前作「トヨトミの逆襲」を読んだ時に次作は「トヨトミの帰還」か「トヨトミの覚醒」と書いた。
全く違ったが、「トヨトミの帰還」はやや近いか(笑)。
「トヨトミの野望」から続いたシリーズの完結編。
ここまできたら読まざるを得ない。
地元で事業を行う身としては、どんな展開になるのか気になるのは当然。
描かれている世界はまさに今。
本書の単行本の帯には「99%実話の噂」と書かれている。
さすがにそれはないと思うが、T会長の顔をイメージしながら読み進めてしまうのは著者の思う壺。
本書にはうちの会社がオフィスを構える「伏見」も頻繁に登場する。
その度にどのあたりか?どこの店か?なんて考えてしまう。
また、ディーラーも実在するあそこの社長と弟?と思ってしまう。
確か奥さんって・・・。
知った名称はより現実に近づけるので、少々、恐ろしかったり。
今回、新たに登場するのが「織田電子」。
あきらかにニデック(旧日本電産)を指している。
それは僕が語らなくても読者の99%が「織田会長は永守会長ね」と頭に浮かべるだろう。
確かに噂に聞く面と同じ点があったりと、内容も事実と思わせる。
ご子息のこともネットで調べてしまった。
フィクションであるのは間違いないが、社長室に飾ってある絵は本当かもと思ってしまった。
そのあたりはとても巧妙な展開で想像力を働かせる。
本書はタイトルにあるようトヨトミ家の世襲問題がメイン。
ファミリービジネスを学ぶ者としては否定的に表現される世襲はいかがか?と思ってしまう。
その点に関しては正直な感想だが、世間一般的には共感されるのだろう。
それだけ世襲に対してマイナスイメージを与えるニュースが多いし・・・。
中身については触れないが、前2作と比べるとプライベートが描かれる面が多い。
それもスキャンダラスな場面が多いので、ビジネス小説の枠を超えた印象も。
それは僕だけが感じているかもしれないので、読んだ方の感想を伺いたい。
どちらにしても目まぐるしい展開は読み物としては面白い。
解説には「その“衝撃のラスト”を見逃すな!」と書かれているが、
これが事実だとしたらほんと衝撃。
楽しめたエンターテイメント小説だが、EV市場の動向も学びことができた。
完結篇といっているが、5年後、続編が出たりしてね。