日本人の行動はいつの時代も変わらないのかもしれない。
これまで主にドキュメンタリーを撮ってきた森達也監督は今の時代だからこそ、
この作品を世に出したのだろうか。
本作の舞台は大正時代。
1923年9月1日、関東大震災後の数日を描く。
実際に起きた虐殺な事件。
情けない話だが、僕は本作に出会うまでこの事件を知らなかった。
言い訳するなら、事件を知る機会がなかった。
単に情報不足なのかもしれない。
一方で情報自体が公にされていたとは言い難い。
これまで国内における残虐な事件は多く公開されているし、
第二次世界大戦時に犯した日本人の罪の重さも知らされている。
しかし、この福田村事件はその視点とは異なる。
ごく普通の日本人、何の権力も持たない日本人が犯した事件なだけに扱いは難しい。
客観的に映画を観て、冷静に判断すれば誰にも理解できること。
しかし、主観的に捉え当事者だとすればその行為は180度、異なる。
「愚かだ!」と思いながら、もし自分があの場にいたらと想像すると恐ろしくなる。
情報の乏しい大正時代であっても、
SNSですぐに情報が拡散される現代であっても、大した差はない。
僕ら日本人はいつまで経っても同調圧力に屈し、Echo Chamberに翻弄される。
そんなことを映画を観ながら感じてしまった。
それを鼻で笑いながら観れればいいが、そうではない。
本作は衝撃的に僕らに迫ってきた。
話題になってはいるものの、大手配給会社の製作ではない。
メジャーな映画館での上映ではなく、その公開は限定的。
観れないエリアも多い。
そのあたりも日本っぽいのかな・・・と思ってみたり。
2023年に公開された映画では強く心に残る。
この時期に本作を観れたことはとても価値がある。
映画を観た翌日に大学の授業でも紹介してしまった(笑)。
実話を描いたとはいえ、演出的に構成された面も多いと思う。
実際に永山瑛太扮する行商団頭の新助が発した言葉が本当かどうかは分からない。
しかし、その言葉がすべて物語っているような・・・。
一番、印象に残ったシーン。
そのあとの衝撃的な行動も。
できれば多くの方に観て欲しい。
そんな一本となった。
つらいけど。