(株)貧困大国アメリカ (岩波新書) (株)貧困大国アメリカ (岩波新書)
(2013/06/28)
堤 未果

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本書を初めて手に取った方は、まず間違いなく「なぜ、(株)?」と思うのではなかろうか。しかし、本書を読み進めていくうちに疑問は晴れ、これほど適切なタイトルはないのではと納得するだろう。
その納得は僕らに気持ちよさを与えてくれるかは別問題。むしろ納得してしまう事実が恐ろしかったりする。アメリカが辿った道を日本も進むのだろうか。人種や価値観の違いからそこまで極端なことはないと思うが、最近、世間一般に報道されるニュースを見ると危機感を覚えることもある。
僕個人として資本主義には賛成であり、生きていく世界において勝ち負けが存在し、その結果が正当な評価であるべきとずっと考えてきた。基本的には今もそれは変わらない。
自分がもしくは会社が淘汰されることがあれば、それは自分の実力不足であり、その責任を負うのは当たり前の話。誰かを非難することではない。
だが、本書の内容や最近の行き過ぎた競争を見る度に果たしてそれが正しいのかと迷ってしまうこともある。家電量販店が過激な値引きをすることで消費者は満足するだろうが、作り手であるメーカーは疲弊し、その挙句、その量販店も赤字に転落してしまう。
このサイクルによって僕も恩恵を受けているわけだが、でもそれって本当にシアワセかとも思ってしまう。マーケットインの発想は大切だが、ユーザーはどんな商品であろうと安ければいいと思うのが一般的な考え。でも、その値段の付け方に根拠はないはず。
話はそれたが、本書が取り上げている素晴らしきアメリカの自由がもたらした結果もそれに繋がるのだろう。寡占化が進み、規模の経済を発揮し市場を制覇する。強い者は更に強くなり、弱い者は居場所すらなくなる。それが資本主義が求める結果なのだろうか。
ここに書かれている内容を他人事として捉えて本を閉じてしまうのはあまりにもノーテンキ。近い将来、自分たちの現実にも襲い掛かることは想定しなければならない。
しかし、毎日、戦々恐々として暮らすのはあまりにも不健康。かといって、緊張感のない生活も身を滅ぼすとも思う。適度な緊張感を維持しながら、健康的な生活を心掛ける。
まあ、マラソンと一緒で一定の練習量を積まなければ、いいタイムで完走することはできないし、過度な練習は体力的にも精神的にも負担が多い。練習をしなければ完走すらできない。
マラソンくらいにしか例えることができない想像力やボキャブラリーのなさは勘弁してもらうとして、まずは最低でも自分自身を鍛えることが必要。
我々にとって、何がシアワセなのか、真剣に向き合う時なのかもしれない。