大島渚作品「戦場のメリークリスマス」に続き本作。
この作品もミリオン座で観たのだが、予想以上に混んでいた。
それも若い女性が多かった。

映画を観ながらつくづく思った。
若い女性が隣に座っていなくて本当によかったと。
映画に感化され変な行動をするわけではない。
ただ隣で観ているのが恥ずかしいだけ。
環境的にはそんな気持ちにさせる映画。

映画を観る者全員が本作の問題点は知っている。
18禁でありモザイクがかかっていることも。
相当な物議を醸した出したことも。

しかし、その想像をはるかに超えていた。
あそこまでハードコアな作品とは予想しなかった。
本作は芸術作品として評価される一方で、観る人によってはただのエロ映画とも受け取れる。
そこはかなり微妙だし、芸術という捉え方に嫌悪感を抱く方や違和感を覚える方も多いはず。

本作は当時話題となった阿部定事件が題材。
僕は本作で事件の前後も描かれていると思っていたが、
表現されているのは、ほぼど真ん中。

その映像だけで昭和10年代の時代背景や社会性を感じることはない。
唯一感じるとしたら兵隊とすれ違うシーンのみ。
そこで一気に重苦しい時代に引き寄せられる。

どんよりした雰囲気もここだけ。
あとは色鮮やかに性描写が描かれている。

生真面目な読者であればブログネタとして否定されるかもしれない。
企業のトップとして人格を疑われるのかもしれない。
言い訳するのであれば本作は芸術作品として認められ海外の評価は高い。

実際の当時のキネマ旬報ベストテンでも8位にランクインしている。
日本映画ではなく外国映画として。
45年の時を経て再公開されたわけだが、その点に関して日本の理解は進んだのだろうか。

今、修復版が公開されたことを故大島渚監督はどう思うのだろう。
辛辣な発言をするのだろうか。
手放しに喜ぶのだろうか。
誰かをぶん殴るのだろうか。

僕はこの機会がなければ観ることはなかった。
感謝すべき。

本作は阿部定役の松田瑛子さんと吉蔵役の藤竜也さんの出演でほぼ占められる。
松田瑛子さんの大胆な演技も凄いが、藤竜也さんの勇気にも感動を覚える。
ここは敬意を表し、あえてさん付けにしたい。
当時の映画でここまでやり切れるとは・・・。

この機会に大島作品が見直されるのかもしれない。
色鮮やかな映像にはならないが「少年」や「儀式」も観てみたい。

無責任に勧めることはできないが、時間と心の余裕があれば観てもらいたい。