男の貌: 私の出会った経営者たち (新潮新書) 男の貌: 私の出会った経営者たち (新潮新書)
(2013/01/17)
高杉 良

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僕にとって高杉良と言えば、「金融腐蝕列島」「呪縛」一連の金融業界シリーズ。その著書を読んだ時からビジネス小説が面白いと感じたのかもしれない。調べてみると著者の作品はそのほとんどが実際の事件を小説に焼き直しているケースが多い。
僕が読んだ中では「青年社長」のように実名で書かれているノンフィクションも多数存在するが。
それを基本と考えるならば本書は稀有な存在となるのかもしれない。これまでの取材経験の中で感じてきたリーダー像を人物に照らし合わせながらあぶり出している。その分、説得力があるのかもしれない。
本書の面白さは直接接した一流の経済人から得たリーダー像の表現もあるのだが、その取材の裏側にある闇の世界を遠慮せずに暴露するスキャンダラスな面白さもある。どんな一流の経営者でも「オモテ」と「ウラ」の顔を持っており、巧みな使い分けにより、その企業を発展させてきた背景がある。
日本を代表する経営者 小倉昌男氏をバッサリ斬ってしまうのも見方を変えれば痛快である。名著「経営学」では読み取れない本人の人間性もズバッと表現してしまうのだ。
もしかしたら「オモテ」と「ウラ」の違いが大きければ大きいほど人間の深みがあるのかもしれない。「オモテ」と「ウラ」があったとしても、所詮、見分けがつかない自分はやはり凡人でしかないのだろう(苦笑)。
本書を読む限り、相当危ない橋も渡っており、懐柔や恫喝、札束ビンタなど人間を壊しにかかる行為も繰りかえされるようだ。それにも屈せず、本書を書きあげるまでに至るのは、まさに「ペンは剣よりも強し」の証。
最後まで一貫して表現しているのは、本物のリーダーは「勁さ」と「優しさ」の両方を持ち合わせているということ。肌で感じとった自らの証明だろう。
それにしても大物人物は怖いね。
よかった、小物で・・・(笑)