一人、書斎で観ててよかった。
映画が終了した時、ボロボロ泣いていた。
もし、リビングルームで家族にその姿を見られたら恥ずかしい思いをした。

映画を観て涙をこぼすことはある。
しかし、ここまでボロボロと泣いたのは久々。
親子の辛いシーン、
それも小さな子供を使い涙を誘う常套手段としても普段はこんなことはない。
ストーリーは想定の範囲内。

それに引っ張られるなんて、相当愚かと感じるが、言い訳すればこれが本作の持つ力。
主人公の置かれた状況に感情移入し、見事なまでに僕の心を持っていかれた。
同じ感情を抱く人はき多いはず。
そうですよね?
映画を観たみなさん!

本作は昨年公開されたアメリカ映画。
公開時は気づかなかった。
映画評論仲間が2022年の優秀作に選んだので、最近、Amazonプライムで観たに過ぎない。
鑑賞後、映画館で観ておくべきだったと後悔。
多分、もっと号泣していただろう。

韓国系アメリカ人のジャスティン・チョンが監督・脚本・主演を務める。
全く知らなかった。
アメリカの移民政策に翻弄される家族を描いた人間ドラマ。
2年前に「ミナリ」という移民一家を描いた映画があったが近くて遠い。
「ミナリ」は移民した家族が理不尽な中で奮闘する姿だったが、
本作は誤った養子縁組が招いた不幸。

いずれにせよアメリカの移民政策は多くの問題があったようだ。
映画はフィクションだが、実際、ここに描かれる世界は実在するんじゃないか。

その置かれた境遇に自己責任は存在しない。
表現を変えれば被害者でしかない。
しかし、無責任な連中は加害者として受け止め、そんな対応をし続ける。
ほんとバカはバカだ。
自由の国は自由ではなく、やり場のない怒りを抑え込み、笑顔に変えて懸命に生きる。
とてもせつない。

その流れがあったからこそ、観終わる段階で僕はボロボロと泣いてしまったのだろう。
描かれた世界はほんの小さな世界。
大国アメリカからすれば大した問題ではない。
しかし、ジャスティン・チョンは見逃すことなくメスを入れる。
いやいや、恐れ入りました。

お涙頂戴の悲劇を描くだけでなく、観る者に問いを投げかけ終わるのもさすが。
僕はボロボロだったけどね。