どん底まで堕ちたシングルマザーの再生物語。
この類の映画は数多く存在すると思う。
どん底への堕ち方も様々だが、凡人から見ればあり得ないどうしようもなさ。

同情すること点なんて一つもない。
共感することもなければ、腹立たしくなるだけのこと。
不快な気持ちも持ちながら、映画は進んでいく。

しかし、どこかで少し願っている面もある。
なんとか立ち直ってほしい。
このままアル中女で終わらないでほしい、と。

全く共感できず腹立たしいだけの女性が、
もがきながらも立ち直る姿を見せるとなぜか素直に嬉しくなる。
よかった、よかったと自分事のように喜んでしまう。

実に不思議。
どんなキッカケがあるかは別に人が堕ちるのは難しくない。
主人公のようにアル中になってしまえばいとも簡単。
僕だって大した努力もしなくても、堕ちることは可能。

しかし、そこから這い上がるのは難しい。
何度も同じ過ちを繰り返し、反省はするが結局は戻ることはない。
だから堕ちない努力をするしかない。
堕ちたら二度と戻れないと思いながら・・・。

ついて回るのは他責。
どんな場合もそう。
自責であればもっと早く立ち直っていたと思うが、悪いのは自分じゃないと考える。
映画は間接的にそれを教えてくれる。

アル中のシングルマザーは醜いだけ。
だが、そこから脱したシングルマザーはとても可愛らしい。
人なんて分かりやすい存在なんだ。

それを見事に演じたのがアンドレア・ライズボロー。
彼女の演技が凄い。
半端ないダメさは演技とは思えない。
彼女の表情や発言に振り回されながら、気づいた時には応援している。
心の中で「ガンバレ!」と呟く。
そんなオッサンは多いんじゃないかな。

彼女がアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたのも頷ける。
とても42歳とは思えない。
自分と同世代かと思ってしまった。
ラストは10歳以上若返った気がしたけど。

どんな場合でも勘違いしちゃいけない。
身の丈を理解しなきゃいけない。
そんなことを教えてくれた映画。

まずはお酒をほどほどにしないと、僕も同じ運命を辿ってしまうかも。
いい勉強になりました。