この小説では男がよく泣く。大の大人がよく泣くのである。主人公の「国岡商店」国岡鐵造であり、その多くの部下がである。
しかし、その涙は美しく、カッコいい。男が泣くのは恥ずかしいことでも情けないことでもない。素晴らしいことなのだ。
本書は2013年の本社大賞を受賞した作品であり、各方面で大絶賛されている作品。僕が尊敬する多くの先輩経営者や友人もかなりの割合で読まれている。同じような立場の方であれば、必読書と言っても大げさでない。
だから、本当は書評を書く必要もない。ネットで調べれば、参考になる書評が溢れているわけだし・・・。
ただ僕はこの小説を読んだことを証明するために、このブログを書いているに過ぎない。しかし、書く以上は少しは伝えなきゃいけない。冒頭の4行で充分だと思うけど(笑)。
一人の企業家を描いていると共に、昭和時代の苦悩も見事に描いている。昭和がどんな時代であったかを知るには参考になり、僕らが知っているようで知らないのはこの時代を、こういった作品を通して学ぶのが理想的だろう。
もっと激動の昭和を知る必要性を本書を読んで痛烈に感じた。先日、観た映画「アルゴ」にもしっかり繋がっているし・・・。
国岡鐵造の唱えるタイムカードなし、定年なし、労働組合なしの考え方も共感するところ。本来、働くというのはこんな関係性を築かなければならない。法律によるがんじがらめのルールで縛ることで、経営者と雇用者の信頼関係が悪化するとも言えなくはない。そして、それを細かくすればするほど個人や組織の主体性もなくなる。
だから、理想の姿なのだ。
僕は涙を流す男になりたい。
悲しくて泣くのではなく、悔しくて泣く、嬉しくて泣く。そんな男になりたい。それが美しい姿だし、本来あるべき姿だと思えるから・・・。
「海賊とよばれた男」に教えてもらった。
2013年5月19日