どこかで観たことのあるような懐かしさを感じさせる作品。
それが心地よくいい時間が流れていった。

本作の舞台は1986年の長崎。
小学5年生の夏休みの友情を描いている。
思い出してみると当時、僕は大学2年生。
青春を謳歌していた。

頭の中はろくでもないことばかり考えていて、
バイトとサークルと飲み会(合コン)に明け暮れていた。
ちょうどバブルに向かう頃。

親から譲り受けたオンボロ車を走らせ、いろんな場所に出向いた。
確か映画は「ビーバップハイスクール」が流行っていて、
本作に登場するようなヤンキーも全盛の時代じゃないかな。
長崎に比べれば名古屋は都会だったけど、
昭和を感じさせる人懐っこさが時代を象徴していた。

主人公の久ちゃんが憧れる斉藤由貴は僕と同じ1966年生まれ。
この頃、相米慎二監督や大森一樹監督のアイドル映画っぽくない作品に主演していた。
結構、夢中になって観ていた。
久ちゃんみたいな幼稚な行動はしていないが・・・。

小学5年生といえば多感になる時期。
助けてくれた女子高生の胸元をずっと見るのも仕方ない。
AIWAのラジカセも中流家庭の生活感があっていい。
育った環境は違うとはいえ、時代的な共感もノスタルジックにさせるのかも・・・。

ある意味、この作品は期待通りに物語が進む。
どんでん返しがあるわけでもなく、予想外の展開があるわけでもない。
ラストシーンだって想像できてしまうかもしれない。

しかし、それが本作の心地よさ。
笑うところで笑い、泣くところで泣く。
僕は映画館で大声で笑ったり、泣いたりはしないが、
前席のお客さんはとても分かりやすかった。
それがすこぶる健全。

痛烈に社会的なメッセージを発する作品もいい。
至極難解な芸術作品もいい。
ただ時には誰もが安心して感動できるハートフルな作品が必要。
健康的で自然体に向き合う姿を本能的に求めてしまう。
そんなことが大切だと教えてくれた映画。

タイトルにもなっているサバカン。
一つの味が永遠に記憶に残る。
味と共にその情景が浮かび上がる。

そして、思う。
サバ缶の寿司はそんなに美味いのかと・・・。
どこかで一度試してみようか。

草彅くんのナレーションはブラタモリを思い起こさせるのもいい。
夏休みの思い出を語るに相応しい映画。

またね~。