今泉力哉監督は日常を描くのが得意な監督と思っていた。
ごく平凡な人の普通の生活にドラマを生み出す。
そんな監督と思っていた。
本作もその流れを組んでいる面はあるものの、独特の世界。
オープニングで紹介される「アンダーカレント」とは、
1.底流、下層流
2.(感情・意見などの)底流、暗流
という意味。もっと長い文章だったけど・・・。
映画で意味を紹介されるとストーリーとの関連性を読み込みたくなる。
コミックの読者ならその必要性はないが、
その存在すら知らない者にとっては、
このタイトルは主役の真木よう子を指すのか、
それとも井浦新なのか、永山瑛太なのかと勘ぐってしまう。
まあ、複雑に絡み合ってはいるので、本作を観て感じ取ってほしい。
映画はゆっくりと流れていく。
淡々と描かれる毎日と些細な会話。
そこには表面と内面が介在する。
なんとなくお互いに何かあると感じながらも打ち明けることはない。
本当は打ち明ければラクになれるし、
互いに理解できるのは分かっているが、それができない。
それは銭湯の経営者かなえと住み込みで働く堀の関係性であり、
かなえと失踪した旦那との関係性。
あっ、住み込みで働く堀が井浦新で、失踪した旦那が永山瑛太ね。
結局は自分で話をしない限り相手のことは分からない。
いや、いくら話をしたところで相手のことは完全に理解できない。
それは映画の中だけでない。
自分自身もそう。
30年近く連れ添っている家人のことを僕はどこまで知っているのか。
映画を観ると自信をなくす。
言わなくていいことを言わないのは気遣いだが、本当にそれでいいのか。
すべて明かしたからこそ、あんなラストシーンとなる。
ハッピーエンドなのか、そうじゃないのかは観る人に委ねられている。
そもそも答えなんてない。
本当は答えなんて必要ないのかもしれない。
と感じた作品。
多分、これでは映画コラムニストの役割を果たしていない。
映画については意味不明。
それでいい。
心の中にある何かを言葉にするのは難しい。
言葉にしたところで正しく伝わるかは別。
ただその姿勢が気持ちを動かす。
本作ではリリーフランキーと康すおん(全然知らず…汗)がいいアクセント。
静かに流れる川に優しく石を投げこむように。
そこから広がる何かはあるよね。
今泉監督にはこれからも期待したい。
きっと彼しか撮れない作品は増えていくんだろうね。