2022年開催ベルリン国際映画祭の金熊賞作品。
最高賞にあたる作品だが、過去の受賞をみてもマイナーな映画が多い。
日本での公開も2年後。
さほど話題にもなっていない。
玄人好みな映画祭なんだろうね。
本作が訴えるテーマは世界共通。
スペインのカタルーニャで3世代にわたる大農園が舞台。
主人公となる親父さんは頑固に桃農園を営む。
目の前の土地は桃の木を伐採しソーラーパネルが並ぶ。
必ず出荷できるかどうか分からない桃より太陽光を売った方が楽な生活は送れる。
また、卸す値段も一方的なので生活は苦しい。
その挟間で3世代の家族は一緒に暮らす。
いずれ自分たちの桃の木もソーラーパネルに代わると理解しながら。
タイトルにある太陽は日差しの強い農園を指すのではなく太陽光のことか。
皮肉にも聞こえる。
原題「Alcarras」はスペインの地名なので、日本タイトルの名付親はかなりのセンス。
ヒットに繋がればいいが、全く違うジャンルと間違える人も多いと思う。
映画は淡々と進行。
あまりにも日常的なのでドキュメンタリー作品と勘違いしそうになる。
親父さんは感情的で息子や周りとぶつかるが、
それはやりどころのない怒りで誰かに当たるしかなかったり。
そんな自分が情けなく急に涙を見せたりするのだろう。
スペイン人はノーテンキで小さいことにはこだわらないイメージだが、一方的な見方は危険。
日本人だって、みんなコツコツ真面目というわけでもないし・・・。
世界のあちこちで多くの事情を抱えている。
南欧でも同じ。
僕らが知らないことは多い。
それを映画で学べるのは大きい。
本作に登場する人物に悪者はいない。
子供も大人もまっすぐ生きている。
高校生の息子も父親に反発しながらも家を想い家業を懸命に手伝う。
そんな姿が美しく映るのではなく痛々しく映る。
それが現実。
退屈なシーンも多いのも正直な感想だが、そんな日常を見つめるのも大切。
切ない世界を教えてくれる。
それを感じた映画だった。