不思議な映画だ。
上映時間はほぼ3時間。
「孤狼の血LEVEL2」のようにスリリングなシーンがあるわけではない。
(「孤狼の血LEVEL2」は改めて書きます。)
淡々と映画は進行する。
通常であればそんな3時間はかなり辛い。
その長さに耐えきれない。
しかし、不思議だ。
そんな長さを感じることなく映画を観終えた。
静かに流れるロードムービーのような作品なのに飽きさせない。
それだけでも魅力的な映画といえる。
監督は本年最も話題の濱口竜介氏。
「偶然と想像」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。
本作でカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞。
一年で異なる作品で海外の映画祭の受賞なんて日本映画監督ではないのでは?
確かに本作も海外の方に評価されそうな匂いはするけど(笑)。
これから期待される映画監督の一人。
そんなエラそうなことを言っても、濱口監督作品は初めて。
まだ監督の特徴も分からない
多分、2~3本観ても分からない。
特に目新しい演出でも度肝を抜くようなカメラワークや技法もない。
正攻法的に基本に忠実なように思える。
しかし、それは素人感覚。
終盤の主役西島秀俊とドライバー三浦透子の長回しは過去経験したことがない。
ずっとアップの2人を捉えたカメラは動きをみせない。
とても重要なシーンだけに新鮮に感じた。
全うな人が抱えうる苦悩と闇が溢れ出す瞬間。
こうして弱さを露呈することでより正直になるのかと・・・。
「孤狼の血LEVEL2」と違い、登場する人物は感情的になることはない。
お互いの良好な関係性を維持するために気を遣い合ってる。
それは誰にでもいえること。
会社でも家庭でも本音だけで良好な関係が築ければ苦労はない。
どれだけ連れ添った夫婦でも100%理解し合い、本音でぶつかるのは難しい。
それは愛し合っているが故にあえて踏み入れない領域を持つ。
その中で崩れるものが存在するか、しないかは結果でしかない。
大袈裟にいえば西島秀俊演じる売れっ子演出家の心模様は誰にでも通じるところ。
そんなことを感じた。
だから感情的で本音で生きる高槻(岡田将生)を非難せず受け入れられる。
それにしてもああいったナンパな役の岡田将生は抜群。
そして、気になったのは奥さん役の霧島れいか。
知らない女優さんだが色気もあり知的で美しい。
グラっとくる。
どこかで見たことがあるような気がしたので調べてみたら、
昔、名古屋のモデル事務所で活動をしていた。
その時に目に触れたことがあったのかも・・・。
あと加えるとしたらドライバー役の三浦透子。
不器用な生き方を上手く演じていた。
ラストシーンはいろんな解釈ができると思うが、それは観客次第。
彼女の表情を含め・・・。
こんな日本映画を年に一度くらいは鑑賞したい。
そして、久しぶりに村上春樹を読んでみたくもなった。
そんな雰囲気もあったよね。