本作の1年前に作られた園子温監督の「冷たい熱帯魚」は凄まじい映画だった。ブログに映評を書こうと思ったができなかったし(苦笑)、R18指定も納得してしまう。強烈すぎる作品だった。個人の感情を抉り出す演出は観ていて恐ろしくなったものだ。
本作も同様だが、社会に痛烈なメッセージを残す日本では稀な監督になるのかもしれない。
この映画は東日本大震災の数年後を描いている。架空の県で原発は稼働し続け、再び事故が起きるのだが、オーバーラップするのは福島原発事故。それがもたらす悲惨な状況を描き出している。だからといって安易に原発を批判する映画とはいえないと感じる。
テーマはあくまでも家族の絆であり、愛する地域で生きていくことなのだ。それは親子であり、夫婦であり、代々続く先祖へのリスペクトでもあるだろう。
一つの突然な事故により全ての環境が破壊されるのは、想定できないだけであり得ること。この映画を観終わった後、なんらリスク管理をしていない自分に危機感を覚えてしまった。2年前に起きた大震災の恐怖が自分の中でも知らず知らずのうちに遠のいているのだ。情けないな。
今後、園監督は要チェックだ。その前に撮られた「恋の罪」や「ヒミズ」も観なければならない。ただ観終わった後は、清々しい気分というよりは、ずっしりと重い気分になってしまいそうだけど・・・。この「希望の国」も「冷たい熱帯魚」もそうだった。ちょっと辛いな(笑)。
この監督の作品に出演する役者さんはいわゆる常連が多い。大林宣彦監督の大林組ではないが、園組と呼ばれることも近い将来あるのかもしれない。既にそうかもしれないが・・・。でんでん、吹越満、奥さんとなった神楽坂恵など。
そして、悲しいニュースが・・・。この映画で好演された主役の夏八木勲さん。昨日、すい臓がんで逝去された。お悔やみ申し上げます。
2013年5月13日