本書の視点で映画を観たことはなかった。
「こんな風にしてハリウッド映画を捉えるんだ・・・」
とかなり新鮮さを感じた。

著者に言わせればハリウッド映画は確実に終焉に向かっているという。
それは映画が衰退するのではなく、
「大衆娯楽の王様」だったハリウッド映画の役割。
カルチャーやアートとしての映画はこれからも続くが、
産業的な意味合いは大きく変わっていくようだ。

確かに僕が観る傾向にも表れているのかもしれない。
今年はすでに50本ほどの作品を映画館で見ているが、
アメリカ映画(ここでハリウッドとは言及しない)は10本。
以前であれば半分くらいはアメリカ映画。

それが今年は1/5。
他の国の魅力的な作品に惹かれているが、ハリウッド映画に惹かれないのも事実。
感覚的に著者の言わんとすることを感じているのか。

本書ではそれを4つの章に分けて表現。
一番最初に紹介されているのが「プロミシング・ヤング・ウーマン」
21年に公開された映画で、僕も高く評価した作品。
僕は単純に面白かったが、実際は複雑なテーマ性が存在する。

本書の内容を基に改めて振り返るとなるほどと感心する。
女性の扱いについて繊細なメッセージが込められている。
「SHE SAID その名を暴け」あたりで#MeTooのことは真摯に向き合っているが、
こんな作品でその実態を間接的に表現しているといえる。
それも終焉に向かう一つの要因。

それ以外にも僕がまったく気づかなかった視点は多い。
スーパーヒーロー映画はこれまでもほとんど見ていないが、最近は何でもありの世界。
確かにスパイダーマンとバットマンと一緒に出させるのはどうかと思う。
ウルトラマンと仮面ライダーが一緒に悪を倒すようなもの。

とっておきの手段かもしれないが、それでは未来がない。
そんなハリウッド映画の状況に一流の監督も危機感を抱くとのこと。
スピルバーグ監督にせよ、自分で撮れる映画は今回は最後という意識で向かっている。
それだけ興行的なシステムも変わってきている。

これまでであれば公開終了しても作品によっては大きく稼げることもできた。
僕も安易に利用しているAmazonプライムやNetflexは
表現を変えると作品の価値を下げているのかもしれない。

「しばらく待てばタダで観れるじゃん」
そんな行動も無視はできないし、映画界にとっていいかは別問題。
映画館で観るとはいえ、各種割引制度を使いまくる僕も責任の一旦はあるのかも・・・。
う~む。

本書はハリウッド映画を描いているが、日本映画にも当てはまる点も。
映画を愛する者として、こういった客観情報にも目を向けた方がいい。
いい勉強になりました。