人は誰しも自分の行動は正しいと思う。
それが犯罪者であっても基本はそうだろう。
その正しさが本当かどうかは分からない。

しかし、客観的にレンズを通して眺めると、
正しさなんて独りよがりなもの。
目線を変えれば正しさは180度変わってしまう。
実に恐ろしい。
いかに自分が一方的な見方しかできていないか、愕然とする。
本作で描かれるそれぞれの目線は僕らへ痛切に知らせる。

学校の先生なんて無責任だ!
モンスターペアレントは勘弁してくれ!
子供は子供らしく育て!

それも自分勝手な正しさから生まれるもの。
先生も親も子供もみんな真剣でまっすぐ生きている。
悩みを隠しながら、まっとうに生きようともがいている。

これがヒシヒシと伝わり、僕は自分の愚かさを知る。
愚かさを認めれば怪物は現れないのかもしれない。
正しさだけで貫こうとすれば怪物が現れるのかもしれない。

大人になればなるほど、怪物の存在は大きくなる。
挙句の果てに同化してしまう。
誰にも怪物と気づかれないまま・・・。

本タイトルを説明すれば、そんなことになるんじゃないか。

本当のところは分からない。
これは僕が映画を観て、感じたことに過ぎず、捉え方はまちまち。
無責任な校長を怪物と見立てる者もいるだろうし、
悪気なく嫌がらせをする子供を怪物に見立てる者もいる。

いつの間にか純粋さを失くした僕らは大切なものが見えなくなる。
それが大人への階段と決めつけるには少し寂しい。
それがラストシーンに繋がるのかな・・・。

本作は公開直前にカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞。
先日亡くなった坂本龍一が音楽を手掛けた。
僕ら世代にはトレンディードラマではなじみのある坂元裕二が脚本。
それを世界で一番知名度のある是枝裕和が監督。

公開のタイミングはベスト。
この分野の作品は過去、それほどヒットしなかったが、
巧みな戦略(?)が効果的に働くかも・・・。

俳優陣も素晴らしい。
安藤サクラのナチュラルなお母さんもよかったし、
永山瑛太も誤解を招くオタクな先生はいい味。
そして何より2人の子役。
是枝監督は子役の使い方が上手い。
改めてそう思った。

感じ方はいろいろで、明確な答えも出てこない。
すっきりする人もいれば、モヤモヤが残る人もいるだろう。
だからこそ、多くの方に観てもらいたい。

この時期の日本映画は秀作が続く。
梅雨は映画館に行けということだろうか。