どうだろうか。
本作は先週紹介した「ヤクザと家族 The Family」と併せて観ることをおススメする。
両作ともヤクザの生きづらさを描いているが、対象的で面白い。
そして、一本はヤクザの若頭を演じ、
一本は役所の職員を演じる北村有起哉氏の比較も面白い。
これってワザと演じてる?と思ったのは僕だけか。
映画マニアの間では話題になっているはずだ。
多分(笑)。
関係ない話が先行してしまったが、
本作は役所広司演じる殺人犯三上正夫の社会復帰を描く人間ドラマ。
社会復帰なんで安易な言葉は似合わない。
ちょっとした失業から就職した社会復帰とは訳が違う。
そこには僕らが想像しがたい世間とのギャップが生じる。
自分と照らし合わせてみれば分かりやすい。
いきなり僕が13年間、社会との接点を閉ざされ、戻ってきたらどうなるだろうか。
家族、友人、生活、仕事と全てにおいて不安しかないはずだ。
それも社会から白い目で見られる存在であるとするなら・・・。
耐えがたい世界でしかない。
些細なことでブチ切れるのも、
その本人に問題があるというより社会に問題がある。
それを西川美和監督はさりげなく演出し、役所広司はさりげなく見事に演じる。
「すぐにキレるなよ」という僕の想いは届かず、
三上の葛藤を生み、暴力性に歯止めがかからない。
誰にとっても辛い。
それが生きづらさなのか・・・。
そこに正義を装ったマスコミが無責任に絡む。
最近、マスコミを悪く映画って多くね?
いいね、長澤まさみのねじ曲がった正しさ(笑)。
いや、これが正直な姿か・・・。
逃げ出す仲野大河はあのままだったら、
情けないエセジャーナリストか売れないままの作家だが、
ああいった展開で映画をある方向へ持っていった。
いいアクセントになっていたし、彼の存在がより感動を生んだといってもいい。
ストーリーテーラー的な役割を担っていた。
「すばらしき世界」というタイトルに相応しい作品にしようとすれば、
思いもよらぬ展開や感動を生む劇的なシーンを持ち込むべき。
しかし、そんなものは必要ない。
自らと戦いながらも世間と向き合い平穏に過ごそうとする努力。
実話に近かったのだろう。
その中で小さな幸せを見つけるのがすばらしき世界。
主人公三上は周りの温かさを感じてその世界を全うした。
いつどんな状況でも前を向けば何かが訪れる。
それは偶然ではなく必然。
それを感じさせてくれる映画。
三上正夫の笑顔が忘れられない。
また、訳の分からないブログになってしまった。