26日(日)にNHKのETV特集で放送された「ハーバード白熱教室in東京大学」を観た。
『これからの「正義」の話をしよう』の著書やハーバード大学で最も人気のある授業で話題となっている政治哲学のマイケル・サンデル教授。
今回は東京大学安田講堂で、サンデル教授の授業を日本人相手に実施した内容である。
まず単純に感じたこと。安田講堂って立派だ。サンデル教授ってタレントみたいだということ(幼稚な感じ方で、すみません)。
登場の仕方が、とても大学の授業とは思えない。
学生に限らず、国会議員から主婦まで抽選で選ばれた1000名を対象に授業を行うのであるから、当然といえば当然。憧れの的として拍手を浴びている。
その拍手の正当性は、1時間半の番組を観て納得することができた。こんな授業があるとすれば、眠気など起こるはずはないだろうし、生半可な態度では出席することはできないだろう。
自分なりの論理的な解釈や考え、表現方法を持って臨まなければ、たちまち議論に飲み込まれてしまう。議論に加わらない者もその緊張感から逃れることはできない雰囲気なので、真剣にディベートを行いたい者にはうってつけの環境といえる。
この東京大学でのディスカッションは「イチローの年俸は高すぎるか?」でスタート。サンデル教授はイチローの年俸は高くないと挙手した者に、イチローの年俸はオバマ大統領の42倍であるとか、世界に与える影響はどちらが強いかなど、揺さぶりをかける。
それにも動じず、自分の信念を倫理的な正当性を持って訴えることができるか。そこが重要であり、ディベート力が鍛え上げられる最高の場となるのであろう。どっちが正解かはあまり関係がないのかもしれない。
これを見る限り、日本人は消極的で議論ベタとは言い切れない。特に学生と思える若者の積極的な態度と英語力には感心した。アジア系の若者も多かったと思うが・・・。
選りすぐられた俊英が集結したのは間違いないだろうが、まだまだ日本人はやれると思わせる発言がほとんどだった。
彼らの行動は素直に見習うべきであるし、果たして僕はそこまで深く考えて日々を過ごしているかと反省させられたのが正直なところだ。
この事も含め、サンデル教授は全てお見通しではないだろうか。意見しやすいテーマから徐々に正義の本質について核心を突いてくる質問力と論理展開。その意見を引き出す誘導の巧みさ。この授業が、この白熱教室が、サンデル教授が人気が高いのは当然のことか。
日曜日ののんびりした晩、それを吹き飛ばす刺激のある番組だった。
2010年9月29日