解説には、「アフガニスタン問題とアフガン人通訳についての
ドキュメンタリーに着想を得て撮りあげた社会派ドラマ」と書かれてあった。
紛争が続く今の時代に批判的な社会性の強い映画と勝手に思い込んでいた。
いい意味で裏切られた。
そんな意味合いもあるが、むしろ男同士の友情を描いた作品で、
エンターテイメント性に富んだアクション映画。
余計な感情は持たずに観た方がいい。
舞台は2018年のアフガニスタン。
米軍とタリバンとの紛争を描いている。
その内容は過度な演出はあるとはいえ、実話に近いという。
アフガニスタン紛争なんて随分前の出来事と思っていたが、米軍が撤退したのは2021年。
まだ最近のこと。
ロシアによるウクライナ侵攻はすでに始まっていたし、
本作で描かれる同様の物語があちこちで存在する。
僕らが知るニュースは表面的に過ぎず、
戦争に駆り出された一人一人の生きざまを捉えれば、それだけでも映画になり得る。
描く側次第で正義でも悪にもなるが、人を殺す行為が人を傷つけることには変わりない。
本作ではタリバンが悪の象徴のように描かれるが、タリバンが描けば米軍が同じ存在。
結局はどこまでいっても自分たちを正当化する。
反省したり、過ちを認めるには相当な時間が必要なんだろう。
それはさておき前述のとおり、本作は男同士の友情作品。
米軍の曹長とその通訳のアフガニスタン人が銃撃戦に巻き込まれながらも、
逃げ切る姿をヒリヒリするような緊張感で描く。
それはそれで十分楽しめる。
ただ、それだけであれば単なるアクション映画。
そこにそれぞれの国の事情が入り現実味を帯びる。
自国を非難する者、裏切った者は許さない。
どこかと同じ。
そんなことを考えると今、公開する意味もあるわけだ。
一応はハッピーエンドだが、その後を考えればそんな単純ではない。
より複雑なような気もする。
本作は米軍側を中心に描いているが、制作はイギリス・スペインの合作。
アメリカはあまり作りたくないのかな・・・。
そんなことも思ってしまった。
それでも観る価値は大いにあると思う。