本作を観て(観てない人も)、
昨年公開された「MINAMATAミナマタ」を思い出す人も多いだろう。
どの国に限らず、どの時代に限らず世界中で同様の問題が起きている。
大手企業の論理でねじ伏せられがちだが、必ず立ち上がる正義がある。
その正しさは追及すべきだが、救われるかは別問題。
膨大な時間、労力とストレスで
人として大切なものを失くしてしまうことも多い。
正しさは誰かを幸せにするとは限らず、反対方向に向かうことも多い。
正義感が強い者を周りが支援してくれるとは限らない。
時に迷惑がられ鬱陶しい存在にもなる。
本作と「MINAMATAミナマタ」はテーマの共通性があるとはいえ描く世界は異なる。
但し本作も実話を基にした作品。
誰もが知っている大手化学メーカー・デュポンが舞台。
僕は予告編から勝手にすでに解決した問題と捉えていた。
実際はそうではない。
現在進行中なのだ。
それを堂々と映画化してしまうアメリカはさすが自由の国。
自社が悪者として描かれても平然と構えるデュポンの懐の深さにも感動する。
(実際はウラでゴリゴリやってるのかな・・・)
何気ないラストシーンは僕には衝撃的だった。
どんなシーンかは伏せておく。
こういった実話をベースにした作品の楽しみ方はいくつかあると思う。
その事実を知り社会の恐ろしさを感じる。
自分がその当事者となり(被害者でも加害者でも)自分なりの判断をしてみる。
完全にフィクションと捉え純粋に映画を楽しむ。
どれを選ぶかは自分次第だが、この類の作品は重くのしかかることも多い。
ついデュポンの現状や登場人物の行方を調べてしまったり。
ドキュメンタリーとの境目も難しい。
しかし、本作は創り込まれ完成度の高い映画。
込められたメッセージがある。
青味がかった映像も、引いたり寄せたりするカメラ割りも、
感情的になったり無表情になったりする顔つきも、
すべてが主張している。
それが緊張感を増幅させ体を揺さぶる。
僕は迂闊にもあるシーンで涙を流しそうになってしまった。
これで一件落着かとホッとしたのだろう。
しかし、物語はそれで終わることなく続いていく。
正しい表現ではないかもしれないが、ぬか喜びというやつ。
本作の主役は環境保護の活動家でもあるマーク・ラファロ。
映画のプロデューサーでもある。
役作りは多分完璧で、ちょっと頼りなさげで太っちょの弁護士を上手く演じている。
ということは敵役も・・・。
アメリカでの公開は2019年。
日本では2021年の暮れ。
何か深い理由があるのだろうか。
現実を描く意味は大いにあると思うが、恐ろしくもある。