定期的にこのジャンルや読む必要がある。
もちろん自分自身の勉強のためだが、
成功例も失敗例も知っておくことで関わる方との会話も広がる。
先月からスタートした「名古屋ファミリービジネス研究会」も
僕にとっては大きな学びの場。
受講者の学びが目的なのは明確だが、その場は僕にとってもありがたい。
お互い理解し合うことでリスペクトも生まれる。
同族企業における報道は未だにネガティブな面が中心。
最近でも某製薬会社や某食品メーカーが非難の対象となったり。
非難されるべき事実を受け入れるのは当然だが、
尾ひれがついて同族企業自体が悪いという認識はどうかと思う。
それは僕がこの仕事をやってきたことと仲のいい同族企業経営者が多いので思うだけ。
もし、サラリーマンのままだったら、マスコミの報道をそのまま受け止めたかも。
そのためには中立的に学ぶ面は重要。
本書はマイナス面を披露しながらも、本来持つ「本当の強さ」を明らかにする。
20社以上の事例が紹介されているが、その大半は知らない企業。
獺祭やホッピービバレッジ、ジャパネットたかた等、
頻繁に紹介される有名な企業もあるが、そうでないのがほとんど。
背景には苦労や葛藤、相当な覚悟が存在するが、それが今も成長を続ける強さの証。
順風満帆に承継されるケースは少なく、生きるか死ぬかの攻防も多い。
僕も苦労したつもりだが、きっと鼻で笑われる。
苦難を乗り越え、今、実績を上げているということ。
苦労せずスムーズに事業を営む人も知っておいた方がいい。
どこかでオーバーラップさせた方が危機管理にも繋がる。
事例が中心の本書だが、参考になるデータも多い。
日本には婿養子による経営という選択があるが、欧米や中国、韓国にはない。
婿養子は日本独自の仕組み。
付随する「バカ息子」問題も目立ちやすいが、
実際には資質のある後継者を選び業績にも反映されている。
売上高成長率からみた場合、後継者は「年齢が若い」「業務経験が短い」
「技術や経理に強い」等が成長率が高い。
一方でROAの高さからは「業界経験が長い」「技術や経理に強い」等
の場合に優位さが目立つという。
売り上げを伸ばすには若く短く、ROAを高くするには業務経験が重要。
なるほどね。
なんとなく分かる気がする。
他にも参考になるデータはあるので、次回の研究会にでもネタにするかな。
僕の周りにも知らないだけで、すごい同族企業は数多く存在する。
もっと知れる機会があるといいね。
予備知識はなく映画サイトの評価が高かったので観た作品。
オープニングでリバイバルかと思ったり、
いつの時代を描いた作品なのかと予備知識のなさを後悔しながら映画は進行。
70年後半?
80年代初頭?
と想像していたが、映画の途中で1970年ということが判明。
本作の解説にはしっかりと表記されていた(汗)。
当時のバラエティ番組やジムビームが2ドルで買える背景から時代は明確に。
作品とは関係ないが、主人公のハナム先生はどこでもジムビームばかり飲んでいる。
料理長のメアリーはラベルから推察するとオールドグランダッドじゃないかな。
1970年代のアメリカはバーボンが主流。
それもストレート。
ちなみに僕は20代半ばはバーボンをロックで飲んでいた。
70年代から90年代にかけてバーボンがウイスキー文化を作っていたのか。
いや、アメリカだからバーボンが普通か。
あまり飲まなくなったバーボンを急に飲みたくなってきた。
ジムビームは安く買えるし・・・。
ウイスキーの話をしたいわけではない。
映画でも重要なポジションを担うが、あくまでも脇役。
作品は主人公の教師と寄宿舎に残る学生と寄宿舎の料理長との交流を描く。
教師は生真面目で皮肉屋で生徒からも同僚からも嫌われている。
学生は両親と疎遠になりつつある。
料理長は息子を戦争で失くし落ち込む日々を送る。
そんな事情を抱えた3人がクリスマス休暇を一緒に過ごす。
どこかで観たことのあるようなストーリー。
目新しさがあるわけじゃない。
それでも毎日一緒に過ごす時間に僕らは吸い込まれていく。
反発しあっていた関係から理解し合いかけがえのない存在に。
その流れが感動的。
本音をさらせば心も通い合う。
結局は人なんだ。
1970年代であろうと2020年代だろうと関係ない。
白人であるか黒人であるか国籍も関係ない。
日本人も同じ。
互いを許しあえるかどうか。
今、危うい方向に向かっている世界も一緒。
そんな点は学ばないと・・・。
本作は今年のアカデミー賞にもノミネート。
メアリー役のダバイン・ジョイ・ランドルフは助演女優賞を受賞。
全然知らなかった。
その影響か地味な作品の割には観客も多かった。
それにしても70年代は飲酒運転も映画館でのタバコも当たり前。
おおらかな時代。
それがいいとは思わないが、いつの時代も求められるのは同じ。
こんな関係性を作れる存在でありたいね。
今やハラスメントはどんなことにも当てはまる。
何かと気をつけなければならない時代。
そんな時代を嘆く人も多いだろうが、現代の常識と受け止めるしかない。
そして、こちら。
ドリーム・ハラスメント。
ここまできたかという印象もあるが、むしろ僕は共感する。
今年も大学でキャリアの授業を担当し、170名の学生が受講。
毎回、リアクションペーパーで学生の学びを理解するが、本書と被る面は多い。
多くの学生がやりたいことが決まっていなったり、やりたいことが見つからない。
それを否定するつもりはない。
学生は自分に夢がないことを卑下するが、問題ないことを伝えている。
これだけ情報が溢れ、また、生まれた時から暗いニュースばかり接してきた学生からすれば、
夢を描くのが難しいのが現実。
それを大人が理解できるかが問題。
ありがたいことに僕はキャリアの授業や就職支援を通して、その実態をみることができる。
しかし、多くの大人はそれを知らず、無責任に良かれと思い、夢を作らせようとする。
温かいエールのつもりで発している「やりたいことをやっていいよ」でさえも、
背中を押すどころか若者たちを苦しめる凶器と化している可能性がある。
本書ではそう表現している。
ファミリービジネスでは「やりたいことをやっていいよ」は期待されていないと捉えられるが、
言葉の使い方次第では相手を傷つけるのだ。
僕も20年前なら「夢に向かって努力しろ」と自分を棚に上げて言ったかもしれない。
セクハラ、パワハラと同様にこちら側がまず学ばなければならない。
ドリームハラスメントによって個性が捻じ曲げられた若者はいくつかに分かれるという。
1つ目は夢に出会える日を待ち続ける待機型。
2つ目は夢を慌ててとか無理矢理に作る即席型。
確かにそんな面はあり、それに縛られて苦しくなる。
だから、学生は自分の将来が決まっていないことをマイナスと捉えてしまう。
全ての学生を呪縛から解放してやろうとは思わないが、本書を紹介し安心材料にはしてあげたい。
僕らにできることは偶然の出会いを求めての行動や「小さなチャレンジ」を促すこと。
そのために多くのサンプルを見せること。
背中で語ることで何かを感じることもある。
本書を読み、僕とニシダで取り組む授業の方向性が誤っていないことを改めて感じた。
今週からはゲスト週間。
先輩たちに身の丈を語ってもらう。
それがきっと勇気にもなる。
そんな気持ちで若者を育てていきたいね。
今年は愛知県を舞台にした映画が多い。
先日の「ディア・ファミリー」は春日井市が舞台。
映像から背景をイメージさせてくれた。
本作は愛知県平井市という架空の街。
映像からどのあたりかも想像できない。
海が近い?
山が近い?
ということは三河方面?
なんて愛知県民らしい想像はするが、どこかはイメージできなかった。
作り手の策略なのか不明だが、混沌とした事件を解明するには謎が多い方がいい。
ネタバレしない程度に解説すると、杉咲演じる県警の広報職員が
親友の変死事件をキッカケに捜査に乗り出し解明していくサスペンスミステリー。
本作で県警の広報職員は警察官でないことを初めて知った。
正規社員でも警察署で働いている全てが警察官ではない。
商売柄理解しておかないと・・・。
そのため職員といえども捜査する権利はなく、自分勝手に進めていく。
それでも意外と許されるんだね。
その中から警察内の闇を暴いていくのだが、それがリアルにありそう。
パズルのようにピースをはめ、真相を追求する展開は観る側をその気にさせる。
杉咲花と同様にもしかして・・・と想像力を働かせる。
彼女のような完璧なロジックは難しいが、なんとなく読める面もあったり。
そのあたりも巧みな演出なんだろうか。
僕は小説はあまり読まない。
読んでもビジネスものか歴史ものくらいでミステリー小説はゼロ。
原作柚月裕子は僕の好きな「孤狼の血」シリーズの作家。
あのハードな世界を想像したが、そこまでではなかった。
白石監督がぶっ飛び過ぎているのか。
気になるのはその後のストーリー。
「で、どうする?」と某タクシーアプリのCMの気分になる。
事件はどこで区切るのだろうか。
観た方に感想を伺いたい。
それにしても主演杉咲花の活躍が目立つ。
この半年だけでも「市子」「52ヘルツのクジラたち」と続き、180度異なる人物を見事に演じる。
本作もほぼ出っ放し。
彼女のために制作されたと勘違いしそうだ。
当面、時代は続くかもね。
ふと、疑問に思ったこと。
やたらと社屋の屋上での密談が多い。
他の職員は屋上に行かないのか、
もしくはあれだけ行っていたら、それでバレないのかと思ってしまう。
刑事もののテッパンと解釈すればいいのか。
キーワードはサクラ。
多くの場面に登場する。
まあ、タイトル通りという話だけど・・・。
藤井監督は学生時代、映画サークルに所属し映画ばかり作っていたいう。
僕も学生時代は映画研究会に所属し、8mmで映画を撮っていた。
その時の一本に「死んではみたけれど」という15分程度のしょうもない作品がある。
自殺した大学生が死後の世界で現実と交錯し、結果的に自殺は愚かで現実に戻る話。
とってもチープな内容だが、本作を観た時に当時の作品を思い出した。
本作はNetflixのオリジナルドラマで、
この世から旅立った人々から残された人々への思いを描いている。
いわば死後の世界と現実を繋いでいる。
僕の作品と遠くて近い。
先月も「青春18×2 君へと続く道」で書いたが藤井監督は好きな監督の一人。
勝手だが本作でより身近に感じてしまった(笑)。
僕の想像力や発想力との圧倒的な違いは理解しているが・・・。
すいません、どうでもいい話で。
多少のネタバレは許されるだろう。
災害により亡くなった母親役の長澤まさみが息子の無事を祈り、
あちらの世界から探し求めるストーリー。
リリーフランキーや坂口健太郎など未練を残して世を去った人たちとの交流を描く。
その中から人間の温かさや無常さ、生きていることの価値を理解していく。
もっと危うい世界を描く作品かと想像していたが、気持ちが優しくなれる作品。
藤井監督はクールとホットを上手く使い分けできる稀有な存在かもしれない。
いずれにせよ人の心の内を表現するのが上手い監督だ。
そして、感じたのは映画への愛。
「青春18×2 君へと続く道」では映画へのリスペクトを感じたが、本作はさらに愛を感じた。
リリーフランキー演じるマイケルは元映画プロデューサー。
自らも自伝的な映画を撮っている。
それを死後の世界で完成させ、その世界で観てもらおうと
奔走するが、それがまさに映画への愛。
藤井監督の映画好きがいくつかのシーンでくみ取ることができる。
好きな作品の傾向も・・・。
それだけでも十分楽しめた作品。
そして、主役の長澤まさみだな。
7歳の子供の母親の35歳を演じているが、とても魅力的。
誰かが好きになるのも仕方がない。
彼女は冷たさと温かさを両方演じきれる。
ちょっとすき間時間があるのなら、観てもらいたい。
僕は「余命10年」も観てみるかな。
本作の予告編は何度も見た。
また、大泉洋が出演するTV番組もあきらかに映画の宣伝になっていた。
完全に「お涙ちょうだい」の映画。
毛嫌いするわけではないが、
人の死で泣かせる作品はあえて見る必要がないと決めていた。
しかし、である。
本作の舞台は愛知県。
それも実話がベース。
あまり映画を観ない愛知県の知り合いも鑑賞。
しかも絶賛の声が圧倒的。
モデルとなった主人公は「東海メディカルプロダクツ」の筒井会長。
愛知県では敬意を払うべき知られた企業。
なんとなく背中を押された感じで観ることに。
想像していた展開であるのは間違いない。
それを冷めた視線で観ていたわけではない。
グイグイと引っ張られ、気づいた時には僕も多くの人と同じく感動に包まれていた。
大泉洋扮する坪井社長。
諦めずに邁進するその姿は父親としても、経営者としても、
一人の人間としても尊敬。
とてもじゃないがマネはできない。
万が一、自分の子供が同じ状況だった場合、自分はどこまでできるだろうか。
呆然と立ち尽くすしかないのではないか。
すべて投げ打ってでも守るべき存在を守ることができるか。
自分と重ね合わせる必要はないが、きっと情けなく映るだろう。
一人が諦めなければ、周りも感化され、共感者や同志が増える。
やがて大きな力になっていく。
キッカケは個人的なことに過ぎないが、与える影響力は大きい。
感動の人間ドラマであるが、人としての姿勢を教えてもらった。
大泉洋さん、なかなか、やるじゃないか。
ドラマとしては多くの方が語る感想とほぼ同じ。
敢えていうこともない。
それ以外に感心したのは時代考証。
1970年代から現在までを描いているが、
名古屋駅の風景を上手く映し出していたし、
当時の自動車や新幹線の煙草を吸う車内もよかった。
エンドールの撮影協力には経営者仲間の名古屋クラウンホテルの名前も出ていた。
それだけで身近に感じてしまった。
作り手の策にまんまと乗った身ではあるが、たまにはそんな映画を観るもいい。
もっと頑張らなきゃね。
僕も・・・。
てっきり岡本喜八監督の自伝と思っていた。
確かにその要素は強い。
しかし、岡本喜八の映画監督としての足跡と捉えてはいない。
その人生観を捉えた書籍。
すでに亡くなって20年近い。
映画ファンでなければその存在も知られていない。
圧倒的なファンはいるだろうが、そんなファンも相当な年齢。
今、この時期に発行された意味はなんだろう。
危うい方向に進みつつある日本へのメッセージだろうか。
僕が観た岡本作品は39本中3本しかない。
「日本のいちばん長い日」「ジャズ大名」「大誘拐」の3本。
岡本作品を語るレベルにはない。
言い訳がましくいえば、いつか観ようとずっと思っている。
ということはいつまでも観ないのか・・・。
困ったもんだ。
僕の中では豪快で鬼才というイメージだが、本書を読むとそのイメージは大きく変わる。
もちろん世間が抱く豪快さはある。
しかし、それは敢えて演出した面も多い。
実際は繊細で自身と葛藤しながらの人生。
戦争体験が作品にも色濃く残っている。
脚本や演出にも反映され、戦中派にとってはかけがえのない存在。
僕はそんな視点は1ミリも持っていなかった。
たった3本しか観ていない作品にも戦争で亡くなった仲間への想いが盛り込まれている。
「大誘拐」はメチャ面白かったが、もうほとんど忘れているし・・・。
黒澤明監督や市川崑監督の陰に隠れ、目立つ存在ではなかったが自分の方向性は貫いていた。
そのあたりが一部のファンに圧倒的な支持を受ける理由だろう。
庵野秀明監督が一番好きなのは岡本監督と本書でもインタビューが掲載されている。
そのリスペクトが「シン・ゴジラ」にも反映。
「日本のいちばん長い日」を連想するシーンや岡本監督自身の写真も使われているという。
全然知らなかった。
シン・シリーズでは「シン・ゴジラ」が一番面白かったしね。
今の監督は当然ながら戦争体験はない。
戦中派と呼ばれる監督は存在しない。
今後も戦争映画は作られるだろうが、その視点は現代から見る視点だ。
間もなく戦後80年を迎える。
戦争を知らない僕らは戦争を知らないまま一生を終えるのが理想。
ただ何が起きたかは学ぶ必要はある。
ダイレクトな書籍や映像も大切だが、岡本作品から間接的に学ぶのもいい。
少なくとも「独立愚連隊」「狂人狂時代」「肉弾」は観ておかないと。
いつか観ようなんていってられないな。
個人的に黒沢清監督作品を評論するのは難しい。
前作「スパイの妻」はヴェネチィア国際映画祭銀獅子賞作品で評価も高かったが、
僕の中ではそれほどでもなかった。
面白くないといっているのではない。
人物の描き方が特徴的過ぎて、上手く感情移入できなかった。
それはセンスとか好みの問題であくまでも個人的なこと。
数多い受賞が優れた作品の証。
異論を唱えるつもりは毛頭ない。
そんな意味では、本作も絶賛する者とそうでない者と分かれるだろう。
やはり描き方は独特。
僕はミステリアスな予告編に惹かれ足を運んだが間違いはなかった。
黒沢監督のセルフリメイクとは知らなかった。
どうやら前作と比較しながら観るとより魅力的に感じるようだ。
今は出番のない香川照之が主演のようなので機会があれば観てみたい。
黒沢作品で彼が主役の「トウキョウソナタ」は素晴らしい作品だし。
本作の舞台はフランス。
フランス・日本・ベルギー・ルクセンブルグ合作だが、タイトルからエンドロールまで全てフランス語。
ルクセンブルグあたりはどう絡んでいるんだろうね(笑)。
柴咲コウ演じる精神科医の小夜子はフランス語、英語、日本語を操る。
柴咲コウのフランス語がどこまで上手いかは分からないが、違和感なくドラマは展開。
これだけクールな彼女を観たのは初めて。
表現は正しくないかもしれないが、カッコいい。
いや、ちょっと違う。
冷徹で狂気か。
笑うことも泣くことも一切ない。
やや怒った表情しか映し出されない。
それは過去の出来事がそうさせていると後で気づかされる。
笑顔がステキな女優さんなのに・・・。
少しだけ説明すると、娘を殺された父親と彼に手を貸す精神科医小夜子が繰り広げる復讐劇。
父親が娘を殺した犯人を捜し追い詰めるのだが、主導するのは小夜子。
正直、この父親は人間っぽいのか、バカなのかよく分からない。
小夜子はそれを見切っていたのかもしれない。
そのあたりの描き方が実に難解で黒沢監督的。
観る者を惑わせる。
正しさが存在するようで、正しさのかけらもない。
ストーリーと何ら関係のない西島秀俊もきっと大きな意味があるはず。
現段階で僕には分からないので、誰か教えて欲しい。
画面越しの青木崇高は理解できるが・・・。
不思議マークがつくことの多い黒沢作品だからこそ芸術性が高いと評価される。
これからもそんな不思議さを求めて、僕も観てしまうんだろうね。
今年はドキュメンタリー作品を観る機会が多い。
「ビヨンド・ユートピア 脱北」
「劇場版 再会長江」
「Ryuichi Sakamoto | Opus」
珍しく音楽関係が続いた。
特に詳しいわけでも、好きなジャンルというわけでもない。
たまたまタイミングがあったのが正直なところ。
本作も観なきゃ知らないまま終わっていた。
加藤和彦という稀有なミュージシャンを理解できたのは観たからこそ。
僕が知っているのは「帰ってきたヨッパライ」と「あの素晴らしい愛をもう一度」くらい。
映画「パッチギ」にも取り上げられていたことも。
最低レベルの知識。
あとは紳士服のトリイのCMに出演されていたことを何故か印象強く覚えている。
トリイは2003年にAOKIと資本提携し、その後合併した名古屋の紳士服量販店。
僕が新卒事業の責任者をやっていた頃、リクルートスーツの販促でお世話になっていた。
コラボで関わっていたこともあり印象に残っていた。
本作とは関係ないが、その程度の知識だった。
こんなに才能溢れる音楽家ということを作品を通して初めて知った。
日本の音楽界に与えた影響は大きい。
ただそれを理解しているのは一部の方だけではないか。
吉田拓郎や坂本龍一、高橋幸宏を知っていても加藤和彦を知らない人は少なくない。
僕自身も知っているとはいえ、映画化されるほどではないと思っていた。
反省・・・。
そして恥ずかしくも思った。
新しい分野を切り開き、多くのミュージシャンも育ててきた。
思い切りリーダーシップを発揮し引っ張ったのではなく、気の向くままさりげなく巻き込んでいく。
演出かもしれないが、感化され見事に巻き込まれいく。
取材を受ける豪華なアーティストや業界関係者をみれば一目瞭然。
その重ねられたインタビューから加藤和彦そのものが映し出されていく。
ハナリー島の大統領らしき人がラストは感動してしばらく席を立てなかったと言っていたが頷ける。
さほど思い入れのない僕でさえ涙がこぼれそうになった。
残念ながら62歳で自殺してしまったが、その想いは今も語り継がれているのだろう。
多くの方がその死を防げなかったのを悔やんでいた。
映画館の観客は多分、僕が最年少。
ほとんどは同世代を生きてきた方。
喜びも悲しみも抱えて観ていただろう。
今年はドキュメンタリーをもっと観ようと思う。
そして、カラオケで「あの素晴らしい愛をもう一度」を歌おうと思う。
そんな作品だった。
正直、面白いとは言い難い。
映画にハラハラドキドキや痛烈なメッセージを期待する人は止めた方がいい。
今の若者ならオープニングの数分も耐えられないかもしれない。
きっと早送りしたくなる。
逆をいえばそれを気にせず、映画に向き合える方なら楽しめるのかもしれない。
いや、楽しめるという表現は間違っている。
本作を楽しむことはできない。
恐怖を感じることしかできない。
ホラー映画ファンなら恐怖は快感に変わる。
しかし、本作は快感には程遠い。
鈍感で無関心な人が何も感じない程度。
実は何も感じないのが一番恐ろしかったりする。
毎日報道される紛争のニュースも慣れてくると不感症になる。
自分とは関係ない遠い世界の出来事と思えてくる。
常に当事者意識と緊張感を持たないと物事に鈍くなる。
大切なのは半径10メートルの世界。
そこにしか関心が向かなくなる。
それっておかしくない?
ということを本作は何も発せず教えてくれる。
人が殺される残虐なシーンは一切ない。
人を傷つける言葉もない。
静かに平和な暮らしを描いているだけ。
余計な雑音さえ消してしまえばシアワセそのもの。
どアップの無音の映像だけなら気づかないはず。
チャップリンは
「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」
といったが、そうではない。
クローズアップは幸せで、ロングショットは不幸。
遠くを見れば現実が目に入ってくる。
耳を澄ませば本当の音が聞こえてくる。
それを感じさせてくれた辛い作品。
今年は後味の悪い作品を結構観ているが、その中でもバツグンかもしれない。
まあ、これも映画の味わい方ということで・・・。
特に説明する必要もないが本作はカンヌ映画祭グランプリ作品。
アカデミー賞でも国際長編映画賞を受賞。
数々の賞を受賞しているが、面白いとは言い難い。
アメリカ・イギリス・ポーランド合作ではあるが、舞台のドイツは関わっていない。
何か大きな理由でもあるのだろうか。
捉え方は様々だが、観るべき1本であるのは間違いない。