なぜ大企業が突然つぶれるのか 生き残るための「複雑系思考法」 (PHPビジネス新書) (2012/09/19) 夏野 剛 |
かなり意味深なタイトルである。しかし、本書を読む限り、意味深なタイトルを言及している箇所はない。だからと言って詐欺まがいの書籍ではない(笑)。周辺情報から推察して、「それが原因になっているでしょ!」と強いメッセージを発しているのだ。読み手によっては不快感を持つケースも多いかもしれないけど。
著者の夏野氏といえば、NTTドコモで「iモード」のサービスを立ち上げたことで有名。僕も12~13年前に「iモード・ストラテジー」を読んだ記憶がある。
内容はさっぱり覚えていないが、日本には素晴らしく先端的で優秀な方がいるもんだと感心していた。本書でもその口調は最先端を走る秀才そのもので、痛烈なコメントは小気味いいくらい。共感できる面も多い。と同時に僕のような凡人は取り残されてしまうのではという恐怖も覚える。
変化する必要は感じているし、自分自身も常に変化しているつもり。トップが変化を意識し実践しなければ、この複雑な時代を切り拓いていくことも難しいと思っている。
恐怖を抱くのは、その変化のスピード。著者は訓練により100メートルを10秒で走ることができるかもしれないが、僕はまず無理だ(苦笑)。僕に限らず大半の人は無理だ。
これは本書を非難しているのではなく、著者が自分をスタンダードな基準に置かれていることに若干の違和感を感じた。自分の能力のなさを露呈させただけかもしれないが・・・。
しかし、その考え方やアウトプットの手法には勉強させられる面は多い。例えば、こんな文章。
重要なのは「ITという”武器”を使っていったい何をしたいのか」という目的である。そこで単純に「鉄砲を集める」ことをめざした軍は、「弾の補充」という隙を突かれて貴重な兵力をうしなうことになるだろう。一方、「鉄砲を使って、組織の戦力を上げる」というお目的意識を明確に持っていた信長軍は、旧来の戦い方を続ける武田軍を完膚なきまでに叩きのめすことができた。
なるほどな、と感心してしまう。
名古屋の地下鉄名城線の「右回り・左回り」という表現に感動する場面も著者の思考の深さを捉えているだろう。何も考えずぼんやり見ている自分はまだまだレベルが低い。
進化するための材料は目の前に転がっているが、それに気づかず通り過ぎてしまうことがいかに多いか。無理だ無理だと言いながら、やっぱり反省しきりだな・・・(苦笑)。
家で本書を読んでいたら、6年生の息子がタイトルを見て僕に言った。
「お父さんには関係ないじゃん」。
確かにそうだけど、別にいいいだろ!