「テツ、明日、辞表を持ってこい!」
「お前はエゴイストだ。会社のことを全然考えていない!!」
社長からの強烈な言葉が続いた。
始めのうちは先輩も後輩も庇ってくれていた。
「ヤマちゃんは頑張ってますよ。みんなのためにやってますよ」
「お前は何も分かっていない。こいつは自分のことしか考えていないんだ!」
社長の迫力に押され、誰も反論できなくなった。
次第に
「そうですね。テツは自分勝手ですね・・・」
手のひらを反すような言葉に変わった。
まさにサンドバック状態。
自分なりの抵抗はみせるものの、完全否定されボコボコ。
社長としては1年以上前から僕の言動に不満を抱いていたのだろう。
溜まっていたものが爆発した。
ボロカスにいわれ、ただ酒を飲むしかなかった。
気がついた時に社長宅には社長と僕だけ。
途中からの記憶はない。
他のメンバーはいつの間にか消えていた。
あれだけ激しく罵倒されたのは初めて。
日記を読み返すと最後は握手をして別れたと書かれているが、
僕はずっと追い出されたと思っていた。
深夜1時は回っていただろう。
翌朝は酷い二日酔い。
体調も良くなかったが、気持ちも落ち込んでいた。
それでも普通に出社。辞表は持たずに。
僕が普段通り出社したので、同席した役員や先輩は驚いていた。
さすがに休むと思っていたようだ。
数日後、社長と一緒に罵倒していた役員も気にしていたのだろう。
珍しくフォローがあった。
その後、社長からお咎めはなかったが、鼻をへし折られたことは事実。
確かに調子に乗っていた面もあり、この夜の出来事はいい反省材料にもなった。
それにしても言いすぎだと思うけど・・・。
そして断固として言いたい。
エゴイストではないと・・・。
不況期であってもノルマに追われ仕事は忙しかった。
個人としては良かったが部下の成績がイマイチだったり、
部下がクライアントとトラブルを起こしたりと
上司としてマネジメントの難しさを感じていた。
頻繁に社長や役員から叱責を受けた。
唯一の救いは娘の存在だった。
当時の日記には娘への溺愛ぶりが綴られている。
今は影も形もないが、2歳の頃はよく懐いてくれた。
起きている時間に帰宅すると走って抱きついてきた。
週末のひと時に癒され、幸せを噛みしめていた。
仕事の苦労も吹き飛んだ。
家庭では何もしないダメ夫に嫁さんは不満を持っていたはず。
帰りは仕事で遅いか、飲んで遅いか、週末も仕事を持ち込んでいた。
この頃からそれが常態化していった。
続く・・・。