度胸」で、勉強は身体に悪いと・・・。どこかで聞いたことがるようなフレーズだが、結局はそんな人ほど、多くの勉強をしている。
座学ではないかもしれないが、実践では人の何倍も勉強しているはずだし、それが説得力を生み出しているのだ。
僕はその両面とももっと勉強しなければならない。最近、ちょっとサボってないか?(笑)
あとがきにはこんな強気な発言もされている。チーフ・イノベーターの存在として、「ジョブズが亡くなってしまった。もうこの世には俺しかいない」と。
ちょっと言い過ぎじゃないか。そんな発言であきれ顔されるのも、お見通しのようだけど。
あり得ない話だけど、僕が本を出したらどんなタイトルをつけるだろうか。
「社長はかなりバカでもいい。」
ただのパクリだな・・・。

パナソニック・ショック

パナソニック・ショック パナソニック・ショック
(2013/02/23)
立石 泰則

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書籍のタイトルから、てっきりここ数年の事業の変遷が書かれているものと勝手に想像していた。それは単に僕の想像に過ぎず、内容としては松下電器の創業から現在の苦戦の実態までを歴代の経営者に照らし合わせながら描いている。
これが主観的な見解ではなく客観的事実とするならば、歴史は現在を写す鏡となるのだろう。
僕らはパナソニックの現状をリーマンショック以降の景気低迷や円高、サムソン等韓国メーカーの台頭が原因だと思い込んでいる面が多い。
しかし、それは上辺の情報をなぞっているだけで、物事の本質を見抜く力が欠けていただけのようだ。著者が語るには、パナソニックの現状はその歩んできた経営の在り方にこそ大きな問題があると指摘している。
「中村・大坪時代とは、簡単に言えば、目的地(ビジョン)を定めず、海図(事業戦略)もコンパス(ロードマップ)も持たずに、荒海(世界市場)へ繰り出した船長(中村・大坪)が大型船(松下電器)を迷路に連れ出し放置した時代に他ならない。」と痛烈に批判している。
以前読んだ「さよなら!僕らのソニー」でも当時の経営者ストリンガー氏を完全否定していたのと同様に、何の遠慮もなくバッサリと切り捨てている。
僕の記憶では、中村邦夫氏は「聖域なき構造改革」の先駆者として注目を集めた経営者であったように思う。しかし、実態は自分の意に沿わない社員は排除して、周りはイエスマンばかりとなり、その事業戦略にブレーキをかけるものが者がいなかったため、今日の凋落を招いたようだ。恐ろしい話だ。
僕は大して実力もなくワンマンになるほどのカリスマ性を持たないので、そんな心配はする必要はないのかもしれないが、とんだ勘違いをしないとも限らない(笑)。人間なんて愚かな動物だろうから、見誤ることもあるだろうし・・・。常に自分を客観視することは重要。
企業の規模に限らず経営者というのは自分の功績を残したいと思うのものだ。それは過去から培ってきた理念や文化、教えを時には否定してでも、その足跡に自らを落とし込んでしまう。短期的なビジョンの中でベストな判断だと思い込みながら・・・。
注意しなければならない。本書を読み終え、反面教師として捉える重要性を感じた。
本書のカバーを外すと創業者 松下幸之助が睨みを利かす。
pana13
常に見られていることを意識せねばならない。
パナソニックの経営者であっても、僕であっても・・・。

世界の経営学者はいま何を考えているのか

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア 世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア
(2012/11/13)
入山 章栄

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いろんな場で紹介されているので、つい手に取った本書。
経営者の書籍はスムーズに体に入り込んでいく。経営全般の書籍も比較的、体に染み込みやすい。
しかし、経営学となると話は別。この一冊を読み終えるのに随分と時間を費やしてしまった。「経営学」とか「経営学者」と言った途端に体に入り込むスピードは落ち、なおかつ、思うように吸収することができない。
それだけ自分の勉強嫌いや学習能力の低さが表れてしまったようだ。本棚の飾りになりそうな気配満々なのだが、時には読み返す必要はあるだろう。
赤線を引っ張った箇所を抜き出ししても
「ハイパー・コンペティション下では、理論的には、より積極的な競争行動をとる企業のほうが高い業績を実現できる。」
「一時的な競争優位を連鎖するように獲得していくことが、現代に求められることなのです。」
「競争優位を実現できる企業はもはや全体の2~5%しかないのです。」

と別々の箇所をつなげるだけでも、先端の競争戦略を理解することは可能。
また、こんなことも書かれていたり・・・。
「不確定の時代に計画主義は通用しない、と唱えるのが「学習主義」を支持する学者たちです。」
「「考える前に、まずやってみるべき」というのが学習派の主張です。行動していくうちに市場の状況や顧客の好みなどを学習し、徐々に自らの事業計画もはっきりわかっていくだろう、不確実性が高いときにはむしろそのほうが効果的だ、というわけです。」

まさに、Webサービスを中心に考える戦略ならば、ぴったりと当てはまるといえるだろう。
と、書籍から抜粋して、ブログの書評をごまかしているわけだが(笑)、全てを読み通して理解するのは一度読んだだけでは難しいだろう。
そもそも学習することは、一度で習得できないわけだし・・・。

映画「桐島、部活やめるってよ」

桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組) 桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)
(2013/02/15)
神木隆之介、橋本愛 他

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知っていることといえば、原作の朝井リョウ氏が先日の直木賞受賞者であり、同じ岐阜県出身であることとこの映画がキネマ旬報で高い評価を得ていたことくらい。
どんなストーリーであるか、原作とどう違うかは全く知らないまま、この映画を観た。
DVDのパッケージでも販促用に商材でも使われているのはオタクチックな役を演じる神木隆之介だが、本当はモヤモヤした気持ちを抱えながら日々を過ごす高校生役の東出昌大ではないだろうか・・・。他にも主役級の出演者は何人もいるので、特に拘る必要はないのかもしれないけど。
タイトルにもなっている桐島はこの映画で一切出て来ない(ちょっと語弊があるかもしれないが)。その出てこない人物に高校生たちは振り回され、高校生らしい感情で揺れ動いていく。
段々年齢を重ねていくと、悲しいかなこの映画で描かれる感情は薄れていく。昔はそんな感情を随分と大切にしていたはず。それが自分のコンプレックスだったり、照れくささだったりする結構情けないものも含めて。
知らず知らずのうちに、また多くの経験を積み重ねることで忘れてしまうのだ。映画を観ながら、つくづく大人はつまらないなとも思ってしまう。ほんの瞬間的な時間でしかないが・・・。
この映画が今どきの高校生を忠実に描いているかどうかはわからない。同世代が共感して観ることができるのかもわからない。
ただ40歳半ばのオッサンが感情移入できるのも事実。これも青春なんだと。何か美しい。
ちょっと解せないのが映画部の取り扱われ方。あんなオタクっぽい連中ばかりではないはずだ。世間一般的にはきっとそう見られてしまうんだろうなあ~、何だか何だが・・・(笑)。
映画の中で出てくる映画、塚本晋也監督の「鉄男」。健全な女子高生は観ないでしょ(笑)。

「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 」を読む

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書) ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)
(2012/11/19)
今野 晴貴

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本書の感想をブログに書くことは結構迷った。正直な感想を書くことで誤解を招く可能性があるからだ。僕のブログに影響力があるわけではないので、別に気にする必要はないのだが、僕の思いが変な方向に独り歩きしてもいけないと思うし。
ここに書かれている内容を否定するつもりはない。むしろ、賛同する面も多い。著者の主張する実際ブラック企業で行われている実態は許されるはずはない。相談内容を普通に解釈すれば当然のこと。採用支援を業務とする我々も「使い捨て」ありきで採用する企業に対してサポートしているわけではない。
しかし、である。我々が御付き合い頂く企業で離職がないわけわけではない。会社に不満を抱いて辞める社員がいないわけでなない。どんな優良企業であろうと会社に不満を持つ人材は存在するだろうし、退職する人材も存在するだろう。
本書でもすべての企業がブラック企業になり得る可能性があると書かれてはいる。だが、残念なのは外食業や中小企業がすべてブラック企業という捉え方ができてしまう点だ。
確かに外食業は他の業界に比べ離職率は高い。土日勤務は基本であるし、勤務時間が長いのも特徴だろう。業界全体での課題であることは間違いない。
しかし、どの企業も社員の待遇改善に取り組んでいるし、むしろ人手不足感がバッドサイクルに働いているのであって、「使い捨て」で人を雇用しているわけではないはずだ。それは中小企業でも同様といえる。
本書を読むと働ける場所はかなり限定的になってしまうのではないだろうか。中小企業経営者のやっかみと捉えられても仕方ないが、本書を読んで感じた素直な感想である。
最近、ブラック企業という言葉ばかりが先行しているような気がする。企業選択の判断基準がブラック企業であるかないかだけで決めるのは本意ではないはず。本書でも「戦略的思考」を持つことが重要と訴えているので問題ないが、そこまで辿り着いてくれるよう訴求していく必要はあるだろう。
そうはいっても非難してしまった点はあるが、僕が知らない実態が克明に著されていて勉強にもなった。自分の立場として常に意識しなければならないのは間違いなさそうだ。

男の貌

男の貌: 私の出会った経営者たち (新潮新書) 男の貌: 私の出会った経営者たち (新潮新書)
(2013/01/17)
高杉 良

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僕にとって高杉良と言えば、「金融腐蝕列島」「呪縛」一連の金融業界シリーズ。その著書を読んだ時からビジネス小説が面白いと感じたのかもしれない。調べてみると著者の作品はそのほとんどが実際の事件を小説に焼き直しているケースが多い。
僕が読んだ中では「青年社長」のように実名で書かれているノンフィクションも多数存在するが。
それを基本と考えるならば本書は稀有な存在となるのかもしれない。これまでの取材経験の中で感じてきたリーダー像を人物に照らし合わせながらあぶり出している。その分、説得力があるのかもしれない。
本書の面白さは直接接した一流の経済人から得たリーダー像の表現もあるのだが、その取材の裏側にある闇の世界を遠慮せずに暴露するスキャンダラスな面白さもある。どんな一流の経営者でも「オモテ」と「ウラ」の顔を持っており、巧みな使い分けにより、その企業を発展させてきた背景がある。
日本を代表する経営者 小倉昌男氏をバッサリ斬ってしまうのも見方を変えれば痛快である。名著「経営学」では読み取れない本人の人間性もズバッと表現してしまうのだ。
もしかしたら「オモテ」と「ウラ」の違いが大きければ大きいほど人間の深みがあるのかもしれない。「オモテ」と「ウラ」があったとしても、所詮、見分けがつかない自分はやはり凡人でしかないのだろう(苦笑)。
本書を読む限り、相当危ない橋も渡っており、懐柔や恫喝、札束ビンタなど人間を壊しにかかる行為も繰りかえされるようだ。それにも屈せず、本書を書きあげるまでに至るのは、まさに「ペンは剣よりも強し」の証。
最後まで一貫して表現しているのは、本物のリーダーは「勁さ」と「優しさ」の両方を持ち合わせているということ。肌で感じとった自らの証明だろう。
それにしても大物人物は怖いね。
よかった、小物で・・・(笑)

キネ旬ベストテンを読みながら

kinejun121
今月のキネマ旬報は2012年映画ベストテン。自称映画ファンとして、時代についていくためにも(苦笑)毎年この号だけは購入している。
日本映画ベストテンも外国映画ベストテンも見事なほど、ほとんど観ていない。特に外国映画ベストテンはマニアックで通好みな作品ばかり並んでるので、観る術すらない。
ところがである。読者選出の外国映画ベストテンではなんと4本も観ているではないか。洋画よりも邦画の方が好きな僕としては非常に珍しいこと。それも偶然か全ての作品の感想をブログに書いている。
3位アーティスト、6位ダークナイト・ライジング、7位レ・ミゼラブル
8位人生の特等席
難解で芸術的な香りが高い作品は一切なく、娯楽作品ばかり観ていることがよくわかる。まあ、それはそれとして・・・。
もっと邦画、洋画に関わらずもっと幅広く観なければならないな。
2012年の映画界の総評を読むと面白い事実が書かれている。
興業収入は1951億9000万で前年比107.7%と年間入場者と共に増加している。内訳としては、ここ数年は邦高洋低の状態が続き、年間の興収も圧倒的に日本映画が多い。洋画離れが進んでいるというのだ。日本映画の方がよく観られているわけだが、伸びているのは限定的。
東宝、東映、松竹の大手3社の合計は990億9760万円。そのうち東宝が741億円の興収で群を抜いており、前年比も125%。一方で松竹は74億円とここ数年前年割れが続いている状態。映画界でも勝ち組負け組が鮮明になってきているようだ。
東宝が配給した「BRAVE HERATS海猿」が73億の興収があり、松竹が配給した全18本とほぼ同じ興収なのだ。1本の映画が一つの映画会社の興収と同じになってしまっている厳しい現実がある。ヒット作がないと言ってしまえばそれまでだが、ここにはマーケティングでも戦略でも大きな力の差が生じているのだろう。
「男はつらいよ」や「釣りバカ日誌」などのシリーズもので支えられてきた背景が、もしかすると今のマイナス要因になっているのかもしれない。あくまでも推測だけど・・・。かなり興味深く読むことができた。
そして、個人賞採点表で面白かったのが新人女優賞。
なんと2位があの壇蜜なのだ。最近、メディアでもやたら露出が多くなり話題性も高いが、新人賞でこれほど評価されているとは・・・。
残念ながらその主演作を観ていないので、何とも言いようがないが、きっと評論家たちを魅了する演技をしているのだろう。
毎年、もっと観なければと思いながらも、思うように観れないのが映画。
時間配分を上手くコントロールしながら、その機会を増やしてはいきたいんだけど・・・。

個を動かす 新浪剛史、ローソン作り直しの10年

個を動かす  新浪剛史、ローソン作り直しの10年 個を動かす 新浪剛史、ローソン作り直しの10年
(2012/12/13)
池田信太朗

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メディアへの露出が多いので、知らない方はいないだろう。
セブンイレブンの鈴木敏文会長は有名でも、現社長はそうでもなかったり、地元サークルKサンクスの中村社長の顔もパッと浮かばなかったり(すみません)するのではないだろうか・・・。
それだけローソン=新浪社長のイメージは確立されており、元気溌剌な姿が頭に浮かぶ。本書にも書かれている通り、マスコミを上手に「利用」しており、時代を代表する経営者の一人であるのは間違いない。斬新な戦略はメディアを賑わしているが、僕らが知っているのはあくまでも上辺で、詳細までは不明な点が多い。
本書は本人からの聞き取りも含め綿密なリサーチにより、最近までのローソンの10年間が描かれている。
「改革」を言葉にするのは簡単だが、実際にそれを行うのは半端ない力が必要。それも外部から突然現れた社長ともなれば、社員との信頼関係は皆無で、スタートはゼロではなくマイナス。
シラッとした社員の前に立っている姿を想像するだけで、背筋がゾッとする(苦笑)。僕なんかはいきなり会社を任されたと言っても、全てを理解してくれるメンバーと仕事をする訳だから、その苦労は比較にならない。持ち前のパワーだけで解決できる問題でもなく、いかにヤル気にさせるかが重要。
その事については、巻末にスクウェア・エニックスの和田社長が新浪氏の経営手法を代弁している。
新浪さんはヒントを教えてあげた上で「やってみろ」と。それをじっと見守ってやる。そういう感じじゃないですかね。やれると信じてあげる、ということです。だから彼の部下たちは奮い立って動くんじゃないでしょうか。
社長業って人を動かすのが仕事ですから。大きなビジョンを作って「こっちだよ」と言ってあげて、まずそれが社長の一つ目の仕事です。二つ目の仕事は、もうひたすら人を鍛えて、育てて、動議付けをしてそっちに持っていくことですね。

これはうちのような中小企業であれば、まだやり易い面はあるだろうが、ローソンのような大組織となるとそうはいってもかなり困難なはず。とてつもないリーダーシップを発揮されているわけだ。
それは社員だけでなく、バランスよくFCオーナーにも目を向けているから、人間の大きさを痛烈に感じる。ほんの少しだけでもその力を分けて頂きたい(笑)。
本書を読めば、ローソンがマーケティングの会社であることも十分理解できる。セブンイレブンの顧客視点の経営も十分参考になるが、それとは全く切り口の違うローソンの「個客」指向もまた大きな学び。
ビジネスには正解はない。自分たちで創っていくしかない。ほんの少しでも自社に活かせればいいのだけれど・・・(笑)。