連続して映画コラムニストの仕事。
本作は鑑賞する機会がないと思っていた。
スケジュールが合わず諦めていた。
ところが当初予定の夜の会合が中止となり、
またちょうどその時間に上映時間が当てはまり観る機会を得た。
それはまるで主人公の2人が旅行先でTVチャンネルを合わせた偶然に近い。
何事も偶然から広がっていくのだ。
昨日の「罪の声」も2つの物語が一つになる構成だが、本作も同じ。
生きる世界は異なるが、お互い辛い経験をしている。
違うのは前向きなのか、後ろ向きなのか、未来に期待しているのか、絶望しているのか。
その違い。
しかし、どんな状況でも朝は来る。
明けない夜はない。
そこにあるのは何か・・・。
登場人物に悪者はいない。
それぞれが自分と向き合いもがいている。
残念ながら上手くいくことは少ない。
思い通りにならない人生を悲しむだけ。
その中でどう立ち直っていくかもこの映画の訴えるところ。
(勝手にそう思っているだけだけど・・・)
立ち直るためのキッカケはとてもシンプル。
些細な言葉ですべてが満たされる。
どん底から救われることもある。
未来は過去もきっと変えてしまうのだろう。
昨日と同じこといってる?(笑)
ここまで読んでもらっても、映画はさっぱり分からないと思う。
本作の上映期間はさほど長くはないだろう。
間もなく公開終了ということか。
だとすれば、急がねば・・・。
この2020年の中では観ておくべき一本じゃないかな。
監督は河瀨直美氏。
嫁さんと同じ名前というのが理由ではないが、最近の作品はほとんど観ている。
初期は好きな監督でもなかったが、趣味が変わってきたのかな?(笑)。
ここ数年でも「あん」「光」「Vision」。
正直、出来はマチマチだと思うが、
(すいません)
共通して優れているのは自然を描き出す映像。
それも光が差す森林であったり海であったり・・・。
そこには意志があり強いメッセージと神々しさを感じる。
監督の生き方を反映させてもいるんじゃないか。
本作のテーマは「特別養子縁組」。
身近なようで遠いテーマ。
これまでの僕の人生では想像できない。
自分が同じ立場になったとして真摯に向き合えるかと問われれば自信がない。
それは生みも育ても両方。
お前は男だろ!というくだらないツッコミは無視して、あくまでも一人の親として・・・。
しかし、現実にはごくごく普通の人がその環境でもがき苦しみ、
その中で喜びや生きがいを見出していく。
一人の子を育てることは生半可な気持ちではできないことを痛感。
本作を観て、改めて嫁さんに感謝。
当たり前の行為がどれだけ大変なのか。
映像を通してしか理解できない自分の鈍感さに呆れながらも、そんなことを感じた。
生みの母ひかり役の蒔田彩珠ちゃんを初めて知った。
これから可能性の感じる女優さん。
そして、思った。
パフのSに似ていると・・・。
パフ内でそんな話題になってない?
僕が思っているだけ?
おちゃらけな終わり方になってしまったが、グッとくる作品であるのは間違いない。
感動的な日本映画は秋に集まりますね。