これからも前向きに 名大社会長ブログ

カテゴリ「本を読む 映画を観る」の記事一覧:

高橋源一郎の飛ぶ教室 はじまりのことば

NHKの人気ラジオ番組の冒頭の3分をエッセイとしてまとめた書籍。
ちなみにラジオは一度も聴いたことがない。
本書はたまたま自宅にあったので手に取った。
義母が購入し読後、カミさんが読んで僕に回ってきた。

考えるのは義母はなぜ本書を読みたかったのか。
ラジオを聴いているのは知っていたが、読む理由は分からない。
単純にファンなのか。
事実は不明だが、読み終えて何となく理由は分かるような気がした。

50分番組の最初の3分。
チェックインというか簡単な挨拶というかたわいもない話。
それがエッセイになってしまうのは著者の力量。
それを読むだけで高橋氏の人となりや考え方が伝わってくるから不思議だ。

番組がスタートしたのは2020年4月。
ちょうどコロナが蔓延し日本中が緊張状態に陥った時のこと。
読みながら4年前を思い出した。
わずか4年しか経過していないが随分昔のことのよう。

時事ネタを盛り込みながら高橋氏の思いが素直に語られている。
そして語られるのはその半生。
子供時代、学生時代、作家を目指しバイトをしていた時代。
僕よりも15歳年上なので、学生運動が盛んな時期。
モヤモヤを抱えながら若い頃を過ごしてきた。
どんな人でも多かれ少なかれ同じなんだろうね。

自分の中では大先輩という認識だが、違和感というか不思議に感じた点がひとつ。
高橋氏は結婚が遅く子供が生まれたのもいい年になってから。
僕の子供よりも小さい。
現在進行形で子供の成長を語っているが、
それが中学生だったりするので不思議な感覚に襲われた。
なんてことはない話んだけど・・・。

それを含めて自分を表現することなんだろうね。
簡単に読める書籍だが、まず自分では購入することはなかった。

義母が読んだ本を読むことも不思議な感覚。
それもおススメされたわけでも譲られたわけでもない。
共有の空間があったというだけ。
ただこの先を考えると貴重な時間だと思う。

たまにはそんな読書もいい。
僕もくだらない映画ネタや食べ物ネタだけじゃなく、
教養を感じさせる深みのある挨拶をできるようになりたい。
難しいと思うけど。

映画「BISHU 世界でいちばん優しい服」

周りの評判がいいので観ることにした作品。
「はじまりの日」に続き、ご当地映画。
舞台は愛知県一宮市。

一宮を中心に津島、稲沢、江南、岐阜県羽島あたりは尾州と呼ばれ、世界三大毛織物の産地。
今でも存在は変わらないが、その産業の現状は厳しい。

僕は営業時代(もう20年以上も前)、この地区を担当しいくつかのクライアントを抱えていた。
かつて取引のあった毛織関係の企業とは僕の時代にはほぼお付き合いはなし。
斜陽産業で正直、人材採用を積極的に行う企業は少なかった。
ただこの周辺はよく回ったので、映画に登場する場所は結構知っていたり。
それだけでも親近感が湧いた。

それが理由ではないが、愛らしい映画として楽しませてもらった。
ストーリーの難しさは一切ない。
いい方は失礼だが、ありふれたテーマでもある。

発達障害の女子高生が優れたデザインセンスでファッションショーに臨む。
ほぼ想像した通りの展開。
裏切られることもハッと驚くこともない。

しかし、それでいい。
いや、それがいい。
シンプルな展開に感動し、共に喜んでしまう。

それが知った土地ならなおさら。
素直な気持ちにさせてくれた。
時々は心が清らかになる映画を観た方がいいね。

主役は服部樹咲。
忘れていたが「ミッドナイトスワン」では将来のあるバレエダンサー役。
僕は新人賞にするとブログに書いていた。
(なぜかこのブログは今でも人気記事1位・・・)

中学生だった当時からかなり成長し見かけも変わった。
彼女が素晴らしい。
おどおどしながらも真面目に生きる姿も、
凛とした態度でファッションショーに臨む姿もステキ。

何より歌声が素晴らしい。
映画の中では分からない。
エンディングで流れる歌で分かるだけ。
プロの歌手が顔負けじゃないのかと。
これも感動。

そして本作を観て気づいたこと。
「はじまりの日」に出演していた岡崎沙絵や山口智充が本作にも出演。
ただの偶然?
プロデューサーはTV局出身だから、人選は通用するのかも・・・。
そんなことを感じた作品。

まだ観ていない人は素直な心で臨んで欲しい。
頑固オヤジの吉田栄作もよかったしね(笑)。

映画「ジョイランド わたしの願い」

生まれて初めて観たパキスタン映画。
描かれる世界が日本が舞台だとしても受け入れるのは簡単ではない。
理解は進みつつあるが、完全とは言い切れない。
それがパキスタンが舞台となると抵抗も強いだろう。

解説を読むと保守系団体の反発を受けて政府から上映禁止命令が出されたという。
何かといえばLGBTQに対する理解。
パキスタンの伝統や文化については無知だが、
家父長制の強い国だと映画から知ることはできる。

映画を通して外国の文化を知るのは重要。
特に最近は今まで公開のなかった海外作品に触れられる。
韓国映画のようにむやみやたらと入ってくるわけではないので、
自ずと選りすぐりの作品。
その国の代表が輸入される。
まだまだ鑑賞できる機会は少ないので、タイミングが合えばどのジャンルでも観たい。

本作は保守的な大家族の日常を描く。
家父長となるお爺さんを中心に長男家族、次男家族が同じ家に住む。
息子は仕事に出て、嫁は家庭を守り男児を産むことが望まれる。
昔の日本と同じだが、更に厳しい慣習を感じる。

大概、長男はしっかり者で次男はちょっと抜けている。
万国共通なのか・・・。
次男ハイダルは失業中で奥さんのムムターズが家計を支える。
しばらくしてバイタルに仕事が見つかるが、そこから家庭が揺るぎ始める。
冒頭の上映禁止命令に繋がっていくが、描く世界が誤っているわけではない。

自分らしく生きようとする行為が人を傷つけ関係性を壊していく。
日本にも同じような事象はあるはず。
抵抗感の強い国だからこそ目立ち、その分苦しい。

映画を観ながら1990年代か2000年代かと思ったが、普通にスマホを扱うので現代。
日本と比べれば何かと遅れており、お国事情は読み取れる。
それも映画からの学び。

パキスタンは南アジアか中東なのか。
海外事情に弱い僕は基本から覚える必要はあるが、映画はインドの香りも中東の香りもする。
バイクでヘルメットは被らないし、遊園地も一昔前の施設。

自分たちの世界が標準なんてことはない。
人の価値観も同様。
日本の標準もパキスタンの標準もない。
それそれが持つ価値観が全てといえる。
だから幸せにもなるし不幸にもなる。

ラストシーン、バイタルはどこへ向かうのだろう。
未来か、それとも別の世界か。

これも貴重な体験。
もっと海外作品を観る機会を増やしていきたい。

映画「はじまりの日」

なんとも不思議な映画。
一体、どんなジャンルに該当するんだろうか。
ミュージカル映画、青春映画、社会派ドラマ・・・。

どれも当てはまるようで当てはまらない。
解説には音楽ファンタジーと書かれているが、それとも違うような気がする。
日比遊一監督はあえて外すことを狙っていると勘ぐってしまう。

日比監督とは3年前に直接話をする機会があった。
「ロケ地ツアーに行ってきた」でも紹介したように映画「名も無い日」のロケ地ツアーに参加し、
映画に関してのエピソードを伺った。
(あの時は当たり前のように全員マスクをしていた)
その時を思い出すと全て計算されているように思える。

本作も名古屋ロケが中心。
またまたご縁がありムビチケを購入し鑑賞。

愛知県では多くの映画館で公開。

主役中村耕一は誰もが知る元JAYWALKのメインボーカル。
覚せい剤取締法違反で逮捕され活動を休止したが、本作はその後を描いているように思わせる。
ちなみに役名はなく男としか表示されない。
映画の中でもアンタとかお前とかアナタとしか呼ばれない。
正直、演技はヘタだが、却ってドキュメンタリーのように感じたり。
それも巧みな演出なのかな。

テレビ塔やセントラルパーク等、知った場所や実際の企業名も映し出され親近感が湧く。
愛知県では「名も無い日」同様、ヒットするんだろうね。

僕が最も感じたのは音楽は人を感動させるということ。
今更、何をと思うかもしれないが、本作での一番の気づき。
それは女役の遥海さんの歌声。
何度か歌うシーンが披露されるが、その歌声に素直に感動した。
涙が出そうになった。
それだけで映画を十分に楽しめたといっていい。
遥海さんは初めて知ったが、これから注目していきたい。

本作には名古屋で有名な矢野きよ実さんも写真一枚で出演。
以前の男の奥さん役というシャレの効いた設定。
何の問題もないネタバレ(笑)。

ラストシーンの解釈は人によって違う。
僕はあの飲み物からいいように捉えたが、実際、どんな観方をされるのだろう。
そのあたりは観た人に聞いてみたいね。

映画「犯罪都市 PUNISHMENT」

シリーズ第4弾。
映画館じゃなくてネット配信で十分だと思っていた。
しかし、気持ちが抑えきれず、つい映画館に足を運んでしまった。

このシリーズのファンになってしまったのかも。
「犯罪都市」「犯罪都市 THE ROUNDUP」はAmazonプライムで鑑賞。
3作目の「犯罪都市 NO WAY OUT」はまだ観ていないが、日本公開は今年2月。
韓国の公開は昨年なので、2作目から本作までは毎年制作されている。

最大の人気シリーズ。
いつまで続くか楽しみにしたい。
シリーズ3本を観る限りドラマ展開はほぼ同じ。
ド定番さが痛快で面白い。

屈強な肉体を持ちめっぽう強いソクトはソウルの刑事。
警察と対立するヤクザをバッサバッサと倒していく。
半端ない強さで過激なシーンが多いが、観る側は無責任に楽しめる。

最後に戦うのは最強のヤクザやマフィア。
この相手がどれも極悪で非道。
人を殺すことに何のためらいもない。
ソクトも必ず危うい目に逢うが、圧倒的なパワーで押し切る。
シチュエーションは違えども展開は変わらないので単純明快。
結末が予測できるから安心(笑)。

主演マ・ドンソクを取り巻くレギュラー陣も面白い。
中でもヤクザ役のパク・ジファンはいい味で毎回笑わせてくれる。
韓国語が理解できればセリフ回しを含め、もっと楽しめる。

なんだかシリーズ全体の話になってしまった。
本作の舞台は2018年。
1作目からはかなり年数が経ち、それぞれの立場も変われば犯罪手法もIT化が進む。
犯罪もより巧妙になり、舞台もフィリピンと韓国。
徐々にスケールは大きくなっていくのかな。

本作を多く語る必要はなく純粋にアクションを楽しめばいい。
そんな作品。

最近、日本ではこの類のシリーズものはないでのは?
一話完結のシリーズよりキングダムのようなストーリーが続く流れが中心。
名探偵コナンやドラえもんは一話完結だが・・・。

対抗するなら白石和彌監督に「孤狼の血」シリーズを撮ってほしい。
そんなことを感じてしまった。
大人のシリーズものを日本でも制作してもらいたい。

「地面師」を読む

多くの人が話題にしていたNetflixの「地面師たち」。
少し前になるが一気に観てしまった。
評判通りの面白いドラマ。

監督、脚本の大根仁氏はTV局に企画を持ち込んだが全て断られたという。
過激な作品はもはや地上波では受け付けない。
賛否はあると思うが、面白いドラマは地上波からは生まれなくなってしまうのでは。

ちなみに大根監督作品で観たのは「モテキ」「SCOOP!」
両作ともメリハリのある良作。
「SCOOP!」を観ても、これに近い作品は地上波では無理だね(笑)。

「地面師たち」のモデルは積水ハウスが地面師グループに土地購入代金の55億円を騙し取られた事件。
どこまで本当かは分からないが、かなり実話に近いらしい。
さすがに山本耕史のような土地を眺めながらの行為はないと思うが・・・。

その流れで原作を読んでみた。
と思って購入した書籍は原作と違った。
ノンフィクションの「地面師」。

ドラマの参考文献ではあるが原作ではない。
酔って注文したのか、手元に届いてからノンフィクションであると気づいた。
たまにはこんなミスもOK。
面白く読ませてもらった。

森功氏は人の闇を描くのが得意なノンフィクション作家。
これまでも「日本を壊す政商」「ならずもの」
「国商 最後のフィクサー葛西敬之」と手に取った。

「地面師」では積水ハウス、アパホテルはじめ、
いくつかの不動産詐欺事件を取り上げている。
冷静になれば騙されることはないと思うが、
それはあくまでもより客観的な立場で疑って観ているから。

当事者で土地を見せられ、完璧な証書や契約書を出されたらコロッといってしまうかもしれない。
幸い僕は大したお金も持っていないし、
土地を所有したい欲もないので事件に巻き込まれることはないが、
誰にでも可能性はあるだろう。

実際に本書に登場していないだけで、詐欺事件は無数にあるはず。
不動産詐欺限らず、ありとあらゆることで考えられる。
夜の街で1時間5000円という囁きを含め、疑ってみる目は養わなきゃいけない。

得てして加害者も完ぺきではない。
ドラマもそうだが、本書でもちょっとしたミスを犯している。
気づくチャンスはあったはず。
盲目的な判断では困るが、恥をかいても立ち止まる勇気は欲しい。

映画もそうだが書籍も実話ものは勉強になる。
たわいもない感想ブログだが、自らを戒めるいい機会になった。

次回、Netflixではこちらも話題の「極悪女王」を観てみようか。
白石和彌監督だし・・・。
学ぶ点があるかどうかは分からないけど。

映画「シビル・ウォー アメリカ最後の日」

最近、実話をベースにした映画ばかり観ているが、本作は違う。
いや、数年後、映画の世界が本当になったりして・・・。
さすがに勘弁してもらいたいが、あり得ないとは限らない。
アメリカが分断され、政府軍と政府から離脱した西部勢力との内戦が起こる。
そうならないとは限らないということ。

予告編を観ながら内戦を中心とした戦争映画と思っていた。
その要素はあるが、メインは戦場カメラマンらジャーナリストの視点。
大統領の取材のためにニューヨークからワシントンへの向かう旅が中心。

観方を変えればロードムービー。
一般的にロードムービーは牧歌的な雰囲気だが、本作はまるで逆。
常に命を奪われるかどうかの世界。

平凡な精神力であれば途中で投げ出す。
あえて困難な取材を試みようとは思わない。
ジャーナリストとしての使命感だが命懸け。

実在する戦場カメラマンはこんな感じかもしれない。
僕らは無責任に戦争の惨状を写真や映像で観るが、撮影するのは本作と同じかも。
兵士の背後に潜みながら撮影を続ける。
銃弾に倒れる可能性もある。
しかし、ここにしかない1枚のために動き続ける。
そんな姿も描かれていた。

そこにはどっちが正義でどっちが悪なんてない。
敵か味方かしかない。
同じアメリカ人というザッパな括り方は存在しない。
容赦なく殺される。
どちらが政府軍でどちらが西部勢力か観る者も迷う。
これが星条旗か・・・。

予想していたより戦闘シーンは少ない。
それよりも全体を俯瞰し飛ぶヘリや1対1で向き合う兵士の方が恐ろしい。
その方がリアルに感じるからだろう。
知らない人が大量に殺されるより、一人の仲間が目の前で殺される方がショックは大きい。

破壊された町や逃げ惑う人をずっと見ていると鈍感になる。
今、日々流される報道でもそう。
僕らはそんな戦争を非難しても、実際の傷の痛みは分からない。
しかし、それが目の前で起きれば・・・・。

主役戦場カメラマンリーを演じるのはキルステン・ダンスト。
映画を観ながら、ずっと何に出てたっけ?
とどうでもいいことが気になっていた。
「あ~、スパイダーマンやパワー・オブ・ザ・ドッグね・・・」
彼女が戦争の悲劇を映し出す演技をしていた。
人の表情や動きだけでも伝えることができるわけね。

最近、アメリカ映画は大人しいと思ったが、本作は大胆。
僕はよく知らないが配給は「A24」という新進気鋭のハリウッドスタジオ。
かなり尖った作品を送り出してる。

やはり新しい力が新しい動き作り出す。
こんな世界はない方がいいが、これからも楽しみにしたい。

映画「サウンド・オブ・フリーダム」

最近、海外作品は実話をベースにした映画を観ることが多い。
本作もそう。
「2度目のはなればなれ」のような気持ちが温まる作品ならいいが、そんな作品ばかりじゃない。
できれば目を背けたくなる作品も存在する。
むしろ辛い事実をこんな作品を通して理解するのが必要だったり。

15年前に観た坂本順治監督の「闇の子供たち」は衝撃的だった。
タイの裏社会で横行する人身売買などを描いた作品だが、
こんな事実があるのかと絶望的な気持ちになった。

「闇の子供たち」は実態をベースに制作されたフィクションだが、本作は違う。
ほぼ事実を描く。
その分、ショックは更に大きい。

コロンビアを中心に人身売買が行われ、性的虐待に遭う少年少女。
犠牲になった子供たちを救出する姿を描くが、
この国際性犯罪の市場規模は年間約1,500億ドルだという。
とんでもない規模。
その事実を知るだけでも居た堪れない気持ちになる。

観方を変えればヒーローものといえなくはないが、それは安易な発想。
主役の国土安全保障省の捜査官ティムはまっとうな大人として、
また親として正しい行動を取ったまでのこと。

しかし、それは命懸け。
それに成功確率は低い。
自らの命を落とす可能性の方が高い。
それでも子供を救出する意志が強い。

僕らが知らないだけで同じような実態は世界のあちこちで起きている。
多くは闇に葬られたり、社会に知らされず消えていくのではないか。
そうしないために事実を明らかにするのが、骨太な本作の役割。

映画で幸せになることも大切だが、
世の中の矛盾や信じがたい世界と向き合うのも映画の価値。
それを感じた作品だった。

本作では珍しくエンドロールであるメッセージと共にQRコードが映し出される。
映画館では必ず撮影禁止の案内が流れるが、この点は除外。
こんな画面が表示された。

これも映画の新しいカタチ。
撮影手法はB級映画を感じさせたが、れっきとした社会派ドラマ。
偶然見つけた作品だが、知らない世界を感じ取れたのはありがたい。

映画「2度目のはなればなれ」

今週末より公開。
初めてオンライン試写会で鑑賞。
とても便利なシステムだと思うが、やはり映画館で観たい。
決して文句は言わないけどね(笑)。

原題は「The Great Escaper」。
翻訳すると「偉大なる逃亡者」。
映画を観ると理解できるが日本語タイトルとは程遠い。

このタイトルに行きつくまで相当な議論もあったのだろう。
配給会社の努力も垣間見れる。
原題も邦題も映画を観ながら解釈するが、これでいいんじゃないかな。

本作は実話をベースに描いたヒューマンドラマ。
老人ホームで暮らす年老いた夫婦のラブストーリーともいえる。
とてもチャーミングな作品だった。

主演は91歳のマイケルケインと87歳のグレンダ・ジャクソン。
グレンダ・ジャクソンはイギリスで映画公開前の2023年6月に他界。
本作が遺作となった。
調べてみると政治家としても活躍され重責も担っていたので本国では有名な方。

一番に感じたこと。
レネ役のグレンダ・ジャクソン、このお婆ちゃんがほんと可愛い。
その仕草や会話がとても愛らしく、それだけで気持ちを持っていかれる。

ネタバレしない程度にいえば、
マイケルケイン演じるバーナードが老人ホームを抜け出しひと騒動起こす。
その一連の流れが「はなればなれ」の一つだし「逃亡者」。
ある目的を達成するために「逃亡者」にとなるが、そこには生きているうちに果たしたい約束がある。

その行動も感動的だが、なんといっても2人の夫婦愛だ。
若かりし頃から老いた今まで愛情は途絶えることはない。
お互いを信じ、どんなことがあっても認め合う。
「逃亡者」のお爺ちゃんをお婆ちゃんは健気に待つ。

できればこんな夫婦でありたい。
こうして最期を迎えたいと素直に思ってしまった。
ラストシーンもジーンときた。

イギリスだろうが日本だろうがどこの国だろうが、夫婦は存在は変わらない。
僕も頑張らないと・・・。
名優マイケル・ケインは本作が引退作だという。
マイケルケインもグレンダ・ジャクソンも見事な演技。

仲のいい夫婦もそうでない夫婦も観てもらいたい。

映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」

最近、「ぼくが~」で始まる映画が多い。
この1ヶ月でも「ぼくの家族と祖国の戦争」「ぼくのお日さま」を鑑賞。
なぜ、漢字ではなく平仮名なのか。
柔らかい雰囲気を出すためか、ただの偶然か。

僕はブログではぼくでもボクでもなく僕だけどね。
それはどうでもいいか(笑)。

本作は評価が高いことと呉美保監督作品が気になり観ることに。
エンドロールで主人公と原作者が同じ名前と知り、最後の最後で実話だと認識。
確かにフィクションにはないグッと迫るものがあった。

耳のきこえない両親と耳の聞こえる息子の愛情を描いた作品。
耳が聞こえない親から耳が聞こえる子供が生まれるのはいわゆるコーダ。
コーダといえば「コーダ あいのうた」
素晴らしい映画だった。
その流れでいえば2年前の「ケイコ 目を澄ませて」もステキな映画。
特別な観方はしていないが、気持ちは揺り動かされる。

本作もかなり気持ちが揺れ動いた。
当事者でもその立場でもないが、親の気持ちも息子の気持ちもよく分かる。
だから辛いと感じるし、愛おしくもなる。

母親明子は両親の反対を押し切り結婚し、また反対を押し切って子供を産む。
注ぐ愛情は強いが、なんせ耳が聞こえない。
赤ちゃんが泣く声も何かに触れる音も聞こえない。
危険な状態は毎日続く。
それでも周りの協力があり、子供は育つ。

耳の聞こえる息子大は両親の愛情を理解しながらも、自分の存在にコンプレックを感じる。
そして母親に辛く当たってしまう。
幼少の頃から手話を覚え母親と接せる姿をみれば優しい息子なのは百も承知。
そんな自分が許せず、一方で親から離れたいという気持ちで東京へ。
距離を置くことで視野は広がる。

息子大は吉沢亮。
葛藤する表情も優しい目も死んだ目もよかった。
大の少年時代の子役が吉沢亮に似ていると思ったのは僕だけか。

そして母親明子役の忍足亜希子が本当に良かった。
実際、ろう者の俳優。
息子を見つめる表情が美しくも悲しくも切なくもなる。
すべては母親としての愛情表現。

何も聞こえない静かなシーンで涙が出る。
もし僕がコーダだったら、大よりも優しくできるだろうか。
もっと愚かな態度で接するかも。
うむ・・・。

ふたつの世界を生きるのは簡単じゃない。
間接的だがその世界に触れられたことを感謝したい。