僕はこういった小さな日本映画が好きだ。
超豪華な俳優陣を並べず、テーマ設定も地味で低予算で仕上げた作品。
メジャー公開もされないし、大ヒットもしない。
(すみません・・・)

しかし、作り手のこだわりや役者陣の懸命さが伝わる。
そこに大きな魅力を感じる。
そんな日本映画が好きで大切にしたいし、応援もしたい。
本作はまさにそれ。

舞台は熊本県荒尾市。
一昨年、熊本に旅行も行ったが、どのあたりかも知らない。
調べてみたら熊本市よりずいぶん北で有明海沿い。
有働監督の出身地だという。
そのあたりも作品に込める愛着もあるのだろう。

映し出される風景や熊本弁がストーリーと融合し、こちらの気持ちも引っ張られる。
物語はスキャンダルで仕事を失った崖っぷち女優と
評価が上がらない女性ディレクターの人生模様を描くだけ。
(ちょっと失礼な表現かな・・・)

大げさな人間ドラマはない。
新鮮なテーマともいえない。
だが、僕はストレートに感情を持っていかれた。

娘と父の問題が余計に僕を感情的にさせたのかもしれないが、それだけじゃない。
笑うシーンでは笑い、泣くシーンでは泣く。
オーソドックスでありながら、小気味よい演出が感動を生む。

象徴的なシーンで父親が娘に焼き飯を振舞うシーンがある。
その焼き飯がいいじゃないか。
チャーハンじゃなく焼き飯。
きっと美味いはず。
そう思ってしまう。

父と娘の絆は言葉はなくでも、関係性が悪くても太く繋がっている。
どんな娘であろうと父親は応援するし、
どんな冷たい父親だろうと娘はきっと信じている。

主演は蓮佛美沙子と伊藤万里華。
このキャスティングも素晴らしい。
崖っぷち女優とイマイチな女性ディレクターを上手く演じている。

伊藤万理華は「サマーフィルムにのって」のまんまな気もしたけど。
あれがキャラか、演技が同じようになってしまうのか。
まあ、それはそれでよしとしよう(笑)。

女優は泣かない。
泣かないし泣けない。
それもプロ。

素直に感じたい作品だよね。