達者という表現が正しいかは分からない。
しかし、僕の中では上手いのではなく達者。
それは本作の主役を演じる小池栄子さん。
相方の大泉洋さんも同じ。

以前から大泉洋さんのいかにもアドリブが効いてそうな演技は流石だと思っていたが、
この作品でいえば小池栄子がより上回っていたといえるだろう。
今どきの女優であんなハチャメチャな演技をできる人は少ないはず。

汚れ役もあんな馬鹿力を発揮できるのも、
一方で品のある奥様を魅せつけるのも彼女ならではの役どころ。
あんな役を他に誰が演じられるのかは思いつかない。
バカさ加減でいえばお笑い系をもってこれなくはないが、到底無理だろう。
そんな意味では本作は彼女のためにあるといえる。

なんとなくシアワセを感じて終わる映画だし、全編飽きることなく楽しめる映画。
そこについては何の文句もない。
終戦後、そんな時代があったんだとも思わせてくれる。

しかし、冷静に振り返ってみれば、大した内容ではない。
太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」を戯曲化し出来上がったようだが、
よくよく見てみれば、女性にだらしのない編集長が
自分の都合で女性たちとスムーズに別れていくという随分と自分勝手な話。

まあ、この程度ではネタバレにはならないだろう。
しかし、残念ながらそのだらしのない話に観る者は吸い込まれてしまうからやっかいだ。
この映画で何か学ぼうとか自分を奮い立たせようとか思うのであれば観ない方がいい。
単純に楽しむことしかできない。

逆に気分が晴れない時とか、もっと明るくなりたい時にはうってつけだろう。
大体、この映画に登場する人物はロクな人間がいない。
役名はともかく松重豊にしても濱田岳しても木村多江にしてもロクなもんじゃない。
長渕剛が歌いそうなものだ。

でも、なんだろう。
誰一人として憎むことができない。
まあまあ、いいよ、いいよと許してしまう。
世の中、それで済んでいけば、みんなハッピーなのかもしれない。
おおらかにならなきゃダメなわけね。

そんなことを感じた映画だった。
そして、持ち込むべきはウイスキーとピーナッツ。
僕もいいウイスキーを買って持っていくかな(笑)。