沢木氏のエッセイを読むとその生き方につくづく憧れる。
ご本人の苦労を置いておいて、理想的な生き方だと思わせてくれる。
僕も映画コラムニストとして、
人気食べ物ブロガーとして自由気ままに生きられないだろうか。

そんなことを言ってしまうと周りからも沢木氏からもこっぴどく叱られそうだ。
叱られるというよりは「悪くはないと思うが、いいとも思わないよ」と諭されるかも・・・。

本書はJR東日本の車内誌「トランヴェール」に連載されるエッセイ。
ここには35編がまとめられているが、現在も連載中なので続編も期待できる。
東北新幹線に乗ることがないので車内誌を読む機会はないが、
一度だけ尊敬する仙台の先輩経営者に雑誌を送ってもらったことがあった。
移動で得られる有益な時間。

この車内誌を目的に旅に出るのもいいかもしれない。
目的も決めず、雑誌を読み終え目に留まった駅で下車する。
そんな気ままさな旅をこのエッセイを読んでいると無性にしたくなる。

今月、家人と一緒に九州旅行に出掛ける。
ほぼ一週間を共に旅するのは新婚旅行以来。
苦労を掛けた身としてはそんな時間も大切だが、
できれば一週間くらい一人でのんびり泊まる場所も決めずにぶらりと出掛けたい。
さすがに年内は無理なので、来年あたりに・・・。
世界のことなんてまるで知らないが、国内も知らない場所は多い。

未踏の地を時に強風に煽られ、震えながら歩くのもいい。
そうなると気候のいい時期より冬か。
場末の居酒屋に入り、熱燗で体を温めながら、どうでもいい会話を女将や常連さんとして。
翌日に向かう場所はそこで教えてもらった土地に出向く。
「しまった」と思う経験もするだろうが、それも楽しかったり。

本書にも書かれているが、
「学んでから旅に出る」のではなく、「旅に出てから学ぶ」。
いい年齢になったからこそ、そんな経験をしたい。

いつまでも若いと思っていた沢木氏ももう75歳。
ジイサンの領域だ。
一体、いつまで旅を続けるのだろうか。
同じような姿勢でいつまでも続けて欲しい。
VISAの広報誌の連載も楽しみだし、こちらも続けて欲しい。

そして、いつまでも憧れの存在であることも願いたい。