ポスターを見て想像したのが、「江口のりこが尼さんになってロックでもやるのか」
という次元の低い考え。
それはそれであり得なくもないが、実際はそのかけらもない。
尼崎市にある「尼ロック」と呼ばれる「尼崎閘門(こうもん)」のこと。
この水門が水害から守ってくれるので、地元ではそう呼ばれている。

映画の冒頭で明かされるが、後々まで重要な意味を持ち、そのタイトルに救われる。
日本映画は重厚で闇を描いた人間ドラマをよく観るが、人情味溢れるライトなドラマも好きだ。
誰もがほっこりし温かい気持ちになれる。

ストーリーも先が読めたりするが、却って好感に繋がる。
人を裏切ることはない。
笑いと涙を繰り返し堪え、流れるような作品も日本映画の良さ。

ネタバレしない程度に解説すれば、優秀すぎてリストラにあい実家に戻ってきた娘優子と、
父親の再婚相手として嫁いできた20歳の嫁早希との日常を描いた作品。

娘役は江口のりこでこれがはまり役。
優秀だが空気を読めず嫌われる女性を見事に演じる。
優子の小学生時代、中学生時代も描かれるが、これが江口のりこ本人を想像させる。
彼女に似た子供をオーディションで選んだというくらいイメージがぴったり。

映画は現在と過去を行き来しながら家庭環境を描き、
笑福亭鶴瓶演じる能天気な父親が明るい家庭を作る。
亡くなった母親役の中村ゆりもステキだ。
そんな家族に育てられた優子はむしろ真っすぐすぎて他人に厳しい。

そこに現れた中条あやみ演じる早希。
この早希はあり得ないくらいできた嫁。
自分よりはるか年上の娘を持ったわけだが、その接し方は到底20歳には思えない。
本来なら相容れない2人になるはずだが、それが、それが・・・。

尼崎が舞台なので当たり前だが関西弁。
あまりにも役者陣が達者なので調べてみたら、全員が兵庫や大阪出身。
絶妙な会話や人間味ある行動で観る者はドキドキしながらもほっこりする。
ラストも期待を裏切らない。

大きな話題作にはならない。
歴史的に残る優秀作品でもない。
しかし、その時代には必要で大切になる作品。
こんな作品があることで日本映画のバランスも維持される。

65歳のオッサンが20歳の美人と結婚するのは許せないけどね(笑)。