100人いたら95人は気づかないと思う。
映画の存在ではない。
本作はヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品作であり、
最近話題作が続く深田晃司監督作品。
何かといえば、ポスターの右横白文字のキャッチコピー。
上のポスターは「孤独を抱いて自由になる」。
しかし、劇場に設置してあるチラシは「痛かった、全部。」。
あえて違うコピーにしたのか、
たまたま校正のタイミングが異なり印刷物によって違うのか、
理由は分からない。
共通点の見出せないコピー。
なんのこっちゃ、と思うだろうが、
映画を観た人なら「なるほど・・・」と唸るだろう。
だが、これに気づく人はほとんどいない。
100人いたらせいぜい5人。
本作は観る人によって評価は大きく分かれる。
上辺だけで映画を観れば、
表面的な人間の自分勝手なストーリーと捉えるかもしれない。
それほど面白くもないだろう。
一方で観る人によっては、
かなり深刻な気持ちになり重く受け止めるはずだ。
本音を隠し程よい距離感で、
当たり障りのない人付き合いをするのが日本人の特徴。
それが功を奏する場合も多い。
相手を傷つけることなく平穏を保つ。
それにより安定的な関係性が維持できる。
しかし、ある事件によって、その本音が露になりお互いが苦しくなる。
本作でいえば子供の溺死。
それによって夫婦の歯車が大きく狂う。
お互い許し合っていた負の側面が行動として表れる。
そこで価値観の違いを理解し、分かり合えない相手にいら立つ。
なんて、つらつらと自分の感じたことを書いたが、
事実かどうかは分からない。
あくまでも観る者に映画の中の人物像を委ねているだけ。
主役は木村文乃さん。
僕は今までキムラアヤノと思っていた。
すみません・・・。
これまでの印象でいえば、映画「BLUEブルー」のボクサーの彼女役や
大河ドラマ「麒麟が来る」の明智光秀の奥さん役。
気立てのいい優しい女性のイメージが強い。
本作はいい意味で裏切る。
今まで見たことのない表情が映し出される。
それだけでも観る価値はあるといえよう。
ロングショットの長いワンシーンや、
ここに出すかというタイトルクレジットも観る者にいろんな考えを抱かせる。
そして、ラジオから流れる矢野顕子の「LOVE LIFE」。
この歌詞が全てを物語っているかもしれない。
エンドクレジットでも流れるしね・・・。
本作は自称映画コラムニスト仲間との鑑賞。
おかげでその後の飲み会では熱く語り合うことができた。
そんな意味でも作品には感謝。
深田監督の作品はこれからも楽しみにしたい。