この緊迫感はたまらない。特に電話の鳴るシーンの緊張感はどんな巧みな演技よりもアクションよりも張り詰めたものがある。
2012年度キネマ旬報読者選出部門1位の評価はうなずける。社会派ドラマで久々に手に汗握った映画であった。
イランの米大使館占拠事件を題材にした実話だが、これだけを観るとアメリカが正義でイランが悪者という印象が残ってしまう。互いの政治的背景に関して何かを言う立場でもないので、その事件については触れない。この事件に対して僕が無知なだけであるから・・・。
ただ実話が映画のフィクションを越え、こんなにもリアルにスリリングな世界になったのは衝撃。それはドキュメンタリーを思わせる演出やその当時をイメージさせる映像が更に衝撃を強くする。まんまと監督の術中に嵌ってしまったわけだ。
どんなストーリーなのかはここで話すべきではないが、ところどころに表現されるユーモアがうまい具合に緊張感を解いている。そうでなければ2時間でかなりくたびれてしまう。観たのが何もない時間帯で良かった(笑)。
監督で主演でもあるベン・アフレック氏は全く知らなかった。調べてみると「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」をマット・デイモンと一緒に脚本を書いている。10年以上前に観た秀作であるが、マット・デイモンの印象が強いため、この監督が絡んでいたことを知らないは当然かも・・・。今後、注目すべき映画人だろう。
映画のあらすじだけ読むととても重く一歩前に踏む出すのに力は必要だが、見ておくべき映画である。
2013年5月7日