「RHEINGOLD ラインゴールド」に続いて実話を基にした作品を鑑賞。
侮っていた。
映画評論仲間からも評価の声は届いていたが、侮っていた。
プロレス一家の悲劇を描きながらも、単純明快なスポコンドラマと想像していたが、
その想像をはるかに超えていた。
80年代、プロレスはかなり人気があった。
中学、高校時代の友人もプロレスファンは多く熱く語っていた。
僕はアニメのタイガーマスクは好きだったが、プロレスは話題についていく程度。
さほど興味はなかった。
金曜のヒマな時(確か)に古舘伊知郎さんのアナウンスで見ていたくらい。
アントニオ猪木から藤波辰巳や長州力に人気が移った頃。
外国人レスラーもスタンハンセンあたりしか知らない。
その裏側でこんな世界があるなんて、知る余地もなかった。
今、アメリカでプロレス人気はどうなんだろう?
この時期に公開されるには何らかの意味もあるとは思う。
偉大なる父親の存在が家庭崩壊に繋がる等、
家族の結びつきが今のアメリカ社会を反映させているとか。
映画は時代を映す鏡でもあるし・・・。
何かを信じ、取りつかれたように懸命に励み、結果的に呪縛となり不幸を招く流れ。
本作はプロレスというエンタメと努力と根性をごちゃ混ぜにした世界だが、
どこの世界でも見られることかもしれない。
親の理想が一家を破滅の道へと進めてしまう。
親として子供に期待しすぎるのは、却って子供を苦しめる材料。
反面教師として捉えておくのもいい。
しかし、本作はそんな生ぬるい親の戒めを訴えたいのではない。
一人一人の葛藤を表現した重厚な人間ドラマ。
かなりヤバい。
それを演じる俳優陣、プロレスラー役の4兄弟が素晴らしい。
筋肉隆々の体もそうだがプロレス技も見応えがあり、まるで本物。
鍛え方も尋常じゃないと思わせる。
舞台となる80年代も懐かしさを感じさせてくれた。
ほとんど悲劇でしかないドラマだが、それで結末を迎えると救いようがない。
呪縛から解き放たれ、人らしく生きることで明日への希望に繋がる。
映画評論仲間の声がなければ見逃していた可能性は高い。
プロレス好きはもちろんだが、むしろ嫌いな人に観てもらいたい。
貴重な経験ができるのは間違いない。