宮本が友達だったら超面倒くさいヤツと思うだろう。
うざいヤツと思いながらも仕方なく付き合うだろう。
頻繁に周りに迷惑を掛けるが憎めない。
金を貸してくれと言われれば、何も言わず貸してしまう。
宮本はそんなヤツ。
暑苦しくて仕方ないが嫌いにはなれない。
巻き込まれるのを拒みながらも巻き込まれてしまうような気がする。
それも自ら望んで・・・。
映画の宮本に僕らはなんやかんやで共感してしまう。
感情的で一方的でナルシストで自分勝手な正義感に僕らは共感する。
それは自分でできなさそうなことを真剣にやってしまうから。
それは難しいことにチャレンジするのではない。
ちょっとしたことにムキになり立ち向かうだけ。
それにはくだらない勇気と呆れる正義感が必要。
それを宮本は持っている。
分かり易くいえば、彼女を寝取られた僕が
ラグビー日本代表の稲垣選手にケンカを売るようなもの。
絶対、勝てるわけがない。
コテンパンにやられるのは分かっている。
予測できる結果はどうでもよく、
とにかく勝つことを信じて稲垣選手にぶつかっていく。
どんな状況でも僕は絶対にやらないが、
とことんやればほんの少しは可能性が生まれるかもしれない。
本作はそんな成り立ち。
宮本を演じるのは池松壮亮。
彼の真正面から向かう演技が素晴らしい。
実際に前歯を失くしてもいいと本作に臨んだようだ。
その相方は蒼井優演じる靖子。
彼女も感情丸出しで宮本にぶつかる。
そして、「宮本ーーー!」と叫び続ける。
男女が出会って結婚し子供を産むまでの単純な話だが、
どうしてこんなに面白くなるのか。
その熱量に圧倒される。
本作はAmazonプライムのウオッチリストにずっと入っていたが、
最近になりようやく観ることができた。
真利子哲也監督、なかなか、やるな。
前作「ディストラクション・ベイビーズ」も横暴な男が殴り合うだけの映画だったが、
メチャ面白かった。
シンプルな物語をすこぶる面白く魅せる演出はこれからも楽しみ。
いやいや、期待以上に楽しめた映画だった。