20年後、本作は歴史に残る傑作といわれるかもしれない。
もしくは存在すら忘れ去られる作品になるかもしれない。
そんなことを感じた映画。
それはYouTuberという時代を象徴する職業を描くこともあるが、
人間の感情がYouTubeという媒体を通して上手く表現されているから。
時代性を見事に反映させた作品ではないだろうか。
本作のテーマだけみればそれほど惹かれる要素はなかったが、
最近の吉田恵輔監督の活躍をみると観たくなってしまう。
昨年の「BLUE ブルー」も「空白」も個性溢れる映画。
作品の共通性はないが、2作品とも好きな映画。
これから注目する映画監督なのは間違いない。
そして本作も期待を裏切ることはなかった。
恋愛映画、青春映画のジャンルに入るが、ホラー映画と捉えても違和感はない。
決して気持ちのいい作品ではない。
むしろイヤな気分に陥る。
しかし、それを持っても観るべき作品じゃないだろうか。
主役は最初は心優しい男を演じるムロツヨシとYouTuber役の岸井ゆきの。
この2人の表情が素晴らしい。
心優しい男は豹変するけどね。
ムロツヨシは以前から達者な役者だと思っていたが、まさにその通り。
岸井ゆきのはどこが可愛いの?と思っていたが、
(大変スイマセン)
人気と共に変わっていく表情が抜群。
努力して売れようという姿はすこぶる可愛かったし、
その後、ムロツヨシを避けようとする姿はとても憎たらしい。
それがYouTubeを通した表情と普段の生活の表情のコントラストが凄い。
それだけで観る価値はある。
本作を起伏の激しい男女の話で収めるには勿体ない。
僕の見方に過ぎないが、今の時代への警鐘に思えてならない。
面白ければ何でも許されるという時代の流れに対して、
吉田監督は危機感を持ってメッセージを送っているのではないだろうか。
えっ、それは読みすぎ?
そんなふうに思ったり・・・。
ただ、やはり人は人。
最後は大切な場面が残されている。
そこは素直に感じよう。
爽やかな気分で終わるとは言い難いが、観ておきたい映画である。
この書籍を手にした時は、一部の人が映画を早送りで観るのだろう。
わずかな割合だろうと高をくくっていた。
それが本書を読み進めるうちに実態が分かり愕然とした。
しかし、同時に時代がもたらした事実として納得せざるを得なかった。
これが今の標準なんだと・・・。
自称映画コラムニストとして映画は基本映画館で観ることが前提。
そのためには予め予定を組み、
少なくとも2時間は全ての連絡をシャットアウトする必要がある。
メールもLINEも電話も何もかも遮断する必要があるのだ。
暗闇の2時間を確保するのはかなり難しい時代になった。
この時勢において映画館で映画を観ることは最大の贅沢なのかもしれない。
本書を読んでそんなことも感じた。
今の20代全体で49.1%が倍速視聴経験者だという。
大学2~4年生を対象とすれば87.6%がその経験者。
10秒飛ばしを行う学生もほぼ近い数字。
もちろん見る動画コンテンツによってその利用度は異なる。
まだ映画の割合は小さいが、いずれにせよそれが当たり前の時代。
映画を倍速で観るなんてあり得んと嘆くのは僕らのような世代で、
若者からすればそんな嘆き世代は時間の使い方がヘタクソとしか思われない。
拘束される映画館はともかく、
YouTubeでも、ネットフリックスでも、Amazonプライムでも
その倍速機能が標準装備ということは推奨していると捉えても仕方ない。
僕は知らなかったが若者たちは「タイパ」「タムパ」という言葉を使う。
「タイムパフォーマンス」の略で時間のコスパを表す言葉。
これだけ情報が溢れている昨今、どの情報を選ぶかは彼らの中では重要な行為。
少しでも無駄を省きたいと思う。
ファスト映画が象徴するように映画はあらすじが分かればいいし、
観てつまらなければ最大の後悔になるという。
僕もつまらない映画を観た時は時間の勿体なさを感じる時はあるが、
それは作品側に問題があるのではなく、
その作品を選んだ自分に問題があるという認識。
逆にこの作品はどこがつまらなかったかが論点にもなり得る。
いい評価対象にもなるが、そんな話は倍速する連中には通用しない。
僕もVoicyやYouTubeは1.2倍くらいで聞くので大きなことは言えないが・・・。
これもネット中心の世界がもたらした新たなメリットであるのかもしれない。
世代論や時代論としてこの行動は理解できた。
やむを得ないとも思えてきた。
しかし、大切な要素がなくなっていくような寂しさを感じる。
セリフとセリフとの間や空気感、そこに存在する大きな意味。
そんなものが全て無駄として捉えられるのは寂しいし、
大切な何かを失っていくようでならない。
本書を読みながら昨年観た「サマーフィルムにのって」を思い出した。
未来は2時間の作品は消滅しているという内容を含んでいる。
せいぜい5分の作品が中心の世の中になっている。
もしかしたら現実になるかもしれない。
そんな世界は勘弁して欲しいが・・・。
映画館に通える贅沢。
改めて知れたのは良かったが、ツラさを感じた書籍でもあった。
伏見に戻ってきました。
暑いです。
決して避暑地に出向いていたわけではありませんが、
名古屋がとてつもなく暑く感じます。
雨が続くのは嫌ですが、今年はあっという間に梅雨明けしてしまいました。
統計開始以来、最短の13日間。
平年よりも22日も早いそうです。
今年の夏はどうなるのでしょうか。
名古屋でも40度を超える日がくるのでしょうか。
そんな日に備えて、スタミナをつけなければなりません。
冷たい蕎麦や冷やし中華もいいですが、ここは力強くいきましょう。
錦通を越え、長者町に入ったすぐにある「葱屋 平吉」さんに行ってきました。
こちらは葱を主役とした創作料理が楽しめる居酒屋ですが、ランチも人気があります。
この日の日替わりはお刺身盛り合わせ定食。
ちょっとインパクトに欠けます。
スタミナもつかないでしょう。
夏はやっぱり豚肉です。
「すいませ~ん、豚の生姜焼き定食をお願いします!」
「ご飯の量はどうされますか?」
「う~ん、やや盛りでお願いします!」
こちらのお店は大盛無料、生卵も食べ放題です。
大盛にしようかと迷いましたが、そこまで腹ペコでもないので、やや盛りにしました。
200%の力を発揮するのなら、
一杯目を普通に平らげ、
二杯目を玉子掛けご飯いするのがベスト。
それはさらに暑くなるであろう来月に回しましょう。
豚の生姜焼き定食 880円
美しい生姜焼きです。
アップにしてみましょう。
眺めるだけで食欲が湧いてきます。
これに合うのは白飯。
やや盛りでご飯を頼みましたが、どうみても大盛。
半分しか見えない写真でも想像できることでしょう。
「ウォオン、ウォオン、オレはまるで人間火力発電所だ!」
久々にこの言葉が出てしまいました。
この発電の力で街全体を涼しくさせたいものです。
生姜焼きだけですっかり発電してしまったので、生卵は止めておきました。
これくらいの味付けがご飯も美味しく食べられいいですね。
脇にあるマヨネーズもいいアクセントになりました。
ごちそうさまでした。
これが日本で制作されたなら、もっとチープに感じたかもしれない。
韓国内でここに描かれる世界が現実なのかどうかは分からないが、
妙にリアルに感じてしまう。
その街並み、その格差、家族の抱える闇がぐっとこちらに迫ってくる。
是枝監督がなぜ韓国で映画を作ったかが理解できたような気がした。
これは僕の勝手な想いだろうか・・・。
最近の韓国映画は日本映画よりも一歩先を捉えているようにも思える。
それは作品のクオリティという面だけでなく、興行的な要素でもそれを感じる。
2018年にカンヌ映画祭を獲った「万引き家族」の監督と、
翌年、「パラサイト 半地下の家族」でカンヌ映画祭を獲った主演男優。
この2人を並べるだけで話題性は高まり、勝手に拡散されていく。
その話題性で映画館に足を運ぶ人も多いと思う。
今でこそ濱口監督の「ドライブ・マイ・カー」は話題だが、
作品が公開された当初はそうでもなかった。
公開から半年で、3.5億円の興行収入。
しかし、それから100日程で10億円の興行収入を上げている。
アカデミー賞作品賞にノミネートされたことも大きいが、
話題が話題を呼び広がった要素も大きいはず。
作品の質でみればもっと早く盛り上がってもよさそうなものだと思うが・・・。
濱口監督の名が一気に世界に広がり、是枝監督のお株を奪ったとすればこれがいい挽回。
お互いにそんな意識はしていないと思うが、そんなことも感じたり・・・。
ブログが作品とは関係ない方向に向かってしまったが、
本作も是枝監督らしい家族の在り方を上手く描いた映画。
本当の幸せはどこにあるのか、非現実な世界から考えさせられることは多い。
どんどん切なくなってくる。
本作でカギとなるのが若い母親役のイ・ジウン。
とてもいい表情をしている。
と同時に僕は彼女が松岡茉優に思えてきた。
かなりダメダメだが、可愛くて憎めない表情がとても似ている。
これが是枝監督の好みと思ってしまうが、穿った見方か・・・。
いや、間違いないな(笑)。
とても許される世界ではない。
しかし、そこでしか大切なものを感じられないとすればそれも大切。
そんなことを思わせてくれる映画だった。
いつの間にか梅雨も明け、モーレツに暑くなってきた。
名古屋の40度も近い???
これからのシーズン、ランナーにとっては過酷な日々。
特に今年は厳しいシーズンになるかもしれない。
朝走るなら4時台スタートが理想。
6時台でももう汗だくだからね。
とこれからを語るのはいいが、6月の報告をしなきゃいけない。
先月は久々に大変な月だった。
まずは結果を報告しよう。
6月のランニング距離は100km。
ちょうど100km。
ギリギリだが目標は達成。
パチパチ。ふ~、よかった。
毎年6月は苦労する。
祝日がないのと雨が多いのがネックとなり走れない日が多い。
そこを調整しなきゃいけない。
昨年は残り10日で40km残っていたが、今年は45km。
要は20日までで55kmしか走れなかった。
一昨年までならこの時点で諦めていた。
しかし、昨年もクリアしたし、今年は毎月クリアしているので、
ここで諦めるわけにはいかない。
第4週目は6日間35km走った。
雨が一日しか降らなかったのもラッキーだった。
休んだのは1日だけ。
そんな苦労をするなら前半に距離を稼げばいいじゃないか。
ごもっとも、仰る通り!
週末の遠出が多く、走れなかったのが原因だが、それも言い訳。
6月上旬に鎌倉で合宿。
宿泊した朝に走ればよかったと後になって後悔。
走る体力もあったし、何より海沿いを走れる機会があったのだ。
走れるのに走らない、走れない。
こんな一日が後々響くことになる。
ここで5km稼いでおけば、月末の状況はかなり変わった。
そう、せっかくの機会を逃してはいけない。
これを教訓に今月は横浜にランニングシューズを持っていこう。
そんな先月だが、新しいことが一つ。
ランニングシューズを新調した。
これまでアシックスを愛用してきたが、近年、人気のあるHOKAに変えてみた。
まだ10日間程度だが履き心地はとてもいい。
クッション性もあり足全体を包みこむ感じもいい。
初めてのメーカーだが、とても走りやすい。
しばらくはこれで攻めてみるかな。
7月も既にスタート。
暑さとの戦いにはなる。
普段被らないキャップをし塩飴を舐めながら、目標達成に向け臨んでいきたい。
今週は雨との戦いだけど・・・。
予告編を観た回数なら歴代ベスト5に入るじゃないだろうか。
それも2年間にも亘って・・・。
コロナの影響で公開が遅れたということだが、
だとしたら2020年だけでよかったんじゃないか。
少なくとも昨年は映画館は通常営業していたので問題ないと思うが、それは素人の考え?
配給会社、劇場の間で難しい問題でもあるのかな?
その分、期待感を抱いた観客は多いかも。
興行成績を上げるためのいい戦略だったりして(笑)。
実際、撮影は4年前程になると思うが、
役所広司も松たか子も年齢を感じさせないのはさすが。
感動するポイントがズレているが、役者魂を知るのはいい機会。
本作は歴史好き、司馬遼太郎好きには堪らないはず。
その分、原作と比較され出来具合に不満があったり、
描き方が物足りないと非難の対象にもなる。
人気原作の映画化は一定の観客を担保するメリットもあれば、
叩かれる対象にもなりやすい。
むしろリスクの方が大きい。
小泉監督は過去の実績でそんなプレッシャーを吹き飛ばしているのか。
本作も周りの視線を気にすることなく、
我が道を歩む演出をしているように思える。
それは主役である河井継之助の生き方にもダブらせる。
時代に翻弄されながらも自らの生き方を貫き通す。
予告編でよく観たセリフが生き様を語っている。
カッコいいよね。
武士としての美学を感じる。
作品が何を伝えたいかはともかく、
河井継之助の生き様が僕らに与える影響は大きい。
時代の変化が激しい中で僕らに求められるスキルも大きく変わる。
しかし、根本的に変わらない本質があるとすれば、作品から学ぶ面は大きい。
自分の命を落としても守らなきゃいけないものがある。
保身とは180度異なる。
本質的な正しさ、正義を伝えようとしているのではないかと・・・。
昨年観た「燃えよ剣」と比べればエンターテイメント性や盛り上りには欠けるが、
これはこれで今の時代には必要なのかと。
日本のあるべき歴史は承継したほうがいい。
それを感じる作品だった。
6月中旬、仕事で鎌倉に出掛けることとなった。
それは未来を創るための合宿でかなり前からの計画だった。
せっかくなのでば時間を少々もらい、鎌倉を見て回ることに。
なんと生まれて初めて訪れる場所。
今まで全くといっていいほど機会がなかった。
いざ、鎌倉!である。
大河ドラマの影響もあるが観光スポットとしても人気。
名古屋の田舎者としてはベタな行動が求められる。
鎌倉駅に到着。
まずは移動の邪魔になるスーツケースを預けたい。
コインロッカーをいくつも回るも空きはなし。
途方に暮れているとこんな看板が・・・。
観光案内所はオススメ。
300円で17時まで預かってくれる。
但し、土日祝は休み。う~む・・・。
小町通りは平日にもかかわらず凄い人。
まずは地ビールで景気づけ。
ニシダおすすめのまめやさんでお土産を先に購入し、向かったのは鶴岡八幡宮。
もちろんベタな行動。
鶴岡ミュージアムでは大河ドラマ館が開催されていた。
ここ最近の大河ドラマでは圧倒的に面白い。
体が勝手に反応し、入館。
どうやら同じような人は多く、かなり賑わっていた。
義経の甲冑ではなく菅田将暉が纏っていた甲冑。
これでも十分な見せ物。
併設されているカフェもなんともオシャレ。
これも鎌倉っぽいのだろうか。
お客さんもみんなオシャレにみえてしまうから不思議だ。
境内巡りをし、まだ時間があったので源頼朝の墓所へ。
「鎌倉殿の13人」の面白さの一つに頼朝の描き方も上げられる。
大泉洋は天才だね(笑)。
鶴岡八幡宮に隣接していると思いきや意外と遠い。
普通の住宅地を抜けていく。
こんな経験ができるのも今年だけだろう。
そして、こちらも初めての江ノ電。
こんなローカル電車も場所が変わるとオシャレに見るから不思議だ。
ただの錯覚なのか・・・。
あんな狭い住宅街を通るなんて驚き。
江ノ電は長谷で下車し目的地へ。
海近くの古民家を借りて合宿を行った。
徒歩1~2分で海。
潮の香りがあまりしない。
三河湾とはちょっと違う。
サザンの曲が似合うのも当然か・・・。
マジメに合宿で議論した後は現地でのワイン会。
熱烈歓迎を受けた。
その前に瞬間的に時間があったので、鎌倉の大仏見物に。
中には入らず外から眺めただけ。
なんともセコイね。
できればもっと観光したかったが、目的はあくまでも合宿で未来を創ること。
写真を並べただけのブログだが、たまにはこんな出掛け方もいい。
次回はもっとゆっくりと行きたいね。
遠征シリーズは続きます。
広島から京都にやってきました。
直接、移動したわけではありませんが、ブログ的にはそんな感じです。
京都には美味しいお店は山ほどあるでしょう。
祇園や先斗町、これからの季節は鴨川沿いで川床もいいですが、
遠征続きの身としては節約が求められます。
庶民に愛されるお店に行きたくなります。
またもや京都通の副本部長が教えてくれました。
ここは出町柳の商店街。
庶民感覚が大切なのです。
この商店街に佇む「満寿形屋(ますがたや)」さんに行ってきました。
鯖寿司の人気店として有名なようです。
気合を入れて臨まねばなりません。
お店のオープンは12時。
10分前に到着すると長蛇の列。
これは覚悟をしていました。
開店と共に並んでいるお客さんの半分くらいが店内に案内されました。
お店のメインはうどんと鯖寿司。
人気食べ物ブロガーは百戦錬磨。
瞬間的に待ち時間を計算します。
うどんだから回転率は早い。
せいぜい20分の待ち時間と計算しました。
ところが計算通りにはいきません。
京都らしいおもてなしなのか、
のんびりと味わってもらうことを目的としているのか、
お客さんは回転しません。
一人客でも相席はありません。
4人テーブルに一人のお客さんがいくつもあります。
「う~ん、これは待つしかないな・・・」
あまり時間を気にしてもイライラするので、空間を楽しむことにしました。
家族で並ぶ僕らの後ろには老夫婦が待っていました。
暇を持て余し世間話が始まります。
「よく来られるんですか?」
「いえいえ、初めてで名古屋から来たんです」
「そうなんですか、ここの鯖寿司は絶品ですよ。」
こんな時に家人は最大限の力を発揮します。
いつの間にか、全国五大鯖寿司のお店を聞き出していました。
結果的に1時間近く待ち、席に案内されました。
老夫婦は僕らの5分後に入店。
常連さんなのか、親しげに女将さんらしき方と喋っています。
しばらくすると注文していない品が運ばれてきました。
「あちらのお客様からです」
水ナス
ご縁だからと季節のオススメを老夫婦が振舞ってくれました。
京都人は粋だなあ~と感じた瞬間。
きつねうどんセット 1300円。
多くのお客さんが注文しています。
きつねうどんは京都らしいやさしさでしょうか。
鯖寿司は全国で5本の指に入るのに相応しい、
また、1時間待った甲斐があった美味しさでした。
こんなご縁にも感謝。
次回は教えて頂いた福井の鯖寿司屋さんにも行きたいですね。
ごちそうさまでした。
いやあ~、なんかいい。
うんうん、こんな映画はなんかいい。
そんな表現で映画コラムニストのブログを終えてしまいたい。
そんな映画だった。
単純にいってしまえば、75歳の老人と女子高生が仲良くなって、
同じ目標に向かい励んでいくというだけのストーリー。
奇想天外な展開があるわけもなく、どこかで観たような感覚が体を覆う。
だが、一度も味わったことのない不思議な幸福感。
何気ないシーンに何度もグッときてしまった。
それは感動を呼ぶシーンではない、日常的な会話や行動。
そんなシーンに何度もグッときた。
一年を通して何度かそんな作品に出会う。
とても小さな映画だが、とても愛おしく感じる。
昨年だと「浜の朝日の嘘つきども」。
一昨年だと「アルプススタンドのはしの方」。
きっと分かる人には分かるんだろうなあ~、僕の感性が(笑)。
そんなふうに僕を揺り動かしてくれた存在はやはり主演の2人。
宮本信子さんと芦田愛菜ちゃん。
この2人の表情が抜群。
僕の宮本信子さんの印象といえば伊丹十三監督の作品。
「お葬式」から始まって「マンボーの女」「あげまん」「ミンボーの女」など。
僕が学生から社会人になった頃に一番活躍をされていた。
当時は40代半ば。
結構、強い女性のイメージが強かった。
芦田愛菜ちゃんといえば、子供と一緒に観ていた「マルモのおきて」が印象的。
当時6歳。
まだ子供らしさは残っているが、立派な女優。
彼女が一喜一憂する姿はセリフがなくても十分伝わってきた。
この2人の絡みが可愛らしく、こちらまでつい微笑んでしまう。
そして一緒に悲しんでしまう。
寄り添う映画といえばいいのだろうか。
そんな作品だった。
映画の鍵となるんはBL漫画という存在。
そんなジャンルの存在を知らなかった。
実際に流行っているんだよね?
本屋さんにはそんなコーナーもあるんだよね?
その世界に恋焦がれるのではなく応援する姿が微笑ましい。
漫画はそんな読み方をするんだね・・・。
いい勉強になりました。
本作はアンテナを張り巡らせないと気づかない可能性もある。
上映される映画館も限定的だし。
先日観た「トップガン マーヴェリック」のような超大作もいいが、
こんなほっこりとする小さな作品もいい。
もっと映画を観ないとね。
今、世界で最も有名の日本人じゃないかな。
それは映画監督の濱口竜介氏。
本作はその濱口監督の2018年公開のデビュー作。
公開時は名古屋で上映されていたのかも知らなかった。
知らないついででいえば、
本作が東出昌大と唐田えりかの不倫問題の原因みたいだが、
そんな話はどうでもいい。
あくまでも映画コラムニストとしては映画を語るのみ。
周辺情報に惑わされてはいけない。
4年近く前の作品なので、ネタバレも許されるだろう。
運命的な恋に落ちた2人(東出演じる麦と唐田演じる朝子)が、
麦が突然消えたことで自然消滅に・・・。
その後、麦に瓜二つの亮平(これも東出ね)と出会い愛を育むも、
また問題が起きてというような恋愛映画としてはありがちな展開。
原作は芥川賞作家・柴崎友香氏らしいが、その存在も知らず。
この類の小説はもう何十年と読んでいないが、感性を豊かにするには読んだ方がいいかもね。
劇場公開時もこのストーリーだけならきっと観なかったと思う。
それが誰が監督するかで映画自体のクオリティは変わり興味深いものになる。
単なるミーハーかもしれないが、濱口監督の手にかかると何とも不思議な感覚に陥る。
静かにドライブするシーンは「ドライブ・マイ・カー」を思い出させる。
何も喋らず静かな表情が映画を物語る。
ぎこちなさも不安も愛情もお互いの表情が語ってくれているのだ。
以前もブログに東出昌大の演技がかなり上手くなったと書いたが、
きっとこの作品がキッカケじゃないかな。
と勝手に思ったり。
さりげない喜怒哀楽がとてもよかった。
ハッピーエンドに終わったと思う人は多い。
しかし、その先に待っているのは地獄かもしれない。
映画の先行きは観る者に任せられるが、概ね期待した展開。
誰もが胸を撫で下ろすだろう。
しかしだ。
冷静に考えれば、ヒロイン朝子はとんでもない女。
純粋で真っすぐな一途な女性だが、いやいや、かわいい顔をしたわがまま女。
そう書くとバッシングを受けそうだが、冷静に考えればそう。
でも、僕が亮平だったら同じ結末かもね。
セリフの言い回しできっとやられちゃう。
見方を変えればピュアな恋愛映画だが、大体、そんな映画は残酷に仕上がっている。
だからこちらにぐっと迫ってくる。
「偶然と想像」や「ドライブ・マイ・カー」にハマった人は観るべきだね。
あ~、とっくに観てるか・・・。