映画を観た方ならわかるが、上記の写真のようなシーンはあり得ない。
しかし、それを違和感なく受け入れてしまえるのが、この映画の魅力。自分がいかに単純な日本人であることを思い知らされた。何気ないシーンに涙してしまったのだ。
きっと山田洋次監督の作品でなければ、涙することはなかっただろう。
かつて沢木耕太郎氏の著書に山田洋次監督のノンフィクションがあった。かなり若い頃の話だが、「僕の映画には個性がない。個性がないのが個性」と書かれた文章があったと記憶している。
先日、逝去した大島渚監督あたりと比べれば、確かにオーソドックスな手法で映画を撮っている。強烈な個性を感じることはない。
だが、この映画を観ながら、山田作品らしさを十分に感じてしまった。上手く表現できないが、会話の間であったり、差し込まれる風景であったり、エキストラのポジションであったり、らしさが随所に出ていたと思う。僕だけかもしれないが・・・。
この映画はいろんな場で紹介されているように小津安二郎監督の「東京物語」にオマージュを捧げた作品。
僕は残念だが、名作といわれる「東京物語」は観ていない。小津作品は学生時代に「晩春」「麦秋」「秋刀魚の味」は観たくらい。
恥ずかしいが原節子、笠智衆が出演していたことくらいしか覚えていない。まだ共感する面も少なかったのか、正直、面白いとも思えなかった。今、観れば違う感じ方をするとは思うけど・・・。
自分の親や家族について考えさせられる映画の良さはもちろんだが、この作品で一番良かったのはお母さん役の吉行和子。優しい語り口で、いつまでも子供を愛する母親役を見事に演じていた。多分、今年の映画賞助演女優賞を総ナメじゃないだろうか。言い過ぎかな(笑)。そして、中島朋子も夏川結衣も歳を取った(失礼!)。
親を大切にしなければならないと改めて思わせてくれた映画だった。
2013年1月28日