前評判が良かったので、内容もほとんど把握せず選んだ作品。
今年観た中では結構ツラい映画だった。
それは作品の出来が悪いといっているのではない。
描かれる世界が辛い。
簡単にいえば女性の中絶を描いているのだが、
男性である僕もヒシヒシと感じてしまう。
まさにポスターに小さく書かれたキャッチコピー
「あなたは〈彼女〉を、体験する」。
分かり得ない世界を自分でも体験したような感じでそれがとてもツラかった。
これはいつの時代を描いているんだと思いながら映画を観ていたが、
ある場面で主人公のアンヌが19640年生まれと分かる。
舞台は大学の女子寮なので、ほぼ20歳。
ということは1960年代のフランス。
解説を読めば何ら問題はないが、
当時、中絶は法律で禁止されていたという。
望まない妊娠をしたアンヌの葛藤が痛々しくこちらに伝わる。
日本でも同じと思うが、
(日本の方がかなり遅れているか)
1960年代に女性が大学に進学するのはそれなりに大変な時代。
本人の夢や希望がない限り進学するケースは少ない。
どんなことに変えても夢の実現を優先する。
それに向かうアンヌは見方によっては共感を生むし、
見方を変えれば無責任さに非難を生む。
人工中絶がアメリカでは大きな問題であることを捉えれば、
時代は変わっても議論が尽きないテーマ。
その行為は犯罪を起こすことと同じ。
だから余計にツラい。
勇気なのか無謀なのか。
賛否を問われることだろう。
作品の評価も賛否別れる。
ひとりのワガママ女子学生の12週間を追いかけただけといえるし、
国の法律のあり方をひとりの女性を通して世に問うともいえる。
僕は素直に受け取った(笑)。
本作は2022年度のノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーの実体験。
夢の実現はより説得力を生むかもね。
女性よりも無知な男性陣が観た方がいい。
永遠に理解しがたい世界なんだろうから。