これからも前向きに 名大社会長ブログ

2023年09月の記事一覧:

映画「福田村事件」

日本人の行動はいつの時代も変わらないのかもしれない。
これまで主にドキュメンタリーを撮ってきた森達也監督は今の時代だからこそ、
この作品を世に出したのだろうか。

本作の舞台は大正時代。
1923年9月1日、関東大震災後の数日を描く。
実際に起きた虐殺な事件。

情けない話だが、僕は本作に出会うまでこの事件を知らなかった。
言い訳するなら、事件を知る機会がなかった。
単に情報不足なのかもしれない。
一方で情報自体が公にされていたとは言い難い。

これまで国内における残虐な事件は多く公開されているし、
第二次世界大戦時に犯した日本人の罪の重さも知らされている。
しかし、この福田村事件はその視点とは異なる。
ごく普通の日本人、何の権力も持たない日本人が犯した事件なだけに扱いは難しい。

客観的に映画を観て、冷静に判断すれば誰にも理解できること。
しかし、主観的に捉え当事者だとすればその行為は180度、異なる。
「愚かだ!」と思いながら、もし自分があの場にいたらと想像すると恐ろしくなる。

情報の乏しい大正時代であっても、
SNSですぐに情報が拡散される現代であっても、大した差はない。
僕ら日本人はいつまで経っても同調圧力に屈し、Echo Chamberに翻弄される。

そんなことを映画を観ながら感じてしまった。
それを鼻で笑いながら観れればいいが、そうではない。
本作は衝撃的に僕らに迫ってきた。

話題になってはいるものの、大手配給会社の製作ではない。
メジャーな映画館での上映ではなく、その公開は限定的。
観れないエリアも多い。
そのあたりも日本っぽいのかな・・・と思ってみたり。

2023年に公開された映画では強く心に残る。
この時期に本作を観れたことはとても価値がある。
映画を観た翌日に大学の授業でも紹介してしまった(笑)。

実話を描いたとはいえ、演出的に構成された面も多いと思う。
実際に永山瑛太扮する行商団頭の新助が発した言葉が本当かどうかは分からない。
しかし、その言葉がすべて物語っているような・・・。
一番、印象に残ったシーン。
そのあとの衝撃的な行動も。

できれば多くの方に観て欲しい。
そんな一本となった。
つらいけど。

秋も日本酒を愉しもうじゃないか

前回の日本酒家飲みブログが8月。
その時は2回に分けて書き、4か月分32本を紹介した。
読む方も大変だが、書く方も大変。

過去の写真を引っ張り出し、インスタにアップしたコメントを思い出し文章をまとめる。
想像以上に作業量は多い。
そんなことを1年通して繰り返してきた。

それでは成長はない。
簡潔にまとめブログを書く。
ネタ不足?という疑問視する声もあるが、そうではない。
体にも目にも優しいブログを目指す。

そんなわけで今回は8月9月に家で飲んだ日本酒を紹介していこう。
夏から秋にかけて発売される日本酒も変わる。
最近は酒蔵ごとのこだわりも出て、それが味やラベルに反映される。
ラベルを眺めるだけでも季節を感じ、ワクワクしてきたり・・・。

9月は下旬まで暑く、どうしてもビール中心になってしまうが、
虫の声を聞きながら飲む日本酒は美味い。
(実際は窓を閉めているので虫の声は聞こえないが・・・)

では、順番にアップしていこう。

あべ FOMALHAUT 火入 2022
ワインのようなボトル。
阿部酒造にしてはオシャレ。
ユナイテッドアローズとのコラボだったかな・・・。
とても飲みやすく美味しい。

KappaCup200
下鴨神社のお祓いで頂いたお酒。
美味しいとか、そうじゃないとか関係ない。
飲めることが大切。

京の夏
息子がいつも京都駅で買ってきてくれるお土産。
少し辛口。その気持ちが嬉しい。

風の森露葉風507
ピンクのラベルは初めて。
507といういことは精米歩合が50%。
日本酒でいえば純米大吟醸になるのかな。
素直に美味しい。

またまた風の森。これはpetit507.
2合瓶なので、あっという間になくなる。
とてもフルーティー。
ワイングラスで飲むといいんだろうね。

W 出羽燦々50 火入
Wシリーズはどこかのお店で飲んで、とても印象が良かった。
岐阜県の酒蔵も応援したいね。

仙禽線香花火
このシリーズは制覇したと思っていたが、これを飲んでなかった。
他のシリーズとの違いはよく分からないが、これも好きな日本酒。

またまた風の森。葛城花火とのコラボ。
本当は10月1日(日本酒の日)に飲むお酒らしいが我慢できません。

ちょっと変わったラベル
飛鸞 ? -ハテナ-
スペックが非公開とのこと。
長崎県の森酒造場。謎解きしながら楽しむお酒。
家人は風の森より美味しいといった。
その言葉がすべてかも・・・。

たかちよHALLOWEEN2純米大吟醸
とてもジューシー。
このにごりがたまらなく美味しかったり・・・。

本来は中秋の名月の今日飲むべきお酒。
数日前に飲んだ鍋島HarvestMoon。

そんな感じでこの9月も美味しく日本酒を頂いた。
来月は更に期待できるのかな。

ここでひとつ、おまけ。
こちらは知多ビールOKD。

娘が遊びに行ったついでに買ってきてくれた。
オレンジとイチジクとコーヒー。
滅多に飲むことはできない。
娘も結局は自分で飲みたく、スポンサーが欲しかっただけね。

次回は11月のアップになるのかな。

食べ物のはなし 伏見シリーズ その263

やってきました!
大好評!
月末のラーメンブログ。

この企画を楽しみにされているファンも日増しに増えています。
そんな気がしています・・・。

ここ最近は比較的新しいお店ばかり訪問していました。
日常的に食べるラーメンですが、長年営業されているお店は意外と少ないのかもしれません。
流行に左右されたり、サービスのレベルでお客さんの信頼を勝ち取るのは難しいのでしょう。

今回お邪魔したのはかなり古くから営業されているお店。
いつオープンしたのか調べましたが、分かりませんでした。
名古屋観光ホテルの向かい、下園公園の対面にある「さっぽろ亭 名古屋本店」さんです。

店構えだけでも歴史を感じさせます。
自販機のメニューもシンプル。

時代に迎合していません。
映える写真にするためトッピングバターを注文しようとしましたが、売切ランプが点滅しました。
店内は暗め。
想像以上に暗い店内になっています。

スタッフは男性3名。
それも70代を超える方ばかりのようです。
シルバー人材のみで経営されているのでしょうか。
熟練の技とはいいがたいですが、テキパキと作業は進んでいきます。

みそラーメン 780円

少し前に100円値上げしたようですが、今のご時世であればお値打ちでしょう。
ランチタイムはライスが無料ですが、あくまでもお客さんからの申し出。
スタッフから尋ねることはありません。
このあたりも時代に迎合しないわけですね。
却って清々しく感じます。

丼が大きいので、意外とボリューミー。
もやしもたくさん入っているので、単品でお腹は満たされます。
個性的ではありませんが、みそラーメンらしいみそラーメン。
定期的に食べたくなる味です。

さて、9月も間もなく終わりますが、暑い日は続きました。
最近になってようやく秋らしさを感じます。
冷たい系はめっきり減りましたね。
この1ヶ月のラーメンを紹介していきましょう。

しょうゆラーメン

ざるラーメン

特製鶏にぼし塩ラーメン

ワンタン麺

五目ラーメン

担々麺

ラーメン横綱(ここだけ店名…汗)

今月もいろんなタイプのラーメンを頂くことができました。
伏見エリアだけでなく名古屋市内のあちこち。
そして、個人店からチェーン店まで幅広く頂けるのもラーメンのいいところ。

来月はどうなっていくでしょうか。
ご期待ください。

ごちそうさまでした。

秋学期も張り切って!

先週から南山大学の授業がスタートした。
昨年までは第2クオーターの「自己とキャリアの形成」のみだったが、
今年から第3クオーターも受け持つこととなった。

授業は「企業と業界の研究」。
経済学部を対象としたキャリア科目の一つで、9月から11月まで週2回の計14コマ。
毎週月・木は大学に出向く。

お声掛けを頂き、安易に引き受けたが、結構、大変。
想像を働かせれば分かることだが、調子のよさとノーテンキさがその想像力を越えて・・・。
まあ、何とかするしかないよね。

といっても、本当に大変なのはコンビを組むニシダ。
この授業もテツ&チカのコンビで漫才のように進めていくのが基本。
打合わせは頻繁に行うが、スライド作成やWeb対応はニシダなので僕の数倍ハード。
どこかでご馳走しないといけないな(汗)。

そもそも初めての授業なので、コンテンツもゼロから考えなきゃいけない。
あちこちに声を掛け、OBのゲストをずらりと並べサポートしてもらうが、
それでもあれこれ悩みながら伝えることを考える。

様々な業界を単に教えるのでは意味がない。
その歴史や背景を伝え、働く意味も理解してもらいながら、キャリアの意識を向上させる。
社会に出ることに不安を抱える学生が多いが、そこに楽しみを見出してもらう。
そんな授業にしていく。

こちらの想いがどこまで届くか分からないが、精一杯伝えていく。
今回の受講は320名。
これまで受け持った中で最高人数。

授業の選択は1回、2回目で変更が可能なので、人数が減るかと思ったが逆に増えた。
こちらの想いが届いていると勝手に判断しておこう。
多くの学生が受けてくれるのはありがたいが、その分、負担も増える。

毎回提出のレポートもかなりの量。
みっちり書く学生も多いので、真摯に向き合わなきゃいけない。
質問も受け付けているので、その回答も準備しなきゃいけない。
朝も夜も平日も土日も関係ない。
まあ、普段、ボーっとしているので、時々、そんな時間は必要だろうけど・・・。

少しでも彼ら彼女らが将来に対して真剣に考えられるようにしたい。
すぐに答えは出なくても、そのキッカケは作ってあげたい。

この秋学期も張り切っていきましょう。
ニシダ、よろしく頼むね(笑)。

映画「その日、カレーライスができるまで」

昨年、公開され気になっていたが、見逃した作品。
最近になってAmazonプライムで鑑賞。
映画館で観るにはちょっと勿体ないと感じた。

上映時間は52分。
リリーフランキーの一人芝居なので、コスパとしてはよくない。
そんなことをほざく段階で上級の映画コラムニストにはなれない。
考え方がセコいね。
いいんだ、目指すは「酒を語れる映画コラムニスト」だから・・・。

公開から期間が経った作品なので、ある程度のネタバレも構わない。
本作は家族と別れた独り者の一晩を描く。
タイトル通り、カレーができるまでのわずかな時間。
ラジオを通してコミュニケーションを図り、やるせない時間を価値ある時間にしていく。

シンプルにいえばそれだけのストーリー。
本当に登場するのはリリーフランキーだけで、あとはラジオと電話の声のみ。
それも古びたアパートの一室しかほぼ映ってこない。

製作費は安く撮影日も限定的。
それが映画館では勿体ないといった情けない理由でもあるが、
見方を変えればそれでけで一本の映画を仕上げてしまう力量もあるということ。
本作のプロデュースは斎藤工で何かしら訴えたかったのだろう。

僕はリリーフランキーというアーティストは凄い才能の持ち主だと思っている。
イラストレーターやデザイナーからスタートして、ここまで幅が広げられる人はそうそういない。
役者としても個性発揮しまくりじゃないか。

大河ドラマ「どうする家康」の久松長家役も頼りなくて良かったし、映画での変態ぶりはさすが。
「凶悪」で演じた先生役も「凪待ち」の同僚役も腹が立つほど素晴らしかった。
他にも有名な作品は数多いが特に印象に残っているのがこの2本。

今や柄本明と同じで映画界には欠かせないバイプレーヤー。
エロい話を平然と語るのもいい。
きっと怖いものなんてないんだろうね。
と思ってしまう。

本作でも寂れた父親役を見事に演じている。
人は一人では生きていけない。
でも、一人にならざるを得ない理由もある。
酒に逃げるか、過去の思い出に浸るか、
生きる目的を探すのが難しい。

そんな時を救ってくれるのがカレーライスの存在。
僕も美味いカレーを作ってみようかな。
寂しくも切なくもないけど、
一人ぼっちにならないためにも・・・。

食べ物のはなし 番外編 穴子三色釜めし

伏見シリーズのネタ不足の時に貢献してくれるのが番外編。
もうひとつ特別編があり、ここには明確な違いがありますが説明は割愛します。
お暇な方は過去の食べ物ブログからお調べください(笑)。

今回は小田原まで行ってきました。
新幹線では当たり前のように通過しますが、小田原駅で下車したのは人生初めて。
想像したよりもこじんまりとした街でした。

小田原名物といえば、海鮮やかまぼこ、干物といったところでしょう。
その名物を食べさせてくれるお店でもいいですが、それでは当たり前すぎます。
やはりここは地元の人気店に行くべきでしょう。

小田原駅から徒歩5分のところ構える「相州鳥ぎん 本店」さんに行ってきました。

夜は焼鳥を中心に楽しませてくれる城下町の老舗。
焼鳥に気持ちは揺らぎますが、今回はランチ。
あまり飲みすぎるわけにはいきません。

こちらは釜めしも有名で、釜めしだけでも30種類はあるのではないでしょうか。
迷います。
どの釜めしにするか迷います。
その中から一つを選び、体を整えます。

まずはビールで喉の具合を調整します。

そして、ちょっとしたおつまみ。
うまき
人数分にカットしてくれるのが嬉しいです。

カブの盛り合わせ

鴨ユッケ

これで体調は万全に整いました。

穴子三色釜めし 1380円

ふたを開ける前に鳥スープ。

こちらはお替りができます。
当然、お替りしました。

ふたを開けるとジャーン。

穴子と海老と鳥そぼろが所狭しと釜の中で踊っています。
穴子にはこちらの刷毛でたれを塗ります。

そうするとこんな感じ。

「お~、なかなか、やるじゃないか」
久々にこんな言葉が出てしまいっした。
そして、豪快にかき混ぜます。
かき混ぜずに少し頂きましたが、ここは力を込めてかき混ぜます。

茶碗によそいます。
これも美しい光景。

何杯分あったでしょうか。
どれだけでも食べられそうです。
穴子釜めしの方が1530円と高くボリュームがありそうですが、
こちらの方がいろいろと楽しめていいですね。

とても美味しく頂きました。
時には初めての土地で人気のお店にお邪魔する。
それも人気ブロガーの大切な仕事。

ごちそうさまでした。
次回はどこへ行けるかな・・・。

社長たちの映画史 映画に賭けた経営者の攻防と興亡

前回の「職業としてのシネマ」はバイヤー、宣伝側の話だったが、
本書は更にスケールが大きく映画会社の経営。
540ページのボリュームで1897年から1971年までの映画界を描く。

以前紹介した「キネマ旬報95回全史」はあくまで作品の評価が基準だったが、
こちらは映画会社の経営そのもの。
実に生々しい。
休日の空いた時間に読み続け、最近、ようやく読み終えた。
(さすがに分厚く持ち歩けない・・・)

この世界は面白い。
そして、恐ろしい。
闇も深い。
しかし、映画の魔力が多くの人を引き寄せ、迷い込ませ、
表面的には美しく、裏側ではドロドロとした世界。

70年以上の業界を露わにしているが、簡単に言ってしまえば博打だ。
昨日良くても明日がいいとは限らない。
栄枯盛衰という言葉が相応しいかわからないが、
時代の頂点を極めたかと思えば、一気に奈落の底に落とされる。

自分の力ではどうにもならない。
外部環境の影響もあるが、ヒットすべき作品がヒットせず、
それで経営不振になることもしばしば。
経営者の嗅覚が大衆を理解できるとも限らない。

本書は基本的に松竹、東宝、大映、東映、日活の5社を歴史を追いかける。
松竹が繁栄し低迷する時期もあるが、時代の寵児的な大映が自己破産してしまう。
何事もなく順調そうな東宝や東映も経営的にはゴタゴタが付きまとう。

そのあたりが無責任に面白く刺激的だが、
映画界はどこまでいっても水商売から離脱できない。
ある意味、本筋とは異なる面で足の引っ張り合いが行われる。

社長は自分の会社にすることに必死。
それにより組織が崩壊し、能力ある社員やスタッフが退社することも多い。
長い歴史なので本書をまとめるのは難しいが、それを簡単にまとめてしまう箇所も。
ファミリービジネスの成功と失敗ともいえる。

東映のジュニアは父をを喪い、社長になろうと思えばなれたが、岡田茂に譲った。
日活のジュニアは組合と共にロマンポルノへの方向を決めた。
大映のジュニアは全員解雇・制作中止・破産の道を選んだ。
東宝のジュニアは製作部門の分離に成功し、危機を乗り越えていく。
松竹のジュニアは社長に就任したばかりである。

これが1970年初めの話。
こんなにファミリー色が濃いとは思わなかったが、そこも含め映画界の歴史は興味深い。
当時はファミリービジネスが誤った方向へ向かいやすかった時期かもしれない。
僕がサポートしていたら倒産や解体はなく、上手くいったかもね(笑)。

いずれにしても自己の欲望が繁栄と衰退をもたらせた。
それが娯楽の中心である映画界で行われていたとは・・・。
これも時代の流れなんだろうね。

1960年代後半に映画界はテレビにやられた。
2020年代、テレビはネットにやられつつある。
すでにやられているのかもしれない。
40年後、ネットは映画にやられていたりして・・・。

それはないと思うが時代は変わる。
その中で映画はどう価値を生んでいくか。
単に娯楽の代表では誰も支持しない。

映画史の変遷を学び、今後を占う。
そんなことはできないと思うが、
映画界を想う僕としては過去の経営を今に生かしてほしい。
自己保身に走るのではなく、常に未来に向かって走ってほしい。

社長たちの映画史を読みながら、そんなことを考えてしまった。

映画「復讐の記憶」

超B級の面白い映画だと思った。
しかし、韓国では社会派ドラマの領域かもしれない。
見方によって捉え方は大きくズレる。

それは韓国を否定しているわけではない。
最近、仲良くなりつつある韓国に敵対心を持つわけではない。
むしろ韓国映画から学ばねばとも思っている。

ただ思うのはお互い学ぶべき。
日本からとか韓国からということではなくお互いに学ぶこと。
本作でいえば、もっと日本人を上手く使えば映画のクオリティは上がったはず。

よりいい作品を作ろうと思えば、いくら見かけは似ているとしても、
韓国人は韓国人を、日本人は日本人を、
ハリウッド映画ならともかくアジア映画なら、その辺のこだわりを見せてほしい。

それだけでも全体のレベルはアップする。
欧米では分からない文化の違いも近しい国であれば分かるはず。
あんな日本人はいないし。

嫌かもしれないが、いい映画を作ろと思えば隣国を学んだほうがいい。
だから僕は本作を超B級映画と称した。
とここまで書いたところでどんな映画かは一切不明。

それでブログを逃げ切ろうとは思わない。
追い込まれてからが勝負。
それはアルツハイマーの80代の主人公ピルジュのように。

逃げ隠れもしない、
自分が正しいと思う行動を周りに否定されなれながらも曲げない。
記憶が飛ぼうが、持病で倒れようが関係ない。
60年間抱いた恨みを果たすために立ち向かう。

そんな老人によく言えば相棒でありバイトである孫のようなインギュが付き合わされる。
真っ赤なポルシェでぶっ飛ばしながら・・・。

僕は韓国の映画事情が分からないが、
海外に出るべき作品と国内に留まる作品との違いがあるように感じた。
本作は国内向け。
ツッコミどころは多いが、勢いでかき消してしまう。
そんな映画だった。

ピルジュ役のイ・ソンミンは80代を演じるが、実際は僕よりも若い。
そりゃ体も動く。
不思議と違和感はなかった。

本作もある意味、韓国映画らしい作品。
メチャクチャ注目はされないだろうが、何も考えずに観るにはいいのかも。
ちょっと考えてしまうけどね。

映画「こんにちは、母さん」

どこまでいっても山田洋次であり、どこまでいっても吉永小百合。
そんなことを感じた作品。
それは否定的な意味ではなく、二人の安心感を表す肯定的な言葉。
発せられるセリフ、街を映し出す風景、人の動きや仕草、観る者が観れば、
どんな登場人物であろうと山田作品と理解できる。

正直なところ、一昨年の「キネマの神様」を観た時、山田監督もさすがに年老いたと感じた。
過去に並ぶ名作と比較をすると出来の違いは明確。
一流監督のまま作品を撮り終えるのは難しいと思った。
(大変失礼ですね。すみません・・・)

そのため本作を観るかどうかは迷った。
これ以上、山田監督の凡作を観たくはないと・・・。
しかし、僕の周りの評価やレビューを読むと評価は高い。
監督へのリスペクトがそうさせている面はあると思うが、自分の目で確かめることにした。

結論からいえば、心温まるステキな作品。
クスッとした笑いもホロッとした涙もある定番の家族ドラマ。
上手く描かれていた。

確かに昭和チックに感じるし、いきなりセクハラじゃねえ?と思わせるシーンもあるが、
敢えて現代へのメッセージとしても受け取れる。
失くしかけている日本人の良さを本作で取り戻そうとしていると思える。

それは母親役の吉永小百合の振舞いであり、
人事部長役の大泉洋の行動であり、
娘役の永野芽衣の感情であり、
それを取り囲む近所の人たちとの関係性。
東京の下町がより演出に生きている。
バランスが見事だった。

それにしても吉永小百合は78歳の今でも麗しい。
僕の母親に近い年齢だがとてもチャーミング。
どこまでいっても吉永小百合なんだ。

映画を観ながら思い出したことがあった。
先日、西川塾の故西川俊男塾主(ユニー創業者)の奥様のご自宅に伺った。
一年ぶりにお会いしたが、いつまでもお若く上品。
会話も聡明。

ご子息が僕と同い年なので、まあまあのおばあちゃんだが、そんな感じは全くしない。
吉永小百合と塾主の奥様がダブってしまった。
塾主の伝説の行動にはそんな理由もあるのか・・・。
どんな理由(笑)。

山田監督は92歳。
どこまで映画を撮り続けるだろうか。
本人にその気がなくても、往年のファンが許さないかもしれない。
これだけ人間味溢れる作品を撮り続ける監督はまだ見当たらないし。
これからも期待してしまう。

職業としてのシネマ

映画関連の書籍は多いが、バイヤー側、宣伝側の視点の書籍は思ったほどない。
自称映画コラムニストとしてはその分野の理解も必要。
ましてやこれでも会社経営者。
経営者目線で映画業界を知ることは活動の幅を広げるためにも必須といえる。

今後、僕のキャリアも変わる可能性もある。
数年後、自分自身が映画を仕入れ宣伝する側に回る可能性はなくはない。
その仕事の苦労や大変さからやりがいを見出す。

自らヒット作や評判の高い作品を発掘し、
多くの方に届け、かつ興行収入を上げる。
その一貫した仕事にやりがいがはいはずはない。

過去を振り返り反省する点がひとつ。
就職活動をしていた大学4年時。
東宝の最終面接に名古屋から唯一呼ばれ東京に向かった時のこと。
僕は松岡社長らが並ぶ面接で「●●な映画を作っていきたい。」
そんな話をしたと思う。

見事に落ちた。
映画好きなら誰でも語れるチープな面接。
僕はただの営業マン。
強みといえば誰の前で物怖じせず売り込めること。

今思えば、「もっと売上を伸ばす。東宝のファンを増やし、東映、松竹を引き離す。」
そんな話をすればよかった。
もしかしていたら人生は変わっていたのかもしれない。

そんな空想はともかく、配給の仕事は想像以上に大変。
特に規模の小さい会社であればなおのこと。
一つの作品が経営を揺らがすことにもなりかねない。
自分が絶賛しても世間に見向きもされない可能性もある。
もちろんその反対の可能性も・・・。

著者はフランス映画の買い付けから映画館への上映交渉、マスメディアへのPRを行ってきた。
映画好きであることは当然だが、それだけではできない仕事。
むしろ単なる映画ファンではやれない。

加えてマニアックな作品ばかり。
全国のシネコンが飛びつく作品は少なく、ミニシアターでの上映が中心。
昨今、ミニシアターの存在は厳しくもある。
名古屋でいえばミリオン座がそれに近いが、映画館にも頑張ってもらわねばならない。

著者が書かれるようミニシアターが特別な存在、
ミニシアターで観ることが付加価値を持つ時代になるといい。
それには僕も共感する。

職業としてのシネマ。
お金の心配をしなくていいのなら、無償でもやってみたいね。
簡単じゃないけど・・・。