映画コラムニストというよりファミリービジネスアドバイザーの立場として観た作品。
(なんのこっちゃって感じ?)
この作品をサスペンス映画と捉えるか、
名門企業のスキャンダルと捉えるかは観る人次第だが、
間違いなくファミリービジネスの崩壊を描く辛辣な物語。

それも実話を基に制作されている。
別世界の話ではあるが、目の前でも起こりうることも十分考えられる。
同族企業の経営者、後継者はぜひ、観るべきだろうね。

一般的に同族企業の評価は日本より海外の方が高い。
日本の場合、圧倒的に同族企業の比率が高く、かつ、伝統的な長寿企業が多い。
しかし、マイナス面でみられることが少なくない。

一方で海外はその反対。
本作だけでも一目瞭然。
グッチ家に誇りを持ち、ところどころに”famiry business”というセリフも発せられる。

当初、事業に興味になかった三代目長男も名前には拘りを持っている。
もちろん世界有数のブランドの影響もあるが、
それはグッチ家に限らず多くのfamiry businessにいえること。

そこに入り込む運送会社の娘。
それが主役レディー・ガガ演じるパトリツィア・レッジャーニ。
彼女が何気に凄い。

かなりの迫力。
それは肉体だけではなく、その愛情表現、精神力、強欲性、煌びやかなファッションなどすべて。
僕はレディー・ガガの演技を初めて観たが、その存在感に圧倒された。
派手なネエちゃんから憎しみに満ちたオバちゃんまで見事に演じていた。

脱税、著作権侵害、株の譲渡など同族企業ならではの問題を含んでいるものの、
グッチ家が彼女の言動に翻弄される。

ファミリービジネスアドバイザーの立場であればもう少し冷静な対応を提案するが、
そんな第三者が入る余地はなかったわけね。
お金の匂いを嗅ぎつけて甘い誘いをする輩はやっぱ登場するわけだけど。
そして最悪の事態に陥っていく・・・。

鑑賞前、作品の背景は50年ほど前の世界と思っていたが、事実は30年ほど前。
1980年代から90年代を描いている。
流れている音楽は僕が10代から20代にかけて聞いていた曲ばかり。
イメージできない世界ではない。

実際にこんな事件が起きていたとは知らなかった。
ニュースを耳にしたかもしれないが、素通りだったのだろう。
こんな真相だったとは・・・。

本作でfamiry businessを一番理解していたのは二代目のお父さんジェレミー・アイアンズってことか。
息子や甥への態度は間違っていなかった。
見る目もあった。

一人の存在や一人の死がfamiry businessの全てを変えてしまう。
学ぶ点が多い映画。

お~、ファミリービジネスアドバイザーとしてまとまったブログだね(笑)。