僕は黒澤映画が好きだ。一番好きな作品は「用心棒」。そして「椿三十郎」である。映画の演出で、あれだけ風を上手く取り込んでいるのはこれらの作品くらいだろう。本当に凄い!
今回は黒澤作品ではなく、2007年に上映されたリメイク。ようやくDVDで観る機会を得た。監督は今年逝去された森田芳光氏。80年代に自主映画を撮っていた僕らの世代にはかなり影響力のある監督である。
しかし、この作品。
公開された当時は何故リメイク?何故森田芳光?と思ったものだ。映画を観終わった今でも、その疑問はほとんど解消されていないが、それなりに楽しめる作品にはなっていた。
脚本は一切手を加えられていないので、前作を忠実に反映。それも凄い冒険。従って、黒澤作品とオーバーラップさせながら、映画は進行していく。
でも何かが違う・・・。カラーとモノクロの大きな違いがあるが、同じような殺陣でも迫力の違いは歴然。主役の三船敏郎の圧倒的な存在感はどんな役者を当てても代え難いのだろう。
良かったと言えば、松山ケンイチ。前作は長嶋一茂をどうしてもイメージしてしまう加山雄三がその役をそつなくこなしていたが、本作の松山ケンイチはその頼りなさげな武士を上手く演じていた。低視聴率だった大河ドラマ「平清盛」は全く見ていないのでわからないが、ちょっと頼りない役柄の方が適しているのではないだろうか。
そして、映画として一番の違いは「血」である。前作とは異なり、本作品は一切血が出てこない。バッサバッサと人を斬ろうと血は流さない。あとは椿の色かな・・・。
名作と言われる作品のリメイクほど難しい製作はないだろう。一定レベルであったとしても、必ず酷評される。
公開から5年経った今、映画を観て感想を書く僕自身もいかがなものかとは思うが、何故か急に森田作品を観たくなってしまった。理由はよく分からないけど・・・。
2012年12月27日