映画はいきなりクライマックスを迎える。
冒頭のシーンはまさにクライマックス。
山崎監督らしいVFX技術を駆使した映像。
この後、どれだけの人が犠牲になり死を迎えるのかとその悲惨さに体を持っていかれるが、
冒頭クライマックス以降、死者は現れない。
穿った見方をすればこれも作り手のメッセージと受け取ることはできる。
子供向けやアニメ、ヒーロー、アクションものが多い夏の公開作品。
僕自身はしんみりと映画を愉しみたいが、夏休み期間はそんな希望は叶わない。
ド派手で弾けなければならない。
その点では本作も夏休み向けといえるし、
数少ないエンターテイメント映画を撮れる山崎監督だからこそ、この時期に相応しい。
最初は観るつもりはなかった。
しかし、いろんな方の評価を聞いて、観ることにした。
どんな時代も人は素直でなければならない。
いいことはいい。
悪いことは悪いと正直に言えなければならない。
そこには権力とか地位とか建前とか関係ない。
素直な気持ちでどんな場にも臨むことが必要。
僕はその気持ちに従い本作を鑑賞。
観てよかったと素直に思う。
果たして本作に登場する人たちはどこまで素直であっただろうか。
時には素直さが仇になるケースもあるだろう。
自分の立場を危うくすることもあるだろう。
そうだとしてもその姿勢があれば多くの問題は解決の方向に向かうのではないだろうか・・・。
映画と関係なさそうでありそうなことを語っていますね(笑)。
エンドロールには「史実から着想を得たフィクション」と表示される。
本作を観て事実と捉える人もいるかとは思うが、現実的にはあり得ない話。
しかし、事実と思わせてしまうところが演出でありストーリーの巧みさ。
ラスト近い櫂少佐と平山中将のセリフの重さに惹き込まれた人もいるはず。
やはりネタバレさせずに映画を評論することはかなり難しい(笑)。
本作では話題の俳優が多数出演しているが僕が取り上げるのは2人。
海軍少将役の橋爪功氏と海軍少尉役の柄本佑氏。
橋爪氏は最近の役どころは面白い。
ボンクラな上役をさもありなん的に演じている。
2月に観た「七つの会議」もサイテーな社長を演じていたし、この海軍少佐もサイテー。
それを当り前のように演じるのはキャリアの違いか。
腹が立つ役だが流石だと感じた。
柄本氏は実に上手く映画のつなぎ役を演じている。
脇ではあるが彼の存在が映画をより楽しませてくれる。
間もなく公開される「火口のふたり」も是非観たい。
この作品には僕が個人的イチオシの瀧内公美さんも主演。
彼女の表情に惹かれてしまう。
相当激しいシーンもあるので、今からドキドキする。
前作の「彼女の人生は間違いじゃない」もよかった。
いかん、本作とは全然違う方向に向かってしまったが、
この類の作品が堂々と公開され多くの方が観ることは素晴らしいこと。
山崎監督には社会派エンターテイメント監督としてこれからもいい作品を撮ってもらいたい。