sennenn149

著者の野村進氏の本を読むのは17年ぶりか。
どんな理由で読んだのかは全く記憶にないが、
大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した「コリアン世界の旅」以来。

多分、30代前半は沢木耕太郎にはまっていたので、
その影響でノンフィクションを読み漁っていた頃だろう。
内容はすっかり忘れてしまったが、かなり熱心に読んだ気がする。
その頃、ブログを書いていたのなら、どんな感想だったかは理解できただろうに(笑)。

本書では5つの老舗企業の復活劇が取り上げられている。
老舗も老舗、創業から100年~200年の歴史を有する企業を取材し、その変遷を描いているのだ。

ファミリービジネスであるのは間違いないが、
本書はそこばかりをクローズアップするのではなく、時代と共に変化していく事業への取り組み、
具体的には技術革新や事業ドメインの変更にスポットを当てている。
それも廃業や倒産の危機を迎える中、経営者、
従業員の結束力で乗り越えた汗と涙の努力(チープな表現だな・・・笑)が中心。

これまで僕が読んできたファミリービジネスとは取り上げ方が異なるが、
生き残るための共通点は同じだ。
「伝統」を守りながら、どう「変化」「革新」していくか・・・。
老舗という言葉に胡坐をかいてれば、気づいた時には手遅れになっているケースがほとんど。
それは今も昔も変わらない。

ここに登場する企業はいずれも中小企業。
僕の無知さもあるが、1社もその存在を知らなかった。
日本国内にはいかにそんな企業が多いことか・・・。

業務用ロープのメーカーと言われてもピンと来る方はほとんどいないはず。
技術革新の最重要ポイントはどこで、シュリンクするマーケットで、
どう事業拡大を行えばいいかと言われても、何のこっちゃという感じ。

しかし、その分野に真摯に向き合い、改良に改良を重ねる。
その結果、200年続く企業になっていく。そんな世界が国内のあちこちで繰り広げられている。
なんと素晴らしいことか。

ファミリービジネスの強さもあるが、事業に対する執念は学ぶべきこと。
創業45年の名大社も時代と共に変化してはいるが、まだまだ甘ちゃんですね(笑)。

著者は老舗企業には共通の価値観があるという。
仕事観は当然のことながら、技術観、倫理観も含まれるようだ。
これは成長著しいアジアには乏しい考えだとも言及している。

日本に老舗が多いという所以でもあるだろう。
そんな企業をロールモデルにしながら、僕たちは学び続けなければならない。