猫が主役なら僕は本作を観ていなかっただろう。
今から35年ほど前、「子猫物語」という映画がヒットしたが、
僕はそれほど面白いと思わなかった。
昔、実家で猫を飼っていたが、
今みたいにペットとして大切にするというより当たり前に生活を共にする存在。
その程度だった。
確か名前は”たま”。
あまり猫に関心を持っていない人は、みんな、猫をたまと呼ぶのかもしれない。
無理やり映画に繋げているような・・・。
「カンタ」という本作に登場する猫は重要な役割を果たすが、あくまでもつなぎ役。
犬でも構わない。
しかし、タイトルが「犬は逃げた」だと少し危険な香りがするので、ここは猫で正解。
果たす役割は大きい。
なんのこっちゃ。
それはさておき昨日に続き今泉力哉監督作品。
猛烈に推しているわけではないが、
現代の若者を上手く描く監督としては注目したい。
派手な演出があるわけでも、人気絶頂の豪華俳優陣がスクリーンを飾るわけではない。
本作も無名に近い役者連中が自然体に振舞う。
却ってそれが何気ない日常を描いているようで心地いい。
ごく平凡な日常であるが、実際は全然平凡ではない。
ありそうでなさそうな展開だが、それが不自然じゃないから不思議。
ふわっとした感覚に包まれる。
強い人間は誰もおらず、みんな適度にだらしなく適度に真面目。
そして、適度に自己主張。
それがイマドキなのかも・・・。
簡単に言ってしまえば離婚の危機にある夫婦が飼い猫の親権(?)を巡って、
あらぬ方向に向かうストーリー。
どうでもいい内容というと身も蓋もないが、そのこじんまり感が人間ぽっくていい。
特にラストに近い4人の長回しワンシーンは唸ってしまうほど面白い。
脚本の妙なのか、うまく間をとる演出なのか・・・。
今泉監督は40年後、小津安二郎的な存在になっていたりして。
時代を上手く映す手法は大げさな表現だが近しい。
本作はR15+指定。
15歳以上が観れるわけだが、このあたりの境界線は難しい。
あるシーンがなければPG12で十分。
感覚的には若い女性客が多いかと思ったが、鑑賞日は圧倒的にオジサンばかり。
内容的には若者向けと思うが、休日午前の上映だったからか・・・。
暇しているオジサンは映画館に行くしかないのか。
人のことは言えない(汗)。
世代的共感を生む作品ではない。
しかし、こんな恋愛ものも悪くない。
そう思わせてくれる作品だった。