僕が一番ドキッとしたシーン。
ネタバレにはならないと思うので、まずはそこから。
映画の後半で主人公であるファーン(ノマドととして車上生活を送っている)と義兄との会話。
不動産が上がるから土地を買い占めとけばよかったという義兄に対し、ファーンは噛みつく。
資本の論理を否定するシーン。
それが本作を象徴していると感じドキッとした。
観た人はなるほどと思うだろうが、観てない人は何のこっちゃだろうから、ぜひ、観てもらいたい。
資本の論理の中にどっぷり浸かる僕が、ある種、ノマド生活に憧れるのはそんな社会に生きているから。
それは自由気ままに行きたい場所に行き、働きたい時に働くことに憧れているわけではない。
むしろ表裏一体。
守られた生活や便利さを捨てる恐ろしさを感じながらも、自分自身を解き放してみたいという感覚。
キャリアをリセットする感覚に近いのかもしれない。
ノマド生活を送る人たちは社会的地位とか見栄とか妙なプライドは存在しない。
他人の目を意識しない。
あるのは自分との向き合い方。
そこには過去の実績や栄光も関係ない。
むしろお荷物。
それが僕がいうキャリアをリセットすること。
僕らは仕事で繋がりお金を稼ぎ自分の存在価値を高める。
それを良しとして生活してきた。
ストレスや不満や息苦しさは存在価値を高めるために抑え込んできた。
それを社会を生き抜く当然の行為として過ごせれば何の問題もない。
しかし、何かのキッカケでそれが誤りと気づいたのなら・・・。
自分らしさというチープな表現でまとめようとしているのではない。
何が自分にとって大切なのか、そろそろその問いから逃げれなくなってきている。
キャリアに結びつけるのもそんな意図があるからこそ。
本作は大自然を僕らに晒しながら、生き方そのものを考えさせているのかもしれない。
舞台となっているのはリーマンショック後のアメリカ。
今までの価値がいとも簡単に消え、意味さえなかったと思わせる。
そんな時、どこへ向かえばいいのか。
ノマド生活は目的ではなく、どこかに向かうための手段でしかない。
手段を繰り返すうちに本当の目的が見えてくるのかもしれないが・・・。
これでは意味がわかりませんね(笑)。
どうだろう。
本作は現代人がこれからの社会をどう作っていくべきかを投げかけているのだろうか。
心の中にあるファーンの生き方をえぐり出そうとしているのか。
ふとそんなことを考えてみたり。
いやあ~、イマドキのロードムービーだよね~とか、
ドキュメンタリータッチだよね~とか、
そんな感想を書こうとしたことをちと反省。
観終わった後にじっくり考えるにはとてつもなく素晴らしい作品だ。