注目している一人である藤井道人監督の作品。
本作と前々作「ヤクザと家族 The Family」のポスターを見比べてもらいたい。
両作とも集合写真のようだ。

繋がりがあるようでない人物を敢えて並べ意味を持たせているのだろうか。
反発し合う人物を同じ目線に置いて観る側への問うているのか。
ちなみに僕は「ヤクザと家族 The Family」を2021年度の2位に上げた。
光と闇を上手く描いた秀作で、グッと押し迫る緊迫感があった。

本作との共通点もそこ。
人の光と闇を描き、こちらにグイグイと踏み込んでくる。
観ている側の感情が揺さぶれてていく感じ。

決して気持ちがいいわけではない。
オープニングからエンディングまで120分間、ずっと引っ張られる。
映画の魅力としては十二分に発揮されている。

舞台となる伝統ある集落、霞門村(かもんむら)は現実的にありそう。
実際はない可能性が高いが、現存するようにも思わせる。
補助金を得るためにゴミの最終処分場を建設するのもあり得るはなし。
虚構と事実が入り混じるため、到底あり得ない人物たちもリアルに感じる。

横浜流星演じる主役優も黒木華演じる美咲も村長(古田新太)もその息子(一ノ瀬ワタル)もエグい。
特に村長親子はエグい。
「どうする家康」での足利義昭も酷いが、この村長も酷い。
それは演技が悪いのではなく、ここまで最低な人物にしてしまう酷さ。
言い方を変えれば古田新太は凄い演技ということ。

その息子透も酷いサイテーな人物。
一ノ瀬ワタルは「宮本から君へ」でもとんでもない役柄だったが、似合い過ぎる。
表現は悪いが、このエグイ2人のせいで物語はとんでもない方向に向かってしまう。

真っすぐ生きるのも真っすぐ生きられないのも結局何かの存在が影響する。
それは家族なのか、逆らえない権力なのか、
目に見えない圧力なのか、
変えることのできない環境なのか・・・。

普通に考えれば環境を変え、付き合う相手を変えればやり直すことはできる。
しかし、ヴィレッジという小さなコミュニティはそれを許さない。
自分ならあり得ないなと思いつつ、逃げ出せないのかも・・・。

大袈裟にいえば小さな集落を描きながら、日本を取り巻く全体を描いている。
藤井監督はいつも問いで終わるような気がしてならない。
だからこそ多くの人に観てもらい、解を聞きてみたい。