この映画には悪い人は一人も出てこない。
懸命に前を向いて生きている人ばかりだ。
もがき苦しみながらも幸せを求めて生活をしている。
しかし、幸せが訪れることはない。
せつない。
映画を観ているこちら側が苦しくなってくる。
眼をそむきたくなるが、眼を離すことはない。
そこに現実があると感じるからだ。
目をそむくことは現実から逃げていることを意味する。
それを分かっているから逃げることができない。
この作品に登場する家族も同じ。
誰も逃げていない。
逃げようとする瞬間はあるもののその生活を受け止め、戻ってくる。
それがとてつもなく悲しい。
本作の舞台はイギリス。
どんよりとした天候の中、家族のために働く父親がいる。
母親も家族のために働く。
これが日本であっても何の違和感もない。
むしろ日本の方が想像しやすい。
これに近い日本映画もあったんじゃないかという錯覚も起きる。
どこにでもあり得る家族像がここに描かれている。
どこで間違ったのか、生きる時代がまずかったのか、
いい偶然と悪い偶然があるとすれば、たまたま悪い偶然が重なっただけじゃないか。
そんな想いを抱きながら、映画を見つめていた。
いつ何時、僕がこの映画の家族と同じ状況となっても不思議ではない。
たまたまに過ぎない。
運を掴めたかどうか、それを見逃さなかったかどうかの違い。
そんなふうに思えてくる。
どんな時も自分の判断軸と比べるのが大切。
僕は感情を抑えることができるだろうか。
僕は言葉を選ぶことができるだろうか。
いざという時、どんな判断をするのか。
映画は多くのことを教えてくれる。
そして、つくづく思う。
今のシアワセに感謝しなければならない。
家族に感謝しなければならない。
普通に暮らせるシアワセを。
タイトルではないが、家族を想うことを感じさせてくれる映画。
大人は観なきゃいけない。
いつまで名古屋で公開されているのか。
早めに鑑賞することをおススメしたい。