映画の前半と後半の舞台は昨年2月に休館となった「山の上ホテル」。
御茶ノ水周辺のホテルに宿泊することは多いが、ここはなかった。
ハードルが高かったのが理由だが、今思えば無理をしてでも泊っておけばよかったと後悔。
あの部屋の雰囲気を体に残しておくべきだった。
僕が好きな作家も定宿にしていた。
もっと心が豊かな人生を送るには泊まる必要もあったのかと。
今さら遅いけど・・・。
とつらつらと書いたが、のん演じる新人作家が「山の上ホテル」に泊まる理由もさほど変わらない。
ホテルに泊まる理由はそんな憧れに留まらない。
別の目的も明確。
それは恨みを果たすための実にイヤらしい目的。
完璧なまでに相手を陥れようと・・・。
新人作家加代子(実際は他に3名の名前を操る)が大物作家東十条宗典の足を引っ張る仕掛けをする。
そのあたりが痛快で面白い。
コメディ仕立ての展開に僕らはまんまと飲み込まれていく。
これがのんが主役である理由か。
いわゆる人気女優が演じるとこんなポップで軽快にはならない。
のんの軽妙で嫌味のない喜怒哀楽が映画を盛り上げる。
そこでようやく気が付いた。
僕はのんが出演する作品は初めてだと。
8年前の映画「この世界の片隅に」は観たが、あくまでも声優。
旧芸名で出世作となったNHKの連ドラも全く見ていない。
せいぜいCMくらい。
ただイメージは出来ていた。
ほぼその通り。
期待は裏切らなかった。
そしてドラマの展開も期待を裏切らない。
ほぼ予想通り。
それが嬉しい作品。
映画にはアッと驚く展開を期待する作品とそうでない作品がある。
本作は後者。
心地よかった。
役者陣も楽しんでいるように思えた。
特にちょい役で出演する役者はそう。
カリスマ書店員の橋本愛はほぼ遊んでいる感じ。
いい意味で期待を裏切ったのは「BISHU 世界でいちばん優しい服」で主役の服部樹咲。
壮絶なバトルでもあるかと予測したが何もなかった。
あっ、ネタバレか(笑)。
あまり作品を観ていないが、堤幸彦監督は今、最も安心できる作品を創る監督の一人。
一定の社会性も持たせているし。
愛知県出身だし。
映画を観終わって、改めて「山の上ホテル」に泊まりたいと思った。
明治大学さん、お願いしますよ。