前作「熔ける」を読んだ時もブログに書いた。
間違いなく失格者。それは間違いない。こうなってはいけない。
とブログでは締め括った。
内容は面白かったが、井川氏に共感する面は全くなかった。
では、なぜ続編を読むか?
ファミリービジネスを学ぶ者として参考になる要素があると感じたため。
その視点は必要。
なかなか勉強熱心じゃないか(笑)。
本書は大きく2つに分類することができる。
一つは著者の獄中の生活とその後の人生。
もう一つは大王製紙のこれまでとその後。
気になるのは大王製紙のその後。
ここはファミリービジネスを学ぶ者は読んでおきべき。
そうはいっても前半の井川氏の人生にも軽く触れておきたい。
結局のところ、106億円を使い込んで実刑を受けてもその後の生活は変わらない。
ギャンブルは治らない病気か。
会社を手放す原因で大きな責任があるにもかかわらず、行動は変わることがなかった。
その張り詰めた緊張感や素人には分かり得ない悦びは再び熔ける存在になっていく。
どれだけ財産があるんだ…というのが素直な感想だが、
コロナが明けたらまたどうしようもない生活を繰り返すのではないか。
最終作「熔けて全て失った」を期待したい。
な~んて・・・。
著者の言い分が正しければ、大王製紙の佐光氏率いる経営陣の対応も激しいもの。
そこまでして会社を自分のものにしたい私欲が働くものか。
責任を取らせる意味合いで井川家を一掃する行為は理解できなくもないが、
そのためになりふり構わず組織も動かしてしまう行動は理解しがたい。
著者が書いている通りリアル「半沢直樹」。
ドラマや小説の世界だけではなく、ドロドロした現実は名のある企業でも起こる。
バイアスが掛かっているため全てが事実だとも思わないが、
これが正しい会社の在り方かとは疑ってしまう。
会社は一体誰のものか・・・。
その問いは改めて自分にも向けなかればならない。
どんな優秀な経営者であれ、人はどこかで間違える。
大王製紙の場合、「中興の祖」と呼ばれた2代目井川高雄氏も
後を継いだ佐光正義氏もどこかで間違えた。
直系3代目はいうまでもない。
大きな権力を所有することは恐ろしい。
本書には著者と安倍元首相との交流が最後に著されている。
「私はもう総理を辞めたので、今度こそ本当に井川さんと食事しましょう」
安倍元首相の人となりがよく分かる表現。
本書を読み終えたのが偶然にも7月8日。
とても悲しい最後の一文になってしまった。
井川氏はどう感じているだろうか。